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『おかしな男 渥美清』(読書メモ)

小林信彦『おかしな男 渥美清』ちくま文庫

以前、色川武大さんが『なつかしい芸人たち』の中で渥美清さんに触れて次のように述べていた。

「しかし、私も、彼が今日のような大きな存在になるとは少しも思わなかった。むしろマイナーの中の光った存在になってくれ、と願っていたのだった」

これを読み、僕は「もしかしたら渥美さんも、そうした道を歩みたかったのかもしれない」と書いた。

しかし、本書を読んで、それが大きな間違いであることがわかった。

著者の小林さんは、若いころから渥美さんと交流がある作家・編集者。この本を読むと、おもいっきりリアルな渥美清が感じられて、ある意味ショックである。なぜなら、「男はつらいよ」の寅さんとはかなりイメージが違うからである。

渥美さんは、メジャー志向、出世欲があり、個人主義で、猜疑心が強く、他人の評判を気にする人であったようだ。

寅さんと全く違うかというとそうではなく、言うなれば「ブラック寅さん」という感じか。

はじめはギャップが大きいので戸惑ってしまうが、渥美さんの生き方は、それはそれで迫力がある。読み終わって感じることは、「メジャーで生きるのがはたして幸せなことなのだろうか?」ということ。

色川さんが言うように、渥美さんはマイナーの中で光る存在であったほうがよかったのかもしれない、と思った。



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