写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

鳩 目

2005年08月03日 | 車・ペット
 耳が長く垂れている犬には、持って生まれた弱点がある。耳の中に湿疹が出来やすい。

 ハートリーがここ数日よく耳を掻いていた。めくってみると、少し赤くなっている。湿疹がまた出来た。

 土曜日の朝、掛かりつけの犬猫病院へ連れて行った。待合室は犬・猫の患者さん?で満員だった。

 椅子に座って隣を見ると、熟年の夫婦連れで、主人がひざのタオルの上に1羽の鳩を乗せている。犬猫病院に鳩とはまた珍しい。

「どうしたのですか?」と、余計なことを訊いてみた。「右目が悪く、物が見えなくなってきている」

 どうしてそれに気がついたかと尋ねると、「飼い主の顔を見るときに首を回して必ず左目で見るし、右目は輝きもなくなってきた」という。

 さすがに飼い主である。普段の動きの中から異常を見つけ出している。雛の時に落ちていたものを拾い育てて、4年が経っていた。

 よく見ると片足がない。「以前、猫に襲われた」と言って笑っている。「片足では立つことが出来ないのでこうして抱いている」という。

 笑うような話ではないが、拾った小さな命を、事故に遭いながらも自分の子供のように大切に育てている夫婦が、とても心優しく見えた。

 鳩の目の治療は、目薬をもらうだけらしい。たかが鳩の目、されど鳩の目。片足がなく、片目の見えない身障鳩が、大変幸せ者に見えた。

 私は動物虐待などしたこともないが、鳩くらいのことで、ここまでやるだろうかと、ハット思った。
  (写真は、豆鉄砲を食った時の「鳩目」)