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藤巻氏の挑戦から学ぶ

日経ビジネス2008年2月25日号に、イトーヨーカ堂前取締役、藤巻幸夫氏の記事が載っていた。氏は、伊勢丹のカリスマバイヤーとして名をはせた後、社長として福助を再建させるなどの実績を持つ。2005年からは、イトーヨーカ堂の衣料事業部長として3年間、改革を進めるものの成果が上がらず、身体を壊して職を降りるらしい。

「私の反省などをお話します。一般消費者を相手として仕事をする方々の参考になれば幸いです」という藤巻氏の謙虚な姿勢と、その変革プロセスから、多くのことを学ぶことができる。

藤巻氏自身の分析によると、改革がうまくいかなかった要因は次の通り。
・変革のための人員配置の失敗
・オリジナル商品開発におけるターゲット層の見誤り
・巨大組織ゆえの難しさ

上記の問題点は、組織変革論においてしばしば強調されることと合致する。つまり、組織(特に大きな組織)を変革するためのポイントは、
・強力なチェンジエージェント(変革請負人)あるいは変革チームの結成と
・初期の成功によって、変革に弾みをつける
ことだ。

ヨーカ堂入りする際、鈴木会長から「藤巻チームを100人くらい連れて来い」と言われたものの、実際には60人しか集まられなかったという。ヨーカ堂という巨大組織を変革するのに60人では足りなかったというのが藤巻氏の弁。実際には、外部からの人材だけでなく、ヨーカ堂のキーマンを見つけて、外部と内部の人材を合わせて変革を進める必要があったと思う。その際、外部の専門家と内部のキーマンのベクトル合わせも大事だ。

次に、pbi(ペーベーイー)という戦略商品を開発するとき、ターゲットを30代としたが、実際には50代の顧客が買うケースが多く、服が身体に合わずに多くの在庫が生まれてしまったという。藤巻氏は「イトーヨーカ堂を取り巻く顧客像をつかめていなかった。私のマーケティングが甘かったわけです」と語っている。スーパーマーケット業界と百貨店業界の感覚に大きな差があったようだ。

この事例から言えるのは、組織を変革する際に大切になるのが、「外部人材と内部人材による強力な変革チームを編成すること」と「初期に目に見える成果を上げて、変革にむけて弾みをつけること」。これができたのが、初期における日産のゴーン氏による改革である。

藤巻氏の挑戦は、私たちに、貴重な学びの材料を提供してくれている。
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