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『人生をいじくり回してはいけない』(読書メモ)

水木しげる『人生をいじくり回してはいけない』ちくま文庫

水木さんのエッセイを読むのは2回目であるが、やはりインパクトがある。

彼の考え方で不思議なことは、夢と現実性が同居していること。

自分の好きなことをやる。そのために人は生まれてきたのだと私は思っています。やりがいだとか、充実感といった言葉をよく耳にしますが、結局は自分が好きなことにしか、そういうものは見つからないような気がします。(中略)私のところにも、自分は漫画家に向いているでしょうかと意見を求めに来る人がいる。そういう人は、もうその時点でダメです。自分が本当に漫画が好きなのであれば、他人の意見なんてどうでもいい。へただと言われようが、向いていないと言われようが、漫画を描き続けるものです。いや、描かなくてはいられないでしょう」(p.225)

「好きなことやって生きていければ苦労しないよ」という声が聞こえてきそうだが、それをやってきた水木さんだからこそ説得力がある。この本を読んでいると、夢を実現できたのは水木さんが現実的であったから、ということがわかる。

「楽に暮らすには、金がいります。水木サンは、物を作るのと同じくらい経済観念が発達していました。最初にアパートを経営したのは、創作自体も楽しいのですが、やはり金を狙ったわけです。漫画家の中には、やたら描いてもあんまり金にならん人もいる。ところが水木サンは、必ず金になるものしか描かない。『ゲゲゲお鬼太郎』もテレビ化される時は、画の中で指の本数が欠けていても黙っていました」(p.173)

夢ばかり追っていてもダメだし、現実的すぎても小さくなってしまう。そのバランスをとるとき、自分の潜在力を発揮できるのかもしれない。
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