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『人間の土地』(読書メモ)

サン=テグジュペリ(堀口大學訳)『人間の土地』新潮文庫

職業飛行家に関する8つのエピソードからなる小説なのだが、のような、また哲学書のような本である。

この当時の飛行機は技術が進んでいないため、墜落することが多かったらしい。つまり、パイロットは命がけなのだ。

それなのに、なぜ飛ぶのか?

遭難した友人ギヨメに対して、著者は次のように言う。

「彼の偉大さは、自分に責任を感ずるところにある、自分に対する、郵便物に対する、待っている僚友たちに対する責任、彼はその手中に彼らの歓喜も、彼らの悲嘆も握っていた」「人間であるということは、とりもなおさず責任を持つことだ」(p. 63)

なお、サン=テグジュペリは飛行中に砂漠に墜落して、3日間さまよった末に奇跡的に助かるのだが、それを支えたのが「自分たちを待つ人たち」の存在である。

「待っていてくれる、あの数々の目が見えるたび、ぼくは火傷のような痛さを感じる。すぐさま起き上がってまっしぐらに前方へ走りだしたい衝動に駆られる。彼方(むこう)で人々が助けてくれと叫んでいるのだ、人々が難破しなけているのだ!」(p.183)「我慢しろ・・・ぼくらが駆けつけてやる!・・・ぼくらのほうから駆けつけてやる!ぼくらこそは救援隊だ!」(p. 184)

この発想の転換はすごい。

次の一文も響いた。

「たとえ、どんなにそれが小さかろうと、ぼくらが、自分たちの役割を認識したとき、はじめてぼくらは、幸福になりうる、そのときはじめて、ぼくらは平和に生き、平和に死ぬことができる、なぜかというに、生命に意味を与えるものは、また死にも意味を与えるはずだから」(p.252)

「死にも意味がある」という言葉が深い。

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