まつたけ山復活させ隊運動ニュース

 松茸は奈良時代から珍重されてきたが、絶滅が心配される.松茸山づくりは里山復活の近道であり里山の再生は松茸復活に繋がる.

まつたけ山復活させ隊 NEWSLETTER 873 新年のご挨拶

2014年01月01日 | まつたけ山復活させ隊とは

まつたけ山復活させ隊のメンバー並びにご支援戴いている皆さん!

明けましておめでとうございます.新年のご挨拶を謹んで申し上げます.

初めに
 全国に800万haある里山林を再生しなければならないと考えていますが、ボランティアの活動に一定の助成をすればそれでよいと考える手法は、里山問題を正しくとらえていないと思っています.何とかして里山から新しい価値を生み出す(見直す)業をつくらねばなりません.それは政府の仕事です.

まつたけ山復活させ隊 2013年の活動を振り返って
 まつたけ山復活させ隊の昨年の活動は、京都岩倉の通常活動(49回)と番外活動として仲間の有志と高松市塩江町に出かけました.合わせて50回の活動を展開しています.参加者数は1558人、平均すれば1回当たり31.8人になります.見学者もカナダ、韓国他の3国と国内各地から98名に上る.第1回からの参加者数は16995人になっている.ここまで大きく育ったことは、なんといっても参加下すったすべての仲間と全国の支援者のお陰です.心からありがとう!と感謝申し上げます.

 悲しいこともあった.2005年の開催以来、メンバーの家族の死に出会うことはあったが、2013年6月27日朝、杉山廣行君が急逝された.若すぎる死で惜しまれて仕方がない(63歳).メンバーでは初めてのことだった.今も、私たちの活動を見守ってくれているだろう.

 雨の日も雪の日も作業などに集まった参加者の「そろそろ、出たって良いのでは?」という切なる思いも届かず、私たちの作業地にマツタケは頭を出さずです.可能性のある作業地は4つあります.各班独自の試みが進んでいますが、その作業に特に非はなく、そろそろ山の神もほほえんで下さいと、昨年から「山神祭」を執り行っている.

山神祭風景1 2 3 左クリックで大きく!

 いわゆるこのあたりのマツタケは、江戸時代には北山まつたけとか京まつたけと呼ばれて超ブランド品である.1960年代まではたいそうな量が取れていたんだが.しかし私たちの林では、放置による環境の激変で、マツタケのシロはすでに絶滅したのではなかろうか? 2007年春から手入れをしたエリアにその秋、まつたけが1本発生した.もちろん休眠していたシロが復活したのだ.しかし残念ながら、このエリアに休眠したシロが他にはなかったようで、続いてあちこちにマツタケが出るということはなかった.それほど放置のダメージが地下に及んでいたのだろう.
 
 マツタケの共生相手であるアカマツのザイセンチュウ被害も激甚で、アカマツは、前述の4カ所を除いて、全滅もしくはそれに近い.若い松林の復活から始めている次第だ.上記4カ所の成り立ちは、大きく二つに分けられる.詳しくは省いて、造成地と元からアカマツ林であるところである.造成地は、岩が露出するほど地掻きがされている.

 この造成地(香川山)は、機械的に表土を削っていて、マツタケのシロがあったとは、また、残っていたとは考えられない(2005年).するとシロ形成には、近くの京まつたけの胞子の飛来を待たねばならない.このことは間違いないことだろう.2006年にはまつたけ発生環境整備を、素人であるが、完了している.北山まつたけでも京まつたけでもいいのだけど、シロ形成に有意な胞子量の飛来がないと考えられる.

 2005年にこの地で活動を始めて以来、京まつたけ由来の胞子に、私たちの手入れしたアカマツの若い根は出会っていないのだろう.
 山の神よ! 相応しいキューピットを与えてたもれ!


それでも私たちの挑戦は続く!

 私たちの里山再生活動は、マツタケ山づくりである

 1960年代半ばに始まる高度経済成長による近代化で、私たちの日本は、石油資源中心の世界に姿を変えた.農業はそのスタイルを変え、林業は炭の生産が激減し、丸太の完全自由化も相まって衰退した.

 里山林も価値がないと考え利用されなくなる.初期には、「山の緑が豊かになり、樹を伐らないことは良いことだ」と考えられた.しかし、1990年頃になると「里山は緑豊かになったが貧弱な生物相である」ことが明らかになり、木を切ることを長い間白眼視したツケが重いことを知る.
 
 環境省のレッドデータブックの絶滅危惧種の50%に当たる生物の生息地が里地里山であることから、国際環境NGOコンサベーション インターナショナルも、「地球規模での生物多様性が高いにもかかわらず、破壊の危機に瀕している地域(ホットスポット)」に日本列島を指定している.考えてみれば里地里山の環境激変は「奥山」と比べて大きく、そこに適応していた生物の生活が脅かされたことは容易に理解できる.生物の多様性を守る上で、その再生が焦眉の課題である.

 森林をその成立過程で分けると、原生的な森林、里山と人工林の三つに区別できる.原生的森林は森林を維持する能力を生来的に内包している生態系である.そういう意味では放置も妥当な選択である.人工林は材の生産を目的とする林で、人が保育活動を施さねばならない生態系である.里山は、原生林への人の激しい働きかけの結果、生み出された生態系で人の干渉度合いは原生的森林と人工林の間にある.その保全には何らかの人の働きかけが必要である.
 
 里山林とは集落近辺に位置する身近な半自然である.これら里山林は人による干渉抜きには維持されにくいという特徴を持っているが、それぞれ生理生態的特徴を異にする、またその利用のされ方もさまざまであるため、放置による結果もさまざまだ.しかし、いずれも放置されたために、林内は湿潤化し、地表に堆積した腐植は土壌を富栄養化した.特にナラ林やアカマツ林にそのことは顕著であり、中でもアカマツは樹勢が弱り激しい樹病にさいなまされている.
 
 1930年代(’30~’39)には、全国で、7582tのマツタケが生産されているが、2000年代(’00~’12)では76tと100分の1に大激減している. その理由は、先ず第一にマツタケの生息地であるアカマツ林面積の減少である.これは、戦後の復興と高度経済成長期の開発によるアカマツ林を含む里山の転用の結果である. 第二に、林を利用しなくなったことによるアカマツ林の質の変化である.土壌の富栄養化は菌根性きのこの生活を奪った.京都府では、マツタケも絶滅の恐れがあるきのこの一つである.マツノザイセンチュウ病によるアカマツの枯損はその生態系の遷移を早めている.第三には、マツタケ子実体発生期に低温刺激を受けたシロが、子実体原基を形成した直後に気温の上昇にさらされ、いわゆる高温による発生障害を受けることが常態化しつつある.
 
 発生環境整備事業対象を、マツタケが1本でも出ているアカマツ林にしぼることによって、一定の成果が出ることが明らかになった.この手入れは休眠状態のシロの活性化を促しマツタケの発生量が増えることを狙うものである.しかし、これだけでは、まつたけの生産量が大きく望める若いアカマツ林の整備とはならず、いわゆる下り山の環境整備となる.従って、マツタケ復活後は、マツタケ発生老齢アカマツ林を若いアカマツ林に誘導していくことが大切である.
 
 森林の再生活動において、原生的森林や人工林のケースでは望ましい林相は理解されやすいが、いわゆる里山再生においては、共通する望ましい林相イメージが無い.人は、歴史的に見ても、集落近辺の林を利用してきたが、特定の林相づくりを試みたことはないからだ.これが里山再生運動に一定の混乱と停滞を生じせしめている.参加者に「どんな林づくりが良いの?」という戸惑いを持たせる.
 
 その点、私たちの里山再生は簡明だ.アカマツ林に適したところはマツタケの生活するアカマツ林に、また、他のロケイションはそれぞれの生態系にかなった広葉樹林に再生する.これだけである.菌根性キノコとホストの相利共生関係を利用し、環境の変化に強い里山林を造り出すことである.活動9年目で、アカマツ風致林ともいえる美しいアカマツ林に仕上がってきている.

参考文献
1)2005 ここまで来た! まつたけ栽培 (株)トロント刊
2) 2006 里山再生とマツタケ増産をめざし、 動き出したまつたけ十字軍運動 特産情報 1月号 pp.4-7
3)2010 まつたけ山復活させ隊の仲間たち (株)高文研刊


                                                                    2014年1月1日 

                                                                    吉村 文彦
                                                                    京都市山科区御陵岡ノ西町38-27
                                                                    090-6227-4305                                                                                      matsutake10@gmail.com  



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