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『ニコマコス倫理学』(読書メモ)

アリストテレス(朴一功訳)『ニコマコス倫理学』京都大学学術出版会

紀元前310年~322年の間に書かれたという『ニコマコス倫理学』。解説も入れて579ページあるのだが、毎日少しずつ2か月かけて読んだ。

訳者の朴先生によれば、倫理とは「人間の生き方」であり、「倫理学」とは、それを探求する学問である(p. 548)。ちなみに、ニコマコスとは、アリストテレスのお父さんと息子の名前である(いずれかに捧げた書との説あり)。

本書は、一般向けに書かれたものではなく、講義のための研究ノート的なものであるらしく(p. 532)、それがゆえに、アリストテレスの息遣いが聞こえてくるような本となっている(なので、けっこうアバウトな説明が多い)。

印象に残ったのは次の3点である。

1)中間をめざせ

人間にとっての善とは、「徳」に基づく魂の活動であり、それが幸福につながる。徳を形成するには、超過したり、不足するのはダメで、中間(中庸)を狙うことが大事になる。

例えば、「向こう見ず(超過)」や「臆病(不足)」ではなく「勇気(中庸)」、「おべっか(超過)」や「意地の悪さ(不足)」ではなく「友愛(中庸)」が徳のある状態である。

2)徳による友愛

友愛には、自分の利益を求める「有用性による友愛」、快さを得るための「快楽による友愛」、徳において互いに似ている人々どうしの「徳による友愛」がある。

有用性や快楽による友愛は壊れやすいが、徳による友愛は永続するため、完全な友愛となる。

3)観想生活が幸福につながる

最高の幸福は、観想生活(知性に基づく生活)をおくること。朴先生の解説によれば「すでに探求され、発見され、知られているものを、いわばかえりみる生活」であり、「よき仕方で考える活動」が観想生活である。

この箇所を読み、佐伯胖先生の『「学ぶ」ということの意味』(岩波書店)で紹介されている事例を思い出した。

病院のベッドの上で30年間を過ごした親戚の女性が、小説、音楽、他者からの親切を「感謝し、味わう(appreciation)」学びを通して豊かな生活をされていたというエピソードである。

アリストテレスが説く善や幸福とは「求めすぎず、徳のある人を大切にしながら、文化を味わう生活」だといえる。

そんな生活をしてみたいと思った。






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