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『マクベス』(読書メモ)

シェイクスピア(安西徹雄訳)『マクベス』光文社

向かうところ敵なしの将軍マクベスは、スコットランド王に忠誠を誓うまじめな家臣だった。しかし、魔女たちから「あなたは将来、王になる」と言われたばかりに、心が揺れ動く。

これに加えて、マクベスをあおる夫人。

「偉くなりたいという気はある。その野心もなくはない。けれど、それには欠かせぬ毒気というものが、あなたにはない。大きなことをやりたがっても、清らかな手でやりたがる。不正は嫌いだといいながら、不正を犯してでも手に入れたがる。あなたが欲しがっているものは、あなたに向かってさけんでいる。「ほしいなら、こうしなくてはならぬ」と。ところがあなたは、そんなことはやめようと思うより、ただそうすることを怖がっているばかり。早く帰っておいでなさい、ここへ、この私のところへ。あなたの耳に注いであげよう、私の胸の、この毒気を」(p.32)

たしかに、事をなそうとしたら「何らかの毒気」が必要なのだろう。企業の世界でも、政治の世界でも、芸能の世界でも、偉くなる人は「毒気」を持っているような気がする。夫人から毒気をもらったマクベスは、悪の道まっしぐらに突き進み、王を殺し、親友を殺し、邪魔者を殺しまくる。

「いったん悪を始めたからには、悪を重ねること以外、強くなる道はどこにもないのだ」(p.90)

欲にかられて泥沼にはまっていくマクベスの姿を見ながら、誰もが陥りやすい「悪魔のささやき」があるような気がした。
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