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『民族とネイション:ナショナリズムという難問』(読書メモ)

塩川伸明『民族とネイション:ナショナリズムという難問』岩波新書

世界各地でナショナリズムの動きが活発化しているようなので、買ってみた。

本書を読むと、ロシア、ヨーロッパ、中東、アジアといった各地域によって事情が異なることがわかる。なぜなら、ナショナリズムの問題は、国家、民族、言語・文化が歴史の中で交じり合って生じるからである。

一番印象に残ったのは、グローバル化とナショナリズムの話し。

グローバル化・ボーダレス化は、それだけとってみれば「国民国家」の意義を引き下げる方向に作用するかに見える。(中略)しかし、逆に、だからこそ、そのことに対する反撥や抵抗が各地に生まれ、新たな条件下でのナショナリズム再生の基盤ともなっている」(p.145)

確かに、全世界で同じ基準を押しつけられると、「私たちは違うんだ」と叫びたくなる。

各国の独自性を尊重しながら共通の枠組みに対して合意を形成していくことが大事なのだろう。

もう一つインパクトがあったのは、歴史論争における被害者と加害者の関係性について。

「歴史論争は往々にして堅実な歴史研究を離れた政治論となり、しかも他者に対する非合理的な怨念をぶつける―そしてそのことが、ぶつけられた側の硬直的反撥を招き、対立がいっそうエスカレートする―という形をとりやすい」(p.177)

こうした状況で必要な態度として、塩川氏は、朴裕河(パク・ユハ)氏による言葉を引用している。

被害者の示すべき度量と、加害者の身につけるべき慎みが出会うとき、はじめて和解は可能になるはずである」(p.179)

歴史論争に限らず、何らかの対立が生じたときに求められる姿勢だな、と感じた。




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