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ラーニング・ラボ

松尾睦のブログです。書籍、映画ならびに聖書の言葉などについて書いています。

定年前の転職時期

2020年09月25日 | 組織・職場の学習
ワークス研究所の坂本貴志さんによれば、「定年前の転職は時期が早いほどいい」らしい。

「50歳時点で正社員として働いていた現在60歳の男性」の調査データを分析したところ、50代前半で転職した人のほうが、50代後半で転職した人よりも、現在の仕事に満足しているという結果が得られたという。

ちなみに、会社都合で離職した人も、積極的な理由で離職した人も同じ傾向を示している。

定年ギリギリになって追い込まれて転職するよりも、体力や気力が残っているうちに、しっかりと準備して転職するほうが良い結果になる、ということだ。

僕はすでに50代後半に入ってしまったので、この結果を見てやや焦った。
(ただ、大学の教員の場合には、職を変える人は少ないのでそんなに問題ないが・・・)

なにごとも、早めの準備が大切になる、といえそうだ。

出所:坂本貴志「再雇用か、転職か、引退か」Works Review, 「働く」の論点2020, p. 134-141.



「目標・仕事のプロセス・成果」の形式知化

2020年08月12日 | 組織・職場の学習
Works 2020年8-9月号の特集「オンライン元年」が面白かった(p. 18-19)。

ワークス研究所が4人の専門家の話しを基に、オンライン化に伴う現場の課題を分析しているのだが、その一つが「チーム連携がうまくいかず、コミュニケーションの質と量、生産性が低下している」という問題である。

この課題の本質として「ジョブや成果が不明瞭でも成立するハイコンテクストカルチャー」があるという。つまり、「あ・うんの呼吸」で「なんとなく上手くいってしまう」日本人の強みが、オンライン化によって失われ、みんなが困っているというのだ。

提案されているのは「ジョブの中身、達成すべき目標、獲得すべきスキルを言語化し、目標に応じて成果で評価する」ということ。

賛成である。

実は、大学院生もオンラインで指導しているのだが、研究者には、「論文を書き、審査付きの学術雑誌に載せる」という明確な目標があり、成果がすべて「論文」という形で言語化されているので、あまり指導に困らない。

仕事の種類によって違うだろうが、「目標」「仕事のプロセス」「成果」など、今まで暗黙知だったものを形式知化することでオンライン問題が解決できる、といえそうだ。


戦略的なプレイイング業務

2020年05月27日 | 組織・職場の学習
ワークス研究所の調査によれば、「あなたは管理職としてプレイング業務を行っていますか?」という問いに対して、87.3%の管理職がYesと答えたらしい。しかも、87.3%のうち31%の人は、プレイイング業務比率が半分以上である。

こうした結果に対する、ワークス研究所の提言は次の3点である。

1)プレイング業務比率は30%未満におさえる
2)マネジャーであることで付加価値が高まる業務を担う
3)プレイング準備業務を戦略的に活用する

2)については、これまでとは異なるやり方が求められる変革的な業務を担い、3)については、新しいアイデアを試すことに活用すべきであるという。

変革型リーダーは、自らがモデルとなって率先垂範していることを考えると、上記のようなプレイイング業務をすることは、変革型のリーダーシップを発揮する上でも必要だといえる。

プレイングマネジャーとして働かざるをえない今、「戦略的なプレイイング業務」をしているかどうかが大事だと思った。

出所:Works Report 2020「プレイングマネジャーの時代」







社内の評判と業績評価

2020年04月30日 | 組織・職場の学習
神戸大学の服部先生が興味深い研究結果を報告していたので紹介したい。

日本の異業種14社を対象にした調査において、「スター社員(「この人は極めて優秀だ」という評判によって検出)68人」と「一般社員309人」を比較した分析である。

ちなみに、合計377人のサンプルの中には、社内の業績評価を基準として「高業績者」とみなされた90人が含まれている。

面白いのは、この90人のうち、「スター社員かつ高業績者」は26人しかいなかった点である。ちなみに、スター社員だけれども高業績者とみなされていない人が42人、高業績者だけれどもスター社員とはみなされていない人が26人いたという。

つまり、評判は高いのに、公式的には高く評価されていない人が6割近くいることになる。

服部先生は、スター社員と高業績社員が一致していない理由として、①組織の中にさまざまな優秀さが併存している可能性と、②優秀さを評価する方法による違いを挙げている。

これ以外に、「社内の業績評価の妥当性が低い」ことも原因となっているのではないか、と思った。

調査を実施して、統計的に意味のある結果が得られるためには、妥当性の高い測定が求められる。しかし、組織の公式評価を使って業績を測定すると、統計的に意味のある結果が得られないことが(僕の経験では)多いのだ。

服部先生の報告を踏まえると、むしろ、「社内の評判」をもっと活用したほうがよいのではないか、と思った。

出所:服部泰宏「日本企業における「優秀な人材」の変化と人事管理への示唆」Business Insight No. 109 (Spring 2020), p 9-11.








業務委託でぬるま湯打破

2020年04月08日 | 組織・職場の学習
以前、『トウキョウソナタ』という映画を観たとき、主人公(香川照之)であるタニタ総務部の課長がリストラされる場面があった。正式にはリストラではなく、「あなたの仕事を自分で見つけてください」と言われたのだが。

この映画を見たとき、なぜ社名を出すのか?と不思議に思った。

4月7日の日本経済新聞に、「「あえて退社」タニタの選択」という記事を読み、少し納得がいった。

タニタでは、「ぬるま湯体質」を変えるために、正社員に退社してもらい業務契約を結ぶ制度を導入したらしい。

「新制度導入は17年。現在24人の元正社員が個人事業主として働いている。働く側の利点は就業規則に縛られないこと。いつどこで何時間、働くかは自由だ」「正社員ではなくなるが、業務委託契約を結び、退社前の仕事と収入は保証される」という。

なお、問題は不安定さだが、タニタでは安全網を用意している。

「業務委託契約は仕事と報酬を1年ごとに見直して3年契約を結び直す。二瓶琢史社長補佐は「何かあっても前年に結んだ契約が残り2年有効。突然収入ゼロにはならない」と説明する」とのこと。

ある程度の心理的安心がないと挑戦できないので、ここがポイントである。

まだ手を上げた人は少ないようだが、こうした制度があり、選んだ人がいることで、社内に良い意味の緊張感が生まれるだろうな、と思った。

出所:日本経済新聞2020年4月7日(p.13)

プロとしての技術をほめる

2020年03月16日 | 組織・職場の学習
TBSテレビ発の女性キャスターであった吉川美代子さんは、後輩・部下をほめるて育てる際、プロとしての技術をしっかりとほめることが大切になると述べている。

「私は、目立たない仕事でもすごく良いナレーションをしたり、レポートをしていたりすれば、きちんと評価をしました。

例えば、シリアスなドラマの提供クレジットを読むときに、バラエティー番組のような明るいトーンでは視聴者に違和感を与えます。自然とそれが出来ていたら、担当したアナウンサーを見かけた時に必ず「良かったよ」と伝えました。

私も経験があるのですが、こうした細やかな点までしっかりと見て褒められると、「ちゃんと見て評価してくれる人がいるのか」と嬉しいですよね」

バクゼンとほめるのではなく、「どこが良かったのか」を具体的にほめることの重要性を改めて感じた。

出所:HITO, Vol. 14 (2020.1), p. 36-37.


シャドーラーニング

2020年01月09日 | 組織・職場の学習
カリフォルニア大学のBeane氏によれば、医療機関、警察、金融アナリストの世界に「インテリジェント・マシン(知能機械)」が導入されていることで、OJTによる人材育成が阻害されているという。

インテリジェント・マシンとは、手術ロボット、犯罪予測システム、企業評価システム等を指す。

こうした機械やシステムが導入されると、業務が自動化されてしまい、研修医、若手警察官、ジュニアアナリスト達は、熟達に必要な「見て、やって、教えて覚える」というオン・ザ・ジョブ・ラーニングができなくなってしまうのだ。

そんな中、障害を乗り越え、自ら成長を求める若手がいる。彼らが実践しているのが「シャドーラーニング」だ。

シャドーラーニングの実践者は、ルールをかいくぐって「現場で悪戦苦闘する機会を求め」「上級者にコーチを依頼し」「上級者のノウハウから学ぶ工夫をしていた」という。

シャドーラニングの実践は、AI棟を利用したシステムの活用と、伝統的な人材育成を両立することの重要性を示唆しているといえる。

出所:ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー2020年2月号, p. 116-127.





モバイル社員とノンモバイル社員

2019年12月27日 | 組織・職場の学習
AIG損害保険では、全国転勤を希望するモバイル社員と、自分が選択した地域で働くノンモバイル社員を区分する制度を導入している。

通常は、モバイル社員の処遇を良くするケースが多いが、同社における両者の処遇はまったく同じだという。

執行役員の福富一成氏は「全国型社員と地域限定社員という階層を作るのではなく、転勤がないことが当たり前の会社にしたいのです」と述べている。

ちなみに、モバイルとノンモバイルの比率は20:80で、希望勤務先は首都圏と大阪が多かったらしい。しかし、これは東京と大阪でしか新卒採用をしていなかったためで、新卒採用を全国で実施すれば解決するという。

また、エリアを11と広めにとっており、どのエリアにも部長級の職務が複数存在するため、ノンモバイル社員でも昇進できる構造になっている。

日本企業は、やたらと転勤させる傾向があるが、同社の試みは、ワークライフバランスの観点からも優れていると思った。

出所: Works No. 157, p. 24.

茶飲みで交流

2019年12月17日 | 組織・職場の学習
日立ソリューションズでは、本社の1フロアを改装して、カフェ風のテーブル席や床置きクッションを置き、お茶やお菓子を提供して、社員がいつでもおしゃべりすることができるようにしたという。

なぜか?

それは、家族やプライベートなど、お互いのことを話してもらうため。労政部・部長代理の林氏は次のように語っている。

「プライベートまでをお互いに知っているほうがチームとして働きやすくなり、結果的によいパフォーマンスが生まれる例はたくさんあります。話すのも惜しいほど時間を切り詰めて仕事するよりも、チームの生産性は高まると考えています」(p. 26)

僕も賛成である。なぜなら、チームの力の基礎は、お互いを信頼しあうことであり、信頼を高める第一歩が「お互いを知ること」だからだ。

同社がこうした取り組みをしている背景には、社員の働き方が多様化し、飲み会が減ったことも関係しているらしい。

酒を飲まなくても交流できる職場ほど、生産性は高い、といえる。

出所:Works 157号、p. 24.



タレントマネジメント

2019年11月28日 | 組織・職場の学習
パーソル総研のHITO REPORT(2019年10月号)を見ていたら、タレントマネジメントを特集していた。

興味深かったのは、タレントマネジメントの定義が研究毎に異なること。

企業人材を「採用・登用・評価・開発」するという点では共通しているが、
・能力が後天的に開発可能かどうか
・対象を一部の優秀な社員に限定するか、それとも全社員を対象にするか
で異なるという。

パターンとしては以下の3つに分かれるだろう(記事では6分類されていたが)。

①能力は先天的に決まり、有能な社員を対象とする
②能力は後天的にも開発可能であるが、有能な社員のみを対象とする
③能力は後天的に開発可能であり、全ての社員を対象とする

基本的には③に賛成であるが、人材の持つ「才能の質」によってタレントマネジメントのあり方が変わるように思った。

出所:HITO REPORT 2019年10月号, p.2-3.