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人間が野獣に戻るとき

モーパッサンは、普仏戦争に従軍していたらしく、このときの経験をベースに『脂肪のかたまり』を書いたという。

戦争という状況が、人間の本性をむき出しにさせる場面を何度も見てきたモーパッサンは次のように語っている。

「われわれは戦争をこの目で見た。人間が野獣に戻り、気が狂ったようになり、面白がって、あるいは恐怖にかられて、あるいは強がりの気持ちから、もしくは自分をひけらかしたい一心から、人を殺すのを見たことがあるのだ。法が消滅し、法律が死に、正義にかかわるあらゆる概念が消えてしまうと、道路上でおびえていたにすぎないのに、それが怪しまれて、罪もない人間が銃殺されるのを見たことがあるのだ」(p.102)

『脂肪のかたまり』には戦闘シーンは出てこないものの、普通の人々がエゴをむきだしにする様子が描かれている。「いじめ」の話などを聞くたびに、人間が野獣に戻ってしまう状況は、平和な世界でも多々あるように思えた。

出所:モーパッサン(高山鉄男訳)『脂肪のかたまり』岩波文庫



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