自民派閥裏金疑惑
パーティーの闇 隠ぺい許すな
自民党派閥の政治資金パーティー券収入を巡り、最大派閥「清和政策研究会」(安倍派)が巨額の裏金づくりをしていた疑惑が浮上しました。所属議員が販売ノルマを超えて集めた分の収入を政治資金収支報告書に記載せず、議員側に還流させるキックバックが組織的に行われていたとされます。裏金総額は2022年までの5年間で1億円以上とみられます。他派閥でも同じ手法の裏金づくりがあったと報じられており、自民党全体にかかわる重大問題です。しかし、岸田文雄首相は徹底解明に後ろ向きです。隠ぺいは許されません。
安倍派幹部らは口つぐむ
安倍派は18~22年に年1回、パーティーを開催しました。所属議員には当選回数や役職などに応じて券の販売ノルマが課せられます。同派ではノルマ以上に売った分を、議員側に還流させる運用が常態化していたとされます。
法律上は、派閥側と議員側の双方が収入と支出を政治資金収支報告書に記載しなければなりません。しかし、安倍派ではいずれも記載されておらず、裏金にした疑いを持たれています。東京地検特捜部が政治資金規正法違反容疑での立件を視野に捜査しています。
安倍派の幹部は岸田内閣や党の重要ポストに就いています。松野博一官房長官は19年9月から21年10月まで安倍派の実務を取り仕切る事務総長を務めていました。松野氏には1日の記者会見で、裏金について質問が集中しましたが、「政府の立場」を理由に疑惑に一切答えませんでした。
松野氏を継いで22年8月まで同派事務総長だった西村康稔経済産業相も「個々の政治団体の話なので答えを控えたい」と述べるだけです。西村氏の後に就任した現在の事務総長である高木毅・自民党国対委員長は1日、国会から「雲隠れした」と報じられました。
安倍派の塩谷立座長は11月30日、キックバックについて記者に問われ「そういう話はあったと思う」と認めましたが、直後に撤回し、「事実関係を精査する」と言うばかりです。萩生田光一・自民党政調会長など他の安倍派幹部らも沈黙しています。内情を熟知する政治家が口をつぐみ続けることは許し難い説明責任の放棄です。
安倍派関係者からは「他派閥もやっていることだ」との声も出ています。NHKは2日、自民党派閥「志帥会(二階派)」でも、パーティー券収入について安倍派と同様のキックバックが行われていたと報道しました。自民党の体質そのものが問われています。岸田首相はドバイで「会議に専念しているところだ」と述べ、同行記者団の質問に応じません。首相は全ての派閥について調査し、国民の前に明らかにすべきです。
癒着の温床を一掃する時
自民派閥のパーティー券収支を巡る疑惑を報じたのは昨年11月の本紙日曜版です。岸田首相らは指摘を受けた未記載は「事務的ミス」と言い逃れようとしていますが、意図的な裏金づくりだった疑いが濃厚になってきました。
自民党は、「寄付」に比べて透明度が低いパーティー収入を政治資金集めの重要な手段と位置付け、依存度を高めています。それが企業などとの癒着の温床になっています。パーティー券の購入を含めて企業・団体献金を禁止することが重要になっています。