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明日の記憶

千歳空港に本屋さんがある。小樽から千歳空港に着いて、駅からエスカレーターを上がると、チェックインカウンターに着く途中に、この本屋さんがある。小さな書店だが、この本屋さんの小説コーナーが好きだ。

昔から、読む小説は決まっていた。決まった著者(藤沢周平、池波正太郎、三浦綾子、遠藤周作)しか読まないという頑なな態度があったが、ここ数年、いろいろな著者の小説を読むようになった。それも、この本やさんのおかげだ。

一昨日買ったのは、萩原浩著『明日の記憶』。渡辺謙が主演の映画にもなった小説。実は、テレビでこの映画が放映されていたときに、少しだけ見たが、すぐにチャンネルを変えてしまった。50歳で若年性アルツハイマーになった主人公があまりにもいたたまれなくなり、見続けることができなくなったからだ。

しかし、なぜか小説は買ってしまった。萩原さんの小説「メリーゴーランド」を読んだものの、途中で挫折してしまった経験があるが、この小説は一気に読めた。ヘビーなテーマであるにもかかわらず、明るいタッチの文体に救われたところもある。

この小説を読むと、今まで当たり前だと思っていた自分の環境が、いかに恵まれているものであるかがわかる。アルツハイマーに罹った主人公の目を通して、家族の愛が迫ってくる。「普通に暮らす」ことのありがたさが実感できる小説である。

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