写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

新幹線東京行き

2005年01月04日 | 旅・スポット・行事
 広島駅で弁当・缶ビール・新聞・週刊誌を買い込み山側の席に沈んだ。
 
 一面を読み終えた頃顔を上げると、備前焼窯の煙突が見える。ややあって姫路城が羽根を大きく広げている。海側が明るくなると、右前方遠くに、四国への明石海峡大橋が横たわる。
 
 トンネル群を抜けると、一瞬神戸の街が過ぎる。次の長いトンネルを抜けると民家の上を低く飛行機が舞う。伊丹・大阪だ。弁当を食べながら外を見る。右に高く観覧車がある所が大阪駅だ。

 西本願寺に頭を下げローソクタワーを見上げながら鴨川を渡ると、京都とはお別れだ。琵琶湖を眺めていると、瀬戸の唐橋がフォーカスプレーンのように目の前をよぎる。山頂に雪の伊吹山を過ぎると、関が原合戦の白い平原が広がる。

 遥か北の山々の峰も白一色だ。遠く広い平野の街の中で、群を抜いて大きな固まりが見えたら名古屋城だ。名鉄電車と並走して名古屋を抜けると、仕事で何度も足を運んだ豊橋・ホリデーインホテルが右に高く天を突く。

 浜名湖を過ぎると水車が回る養殖場が続く。大井川を渡ると日本一富士の峰が、唯一右の車窓に見える所がある。直ぐにまた左に移る。裾野から真近に仰ぐと言葉にならない。窓にへばりついて、暫しじっと見つめる。

 整然と並ぶ茶畑を過ぎ長く暗い闇を抜けると、一転明るい相模の海だ。小田原城越しに、箱根へのターンパイクが見える。この辺りから徐々に大都会の匂いがする。

 小さな民家が密集し始め、それがビル群に変わるともう横浜だ。長年住んでいた横浜の街の変化を必死に眼で追う。品川からは山手線・京浜東北線と並んで走る。車内放送がありスピードを落とし始めると、見るたびに進化を遂げるメトロポリタン東京、終着駅にのぞみが着く。

 4時間の東京までの冬の旅、頭に残っている風景を机の上でなぞってみた。
     (写真は、のぞみ号)