古い鉱物標本(その9)
An old set of mineral specimens: part 9
標本セットは、二段の箱に入っている。ここから、下段の標本に入る。
Fig. 26 標本36-40 scale: 5cm
Specimen 36-40: garnet, emery (garnet sand), serpentine, talc, asbestos.
36 柘榴石 常陸國真壁郡山ノ尾 (茨城県桜川市山ノ尾)
真壁の山の尾は柘榴石(ざくろいし)などの鉱物採集の有名な場所だった。最近は採集禁止のところが多いという。雲母中に自形の美しいものがあったという。標本も一応24面体の結晶面があって全体が丸いが、一部に大きな欠損がある。私が柘榴石を採集したのは数ヶ所だが、スカルンの中なので、片方が石に付いていて、丸くなったものはない。
37 金剛砂 大和國葛下郡穴蟲 (奈良県香芝市穴虫)
金剛砂は柘榴石の砂で、古くから研磨材に用いられた。おなじみの赤い色のサンドペーパーの材料である。奈良と大阪の境の二上山付近の産地が有名で、穴虫もその一つ。近くまで行ったことがあるが、採集には行かなかった。
38 蛇紋石 武蔵國秩父郡金崎 (埼玉県秩父市金ケ崎)
蛇紋岩は多くの場所で見られ、珍しいものではない。この標本よりも、もう少し緑が強くて、ぬるっとしたものの方がそれらしい。
39 滑石 阿波國名東郡八萬 (徳島県徳島市八万)
八万は、現在の徳島県立博物館のあるあたりから、眉山あたりの地名であるが、滑石との関連は調べても分からなかった。
40 石綿 肥後國下益城郡下郷 (熊本県宇城市下郷)
旧松橋町の石綿鉱山は1965年に閉山したという。石綿は過去においては重要な建築・工業材料であったから、多くの鉱山があったが、中皮腫の原因となることが分かってから使用が禁止された。現在、石綿鉱山は存在しない。
(つづく)
古い鉱物標本(その10)
An old set of mineral specimens: part 10
Fig. 27 標本41-45 scale: 5cm
Specimen 41-45: calcite, halite, gypsum, fluorite, phosphate ore.
41 方解石 武蔵國秩父郡大瀧 (埼玉県秩父市大瀧)
秩父鉄道は秩父の石灰岩・セメント工業の製品を運ぶために作られた。大滝付近も石灰岩が分布しているから、その間隙を埋めた方解石の結晶は多く見られるだろう。ここで疑問なのは、なぜ同じ石灰岩のある金生山の方解石を使わなかったのか?たぶん金生山のものは小規模なものが多くて多数の均一な、そして透明度のある方解石を得にくかったのではないかということ。
写真の方解石は透明度の高い犬牙状結晶で、産地は不明。
Fig. 28 産地不明の透明方解石 scale: 5cm
Iceland spar (clear calcite crystal)
42 岩塩 独逸
岩塩は潮解性があるので、管瓶に入っている。この一点だけが外国産で、日本では岩塩を産しないから、入れなくても良いようなものだ。電気石とか紅柱石とか緑簾石など、入手が容易で実際に目にしやすい鉱物がたくさんあるのに。
43 石膏 甲斐國南巨摩郡夜子澤 (山梨県身延町夜子沢)
夜子沢の石膏は、市の天然記念物に指定されている。安山岩質の凝灰角礫岩中に産する、となっているが、本来この岩石にあったものではなく、空隙中に後に晶出したものだろう。1cmの結晶が見える、と解説書にあるが組標本のものはもっと大きい。しかし不透明である。
44 蛍石 越後國東蒲原郡五十島 (新潟県阿賀町五十島)
五十島は「いがしま」と読む。磐越西線に五十島駅(1965年7月通過)がある。五十島鉱山は1963年頃閉山。蛍石が主産物だったらしい。ここの蛍石は、現在も鉱物標本として売りに出ている。採集できるのだろうか。割合高価だから昔の残りを売っているのかも知れない。ちょっと疑問に思うのは、なぜ洞戸鉱山の蛍石ではないのか?ということ。洞戸なら赤坂からすぐのところだし、蛍石が少ないということも無さそう。
45 燐鉱 志摩國鳥羽 (三重県鳥羽市)
今回調べてはじめて知った産地。鳥羽市の燐灰石を産した鉱山として、旧赤崎鉱山がリストにあるのでそこだろう。志摩赤崎駅(1975年7月通過)というのが近鉄志摩線にある。鳥羽水族館からも近いところ、安楽島に渡る橋のあたりである。2009年に鳥羽竜化石産地を訪れた時にこの橋を渡った。
(つづく)
前回に続いて記事が短いので二つを掲載した。サッカー観戦など、ほかのことをしていて、アップが遅れた。陳謝。
An old set of mineral specimens: part 9
標本セットは、二段の箱に入っている。ここから、下段の標本に入る。
Fig. 26 標本36-40 scale: 5cm
Specimen 36-40: garnet, emery (garnet sand), serpentine, talc, asbestos.
36 柘榴石 常陸國真壁郡山ノ尾 (茨城県桜川市山ノ尾)
真壁の山の尾は柘榴石(ざくろいし)などの鉱物採集の有名な場所だった。最近は採集禁止のところが多いという。雲母中に自形の美しいものがあったという。標本も一応24面体の結晶面があって全体が丸いが、一部に大きな欠損がある。私が柘榴石を採集したのは数ヶ所だが、スカルンの中なので、片方が石に付いていて、丸くなったものはない。
37 金剛砂 大和國葛下郡穴蟲 (奈良県香芝市穴虫)
金剛砂は柘榴石の砂で、古くから研磨材に用いられた。おなじみの赤い色のサンドペーパーの材料である。奈良と大阪の境の二上山付近の産地が有名で、穴虫もその一つ。近くまで行ったことがあるが、採集には行かなかった。
38 蛇紋石 武蔵國秩父郡金崎 (埼玉県秩父市金ケ崎)
蛇紋岩は多くの場所で見られ、珍しいものではない。この標本よりも、もう少し緑が強くて、ぬるっとしたものの方がそれらしい。
39 滑石 阿波國名東郡八萬 (徳島県徳島市八万)
八万は、現在の徳島県立博物館のあるあたりから、眉山あたりの地名であるが、滑石との関連は調べても分からなかった。
40 石綿 肥後國下益城郡下郷 (熊本県宇城市下郷)
旧松橋町の石綿鉱山は1965年に閉山したという。石綿は過去においては重要な建築・工業材料であったから、多くの鉱山があったが、中皮腫の原因となることが分かってから使用が禁止された。現在、石綿鉱山は存在しない。
(つづく)
古い鉱物標本(その10)
An old set of mineral specimens: part 10
Fig. 27 標本41-45 scale: 5cm
Specimen 41-45: calcite, halite, gypsum, fluorite, phosphate ore.
41 方解石 武蔵國秩父郡大瀧 (埼玉県秩父市大瀧)
秩父鉄道は秩父の石灰岩・セメント工業の製品を運ぶために作られた。大滝付近も石灰岩が分布しているから、その間隙を埋めた方解石の結晶は多く見られるだろう。ここで疑問なのは、なぜ同じ石灰岩のある金生山の方解石を使わなかったのか?たぶん金生山のものは小規模なものが多くて多数の均一な、そして透明度のある方解石を得にくかったのではないかということ。
写真の方解石は透明度の高い犬牙状結晶で、産地は不明。
Fig. 28 産地不明の透明方解石 scale: 5cm
Iceland spar (clear calcite crystal)
42 岩塩 独逸
岩塩は潮解性があるので、管瓶に入っている。この一点だけが外国産で、日本では岩塩を産しないから、入れなくても良いようなものだ。電気石とか紅柱石とか緑簾石など、入手が容易で実際に目にしやすい鉱物がたくさんあるのに。
43 石膏 甲斐國南巨摩郡夜子澤 (山梨県身延町夜子沢)
夜子沢の石膏は、市の天然記念物に指定されている。安山岩質の凝灰角礫岩中に産する、となっているが、本来この岩石にあったものではなく、空隙中に後に晶出したものだろう。1cmの結晶が見える、と解説書にあるが組標本のものはもっと大きい。しかし不透明である。
44 蛍石 越後國東蒲原郡五十島 (新潟県阿賀町五十島)
五十島は「いがしま」と読む。磐越西線に五十島駅(1965年7月通過)がある。五十島鉱山は1963年頃閉山。蛍石が主産物だったらしい。ここの蛍石は、現在も鉱物標本として売りに出ている。採集できるのだろうか。割合高価だから昔の残りを売っているのかも知れない。ちょっと疑問に思うのは、なぜ洞戸鉱山の蛍石ではないのか?ということ。洞戸なら赤坂からすぐのところだし、蛍石が少ないということも無さそう。
45 燐鉱 志摩國鳥羽 (三重県鳥羽市)
今回調べてはじめて知った産地。鳥羽市の燐灰石を産した鉱山として、旧赤崎鉱山がリストにあるのでそこだろう。志摩赤崎駅(1975年7月通過)というのが近鉄志摩線にある。鳥羽水族館からも近いところ、安楽島に渡る橋のあたりである。2009年に鳥羽竜化石産地を訪れた時にこの橋を渡った。
(つづく)
前回に続いて記事が短いので二つを掲載した。サッカー観戦など、ほかのことをしていて、アップが遅れた。陳謝。