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若いネズミと生体システムを共有する年老いたネズミは、筋肉細胞と幹細胞の分裂と活性が増加するとともに、心臓細胞や幹細胞の機能も強まりました。

2022-10-30 | 科学最前線
 

若返って寿命15年延びる…「若返りネズミ実験」深掘り

登録:2022-10-28 03:16 修正:2022-10-29 09:45
 
[ハンギョレ21]老いの科学 
老化と若返りの秘密は若い血ではなく 
むしろ老いている側が握っている
 
 
2022年10月17日、キオスク(無人情報端末)を用いた教育現場で、ある高齢者が若い講師に注文方法を学んでいる/聯合ニュース

 近ごろ疲れる日が続いています。季節のせいか、年齢のせいか、これまでの疲労が蓄積しているせいか、午後になりさえすればいつの間にかウトウトする日が増えています。一昨日からは口の中がただれ、口の周りに水ぶくれもできており、免疫力がガクンと落ちた感じです。

 私にこのように元気がないのを見て、ある知人は「私たちぐらいの年になれば、しんどければ病院で点滴を一本打ってもらってちょっと休むべき」と言います。最近は単なるブドウ糖や食塩水だけでなく、各種アミノ酸、老化や疲労の解消、免疫力向上に良いという特殊成分の入った点滴もあるので、症状に応じて選んで打てば良いというのです。

疲れたら点滴一本?

 19世紀の英国の医師シドニー・リンガー(1835~1910)が生理食塩水をベースにした輸液を開発して以来、様々なリンゲル液が開発されてきました。リンゲル液に代表される様々な輸液製剤は、コレラや赤痢のような脱水症を引き起こす病気の死亡率を画期的に低下させた「奇跡の薬物」でした。

 さらに、血液に必要な物質を直に投入するため、効果が早期に現れます。ですから早い身体的変化を望む人々は、一種の疲労解消薬や元気の出るサプリメントのように輸液製剤を利用します。自分の体内の血液に何か良い成分を入れているということで、一種の生命力を得ているという感じがしたりもします。

 昔から血液は「命の源」と感じられてきました。健康な状態では表に出て来ませんが、内的もしくは外的な傷を負うと強烈な赤い液体が体から流れ出してきて、放っておけば死に至ったりもしたわけですからね。中世の西洋では瀉血療法が流行しましたが、これも相対的に「余計な悪い血」を抜いて、体液のバランスを保とうとするものであったに過ぎず、生命体にとって血液は重要ではないと考えられていたわけではありません。

 うまいことに、科学が明らかにした統計的数値もまた血液の重要性を示します。今までで最も正確に明らかになっているところによると、人の体を構成する細胞の中で数の最も多いものこそ、まさに血液中の赤血球です。数だけ見れば、赤血球は人体を構成する細胞の約84%を占め、5%ほどがもう一つの血球細胞である血小板です。

 だから血液は、一見水のようであっても、私たちの体に存在する細胞の約90%が含まれる高密度組織です。(ただし血液中の赤血球と血小板は身体を構成する細胞の中で最も小さな部類に属するため、これらが体重に占める割合はそれほど高くありません。むしろ細胞数は0.1%に過ぎない筋肉と脂肪細胞は、体重に占める割合が最も高く、体重の4分の3ほどを占めています。)

 このように血液は、私たちが生きている限り一時も休まずに全身を駆け巡り、身体組織の隅々に必要な物質を伝え、不要な物質を除去し、命のバランスを整える役割を果たします。

隠喩ではない「若い血の輸血」

 2015年に科学ジャーナル「ネイチャー」に興味深い記事が載りました。個体結合によって若いネズミと年老いたネズミの生体システムを一つにつなげたところ、年老いたネズミに若返り効果や寿命延長効果が現れたというのです。若いネズミと生体システムを共有する年老いたネズミは、筋肉細胞と幹細胞の分裂と活性が増加するとともに、心臓細胞や幹細胞の機能も強まりました。

 個体結合状態の老いたネズミは普通のネズミより平均で4~5カ月長く生きますが(ネズミの平均寿命は約2年です)、人であったら平均寿命が15年あまり延びることになるわけです。老いた状態で15年ではなく、ある程度若返った状態で15年であれば心ひかれます。しかし一生を誰かとつながったまま生きなければならないというのは、想像するだけでも恐ろしいことです。

 しかし続いて、あえて2つの個体をつなげなくても、老いたネズミの血液を若いネズミの血液と半分ずつ交換すれば、老いたネズミに若返り現象が現れるという結果が発表されたことで、話は変わってきます。

 輸血は現在でも日常的に行われている医療行為であり、十分に耐えるに値する不便さとして受け止められていますから。2005年からこれに関する研究を行ってきた米国のバークレー医科大学の研究陣は、年老いたネズミの老化で損傷した筋肉が、若いネズミの血を輸血されるとわずか5日で回復することを確認したと発表しました。今や本当に「若い血の輸血」が単なる隠喩的表現ではなく、老いて衰弱した組織を蘇らせる実質的な方法かもしれないという期待が膨らみました。

 市場はより迅速に対応します。米国のシリコンバレーには、若者の血を買い取って輸血用製剤にし、高齢者に売るベンチャー企業が2017年に登場しました。しかし、まだ科学的にその原理が正確に検証されていない状態で「若い血」に対する熱望ばかりが強まっていることに対し、米国食品医薬品局(FDA)は「若者の血を老化防止の目的で輸血する行為には公式に検証された効能がなく、むしろそれによって血液関係の疾病の拡大と輸血に関係する副作用が発生する可能性の方が高いため、避けるべき」だと厳重に警告しました。

 実験で年老いたネズミに現れた効果が非常にドラマチックであったため、老いたネズミより疎外されて見えましたが、この実験に利用されたネズミは1匹ではありません。もう1匹の隠れた主人公、若いネズミもいましたよね。この若いネズミはどうなったのでしょうか。老いたネズミを若返らせたネズミに異常はなかったのでしょうか。

老いたネズミが若くなった分、老いた「若いネズミ」

 残念ながら、この実験の結果、老いたネズミが若返った分、若いネズミは早く老けるように見えました。ただし人々の関心は「若返り」であって、「早老」の症状ではなかったため、若いネズミの哀れな運命は関心の対象から少し外れていました。しかし、このことをいつまでも無視することはできませんでした。老いたネズミと若いネズミの血液交換効果を実験したバークレー医科大学の研究陣は、血液の半分が老いたネズミのものに入れ替わった若いネズミはむしろ老化が早まるということを観察し、これを報告しました。

 年老いたネズミが若返ったのも、若いネズミが早老症状を示すのも、理由は明確ではありませんでした。ところが、2022年7月に同じ研究陣が含まれる共同研究チームが発表した新たな論文(「単一個体同士の血液交換後の若いネズミの老化現象」、ネイチャー・メタボリズム)によると、老いたネズミは若返ったのではなく老化症状が中和されたに過ぎないかもしれないというのです。血液の半分が老いたネズミのものに入れ替わった若いネズミは老化した細胞が増えるだけでなく、筋力が弱まったり肝臓の機能が低下したりするなどの老化症状を示します。

 特に研究者たちは老化細胞の増加に注目しました。老化細胞とは、傷つけられてそれ以上分裂することもなく、かといって死んでもいない状態で生き残っている細胞のことです。損傷しているため本来の機能が果たせない状態ながら死にもせず、しかも周りの正常細胞まで傷つける炎症性物質を分泌します。その姿がまるで死体でありながら生きている人間を攻撃するゾンビに似ていることから、「ゾンビ細胞」とも呼ばれます。

 「ゾンビ」老化細胞は一般的に、個体が年を取って細胞損傷が蓄積されるにつれて次第に増えるため、老化細胞の量そのものが個体の老化を表わす指標にもなります。年老いたネズミの血液には老化細胞が多量に含まれ、それの及ぼす悪影響で若いネズミの老化現象が促進されたのです。その証拠に、老いたネズミから抽出した血液に老化細胞の否定的機能を抑制する薬物を注入して投与すると、若いネズミの早老現象は明らかに減りました。

洗濯洗剤を飲み込んでしまった時に水を飲んで薄めるように

 この研究は何を暗示するのでしょうか。それは、老化と若返りの秘密の鍵は若い血ではなく、むしろ年老いている側が握っているということです。

 研究陣は、若い血の輸血による老いたネズミの若返り現象は、実際には若い血に老化防止物質があったからではなく、単に老いたネズミの血液中の老化細胞を一部除去したために現れたのかもしれない、との結論を下します。家庭用洗濯洗剤の裏をよく見ると、誤って飲み込んだりした場合は直ちに大量の水を飲んで希釈するようにとの警告文があります(もちろん、その後、必ず病院に行かなければなりません)。洗剤の刺激性と腐食性は濃度と大きな関係があるので、非常に大量の無害な水でその物質の濃度を一定以下に落とすことが損傷を少なくする方法なのです。

 年老いたネズミの血液の半分を取り替えるというのは、身体を構成する細胞数の半分近くを取り除いて新たに入れるということです。その時、新たに入ってきた血は若いネズミに由来しているので、老化細胞の数もそれだけ少ないはずです。つまり、年老いたネズミの体では一時的に老化細胞の濃度が半分に減るわけです。

 老化細胞が減ると老化細胞が原因で起こっていた否定的な効果も消えるので、一時的に身体が回復症状を示したのです。同じ理由で、若いネズミには逆の効果が現れました。これは、血液交換後に老いたネズミに現れる肯定的効果よりも、若いネズミに現れる否定的効果の方が大きいということでも証明されます。もし若い血に若返りを起こす物質が入っているのなら、老いた血が入ってきて否定的な効果を起こしてもそれが中和されるので、否定的効果は弱まったはずですから。

 この実験結果を知れば、若い血さえ輸血すれば老化を免れうるかもしれないと期待していた人々は失望するかもしれません。しかしこの研究は、老化の発端は老化細胞の数にあり、血液中の老化細胞の数が肝臓、筋肉、脳などの老化の程度を決め、依然として秘密の鍵は血液の中にあることを示唆するものでもあります。また、人であれ組織であれ、元の古い組織をそのままにしておいて若い血を輸血しても、根本的な問題の解決にはなりえないことを示す良い例でもあります。

イ・ウンヒ|科学コミュニケーター (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

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