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核密約・テレビで解説・・不破哲三氏

2009-09-21 | 世界の変化はすすむ

核密約と手を切り「非核の日本」の実現を

社会科学研究所所長 不破哲三氏に聞く

第3回 名実ともに「非核日本」の旗を


密約は今も現役 核持ち込みの現実は続く

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(写真)不破哲三社会科学研究所所長

 ――“いまは日本に寄港する米艦船には核は積んでいない、核密約は「過去の問題」だ”、こういう論調が一部にありますが。

 不破 明白な事実誤認ですね。核密約はいまも生きて作用している現役の協定で、日本は、立ち寄り(エントリー)による核持ち込みの危険にいまでも不断にさらされています。

 アメリカ海軍は、ソ連崩壊後、戦略原潜は別として、一般的には、軍艦に核兵器を積むことをやめたのですが、そのなかでも、核兵器積載の体制を維持し続けているいくつかの艦種があるのです。

 攻撃型の原子力潜水艦がその一つです。ブッシュ前政権の時代ですが、米海軍のなかで、この潜水艦への核兵器の配備をやめる提案が出されたことがあ るそうです。しかし、03年暮れに、米国防総省がその提案を却下して、「有事」の核配備体制を続けるという最終的な決定をしました。だから、西太平洋で核 戦争の態勢を続けている以上、攻撃型の全部ではありませんが、かなりの数の攻撃型原潜は、核弾頭つきのトマホーク海洋発射巡航ミサイルを積んで活動してい ることが、推測されます。

 21世紀に入ってからの攻撃型原潜の日本への寄港回数を調べてみると、次の表に見るようにたいへん多いのです。

 昨年08年が61回と特別に多いのは、米海軍の方針で、攻撃型原潜の配置の重点を、大西洋方面から西太平洋方面に大きく移したことの表れだと思います。そのなかに、核兵器を積載している原潜が相当数含まれていることは、間違いないでしょう。

日本海は戦略原潜の海か

 アメリカでは、世界規模の核戦争で使う「戦略」核戦力と、地域規模の核戦争で使う「戦域」核戦力とを明確に区分して、配置していますが、攻撃型原潜に積んだトマホークは、「戦域」核戦力の主力部隊と位置づけられています。

 核密約によって、日本はいまでも、アメリカの「戦域」核戦争計画の最前線基地にされているのです。

 ――「戦略」核戦力と日本の関係はどうなっているのですか。

 不破 海上の「戦略」核戦力で重要なのは、戦略原潜です。これは、1隻でトライデント型核ミサイル(多弾頭)を24発積んでいます が、1発のミサイルに最大8個の核弾頭をつけることができますから、合計すると十数メガトン、1隻で水爆級の核破壊力を持つというモンスター的な核武装艦 です。

 これは、日本に寄港したことはないのですが、日本の周辺では、日常的に活動している可能性があります。実は、77年に日本が領海法を制定したとき に、おかしなことが起きました。この法律では、領海を12カイリと定めたのですが、宗谷、津軽、大隅と東西の対馬水道――日本海への出入り口になるこの5 海峡にだけ、領海を3カイリにしたのです。海峡だけ自国の領海をせまくする、という例は、世界ではほかにはあまりないそうですが、調べてみると、韓国も対 馬水道側だけを3カイリにしていることが分かりました。

 なぜ、日本海への出入り口の海峡だけ、それも日韓両国がそろって領海を3カイリにせまくしたのか。おそらくアメリカの戦略原潜の通過のためではないか、と推測されています。

 日本の非核化をめざす私たちとしては、日本海を「非核の海」とする問題も、今後考えてゆくべき大事な課題になると思います。

表

被爆国・日本が核の加害国になってよいか

 ――ところが、日本国内では、逆に、北朝鮮問題を口実に、核抑止力を強めろという議論が一部にあります。

 不破 とんでもない話ですね。そういう人たちは、「核抑止力」とか「核の傘」ということを簡単に口にしますが、それは要するに、相 手を核兵器でおどしつける、ということ、おどしても相手がいうことをきかなければ、その時は核兵器で相手を攻撃する、ということです。つまり、被爆国であ る日本が、核の加害国になる、ということです。

 北朝鮮との関係にしても、北朝鮮は、日本と米国が組んで北への核攻撃をねらっているということを、自分の核武装を正当化する唯一の論理にしています。「核の傘」論とか「日本核武装」論とかは、その相手に絶好の論拠を与えるだけでしょう。

 だいたい、被爆国として、核兵器のない世界を先頭に立って目指すべき日本が、相手を核兵器でおどす道にふみだして、どうして被爆国日本を名乗ることができるでしょうか。まさにそういう問題だと思います。

 ――核問題というのは、21世紀に日本がどういう道を歩むのか、そのことが問われる問題ですね。

憲法9条と非核の旗で平和の外交力発揮を

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(写真)志位和夫委員長から米国オバマ大統領への書簡(上)と米国のグリン・デイビス国務次官補代理からの、感謝の返信(下)

 不破 日本は軍事力が足りないという議論をしばしば耳にしますが、日本にいま一番足りないのは外交力なんですね。しかも、日本はい まの世界で、外交力を発揮できる絶好の条件をもっているのに、いまの政治はそれを生かそうとせず、逆に投げ捨てることばかり考えてきた。そこを百八十度転 換しなければいけないときなんですね。

 外交力発揮の絶好の条件というのは、第一に憲法第9条、第二は被爆国としての非核の立場です。

 戦争を防止できる平和の国際秩序を、という声はいま世界中に広がっています。これは、憲法9条を国際政治に生かせる絶好の条件が広がっている、ということなんですね。

 アメリカのオバマ大統領が核兵器廃絶をアメリカの国家目標にすると宣言したことは、日本国民の非核の声が最大の核保有国をも動かし始めたものだと 評価してもよいでしょう。だから、志位委員長は、オバマ大統領に共感と提案の書簡を送り、対話の一歩が始まりました。その時に、「核抑止」論をもちだした り、「日本核武装」をとなえたりするのは、自分が時代に逆行し、世界の“空気の読めない”愚か者であることを証明しているだけだと思います。

 いまこそ、日本が「非核の日本」の旗をさらに高くかかげて、核兵器のない世界、核廃絶の実現をめざす世界的な運動の先頭に、確信をもって立つべき ときだと思います。北朝鮮の問題でも、「非核の日本」の立場を名実ともにつらぬいてこそ、北朝鮮の非核化を道理をもって主張し、推進することができます。

 そのためにも、核密約の正体がいよいよ明るみに出てきたいま、必要なことは、その真相を公開させ、密約を廃棄して、非核日本の立場と矛盾するすべ てときっぱり手を切ることです。この機に乗じて、非核三原則を骨抜きにし、密約を合法化しようなどの試みを絶対に許してはなりません。

 憲法9条と非核日本、この道をすすんでこそ、憲法前文がいうように、日本は、国際社会における「名誉ある地位」を占めることができる、このことを最後に強調したい、と思います。(おわり)



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