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『ばいにんぶるーす』(読書メモ)

阿佐田哲也『ばいにんぶるーす』小学館文庫

大学生の頃、阿佐田哲也の『麻雀放浪記』を読んで感動したのを覚えている。しかし、なぜ麻雀もわからないのに感動したのか不思議である。たぶんそれは、賭け事と人生が似ているからなのかもしれない。

本書は、競輪、競馬、ルーレット、ポーカーなどなど、賭け事に狂った男たちが織りなす物語である。中でも存在感があるのが、刑務所から出てきたばかりの大物ギャンブラー・鉄五郎。彼の人生哲学は、なぜか心に響いた。

「わしはばくちを業にしてきたよ。だから、ばくちでは、負けられない。けれども勝ったり負けたりでなければ人生は保てないんだから、どこかで負けなけりゃならん。そこで、他のところで不幸を背負うんだ。ばくちで勝つのとちょうど見合うくらいの、まァ少し差引プラスになるくらいの不幸をな。こいつァなかなかむずかしい」(p.387)

この本を読んでから少し考え方が変わったのは「嫌な出来ごと」の意味である。普通であれば、嫌な出来事があれば、嫌な気持ちになる。しかし、鉄五郎さんの哲学からすると「嫌なことを貯めておけば、それだけ良いことがある」といえる。

嫌なことというのは少し語弊がある。自分の得にならない事と言い換えることもできるだろう。自分にとって得になることと、得にならないこと。このバランスを保たなければならないのではないか。そんな気がした。

「面倒くさいな」とか、「なんでこんなことしなきゃならないの」と不満を感じてしまうことがよくあるが、それは進んでやらなければならない事なのかもしれない、と感じた。

なんだか打算的な感じもするが、人生そんなもんじゃないかな、と思った。



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