松尾睦のブログです。書籍、映画ならびに聖書の言葉などについて書いています。
ラーニング・ラボ
『論理哲学論考』(読書メモ)

ウィトゲンシュタイン(野矢茂樹訳)『論理哲学論考』岩波文庫
5年くらい前に購入したのだが「この本はどう逆立ちしても読めないだろう」と思っていた。しかし、訳者の野矢先生の解説をたよりに、なんとか読み切った。
「語りえぬものについては、沈黙せねばならない」(p. 149)という有名な言葉で締めくくられる本書は、普通の構成で書かれているのではなく
3.5 使用されたーすなわち思考されたー命題記号が、思考である。
4 思考とは有意味な命題である。
4.001 命題の総体が言語である。
(p. 39)
というように、命題を列挙する形で書かれている。はじめは面食らったが、意外に読みやすく、読み返しやすいことに気づいた。上記の通り、ウィトゲンシュタインは、「言語」という観点から「哲学」のあり方や限界を議論している。
では、哲学の目的とは何か?
4.112 哲学の目的は思考の論理的明晰化である。(中略)哲学の仕事の本質は解明することである。(中略)思考は、そのままではいわば不透明でぼやけている。哲学はそれを明晰にし、限界をはっきりさせねばならない。(p. 51)
物事の本質を「はっきりさせる」のが哲学だという。なお、「限界をはっきりさせる」という点が大事である。
4.115 哲学は、語りうるものを明晰に描写することによって、語りえぬものを指し示そうとするだろう。(p. 52)
5.6 私の言語の限界が私の世界の限界を意味する。(p. 114)
ここでいう「語りうるもの」とは、自然科学の命題であり、「語りえぬもの」とは、善・悪・価値・神のような倫理的なものを指す。言語の限界のため、こうした倫理的なものを「語ることはできない」ので、これまでの哲学者の言説は「ナンセンスである」というのがウィトゲンシュタインの主張である。
では、善・悪・価値・神のような倫理的なものはどうしたらいいのか?
6.52 たとえ可能な科学の問いがすべて答えられたとしても、生の問題は依然としてまったく手つかずのまま残されるだろう。
6.522 だがもちろん言い表しえぬものは存在する。それは示される。それは神秘である。
7 語りえぬものについては、沈黙せねばならない
うーん・・・。そうかもしれないけど、善・悪・価値・神のような事柄は大事だし、語りたいよね、と思った。ただ、ウィトゲンシュタインは「示される」と言っているわけだから、明晰に言語化できなくとも、なんとなく議論はできるはずである。そこに希望が残った。
ちなみに、ウィトゲンシュタインはお金持ちの家に生まれているのだが、4人いた兄のうち3人が自殺していて、本人も「自殺のことを考えなかった日はない」くらい「生の問題」に悩んでいたらしい。
たぶん、自分の悩みを解決したくて本書を書いたのではなかろうか。そして「沈黙せねばならない」という結論に至り、ほっとしたに違いない。
強烈な問題意識を持って仕事をするとき、迫力のあるものが生まれることがわかった。
5年くらい前に購入したのだが「この本はどう逆立ちしても読めないだろう」と思っていた。しかし、訳者の野矢先生の解説をたよりに、なんとか読み切った。
「語りえぬものについては、沈黙せねばならない」(p. 149)という有名な言葉で締めくくられる本書は、普通の構成で書かれているのではなく
3.5 使用されたーすなわち思考されたー命題記号が、思考である。
4 思考とは有意味な命題である。
4.001 命題の総体が言語である。
(p. 39)
というように、命題を列挙する形で書かれている。はじめは面食らったが、意外に読みやすく、読み返しやすいことに気づいた。上記の通り、ウィトゲンシュタインは、「言語」という観点から「哲学」のあり方や限界を議論している。
では、哲学の目的とは何か?
4.112 哲学の目的は思考の論理的明晰化である。(中略)哲学の仕事の本質は解明することである。(中略)思考は、そのままではいわば不透明でぼやけている。哲学はそれを明晰にし、限界をはっきりさせねばならない。(p. 51)
物事の本質を「はっきりさせる」のが哲学だという。なお、「限界をはっきりさせる」という点が大事である。
4.115 哲学は、語りうるものを明晰に描写することによって、語りえぬものを指し示そうとするだろう。(p. 52)
5.6 私の言語の限界が私の世界の限界を意味する。(p. 114)
ここでいう「語りうるもの」とは、自然科学の命題であり、「語りえぬもの」とは、善・悪・価値・神のような倫理的なものを指す。言語の限界のため、こうした倫理的なものを「語ることはできない」ので、これまでの哲学者の言説は「ナンセンスである」というのがウィトゲンシュタインの主張である。
では、善・悪・価値・神のような倫理的なものはどうしたらいいのか?
6.52 たとえ可能な科学の問いがすべて答えられたとしても、生の問題は依然としてまったく手つかずのまま残されるだろう。
6.522 だがもちろん言い表しえぬものは存在する。それは示される。それは神秘である。
7 語りえぬものについては、沈黙せねばならない
うーん・・・。そうかもしれないけど、善・悪・価値・神のような事柄は大事だし、語りたいよね、と思った。ただ、ウィトゲンシュタインは「示される」と言っているわけだから、明晰に言語化できなくとも、なんとなく議論はできるはずである。そこに希望が残った。
ちなみに、ウィトゲンシュタインはお金持ちの家に生まれているのだが、4人いた兄のうち3人が自殺していて、本人も「自殺のことを考えなかった日はない」くらい「生の問題」に悩んでいたらしい。
たぶん、自分の悩みを解決したくて本書を書いたのではなかろうか。そして「沈黙せねばならない」という結論に至り、ほっとしたに違いない。
強烈な問題意識を持って仕事をするとき、迫力のあるものが生まれることがわかった。
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