官房機密費
岸田内閣 32億円超支出
自民政権3代で139億円
ほとんどが政策推進費
領収書が不要で内閣の「闇ガネ」と呼ばれる内閣官房機密費(報償費)。岸田文雄内閣が2021年10月の発足から今年5月までに32億円超も支出していることが12日、本紙が情報公開請求で入手した資料でわかりました。機密費が、自民党候補の選挙資金に使われた疑惑が再浮上する中、岸田政権による機密費の使途があらためて問われます。(矢野昌弘)
今回、本紙が入手した資料によると、岸田内閣は23年度に12億2989万円余の機密費を支出していました。国に返納した使い残しは、わずか31万円ほどです。今年度も、5月半ばまでの2カ月足らずで1億9400万円を支出していました。
支出の仕方も問題です。機密費には「政策推進費」「活動関係費」「調査情報対策費」と三つの類型があります。「活動関係費」「調査情報対策費」には、官邸の職員が事務補助者として出納に関わります。
「政策推進費」は、官房長官しか使途を知らない支出で、“闇ガネの中の闇ガネ”といえるものです。岸田内閣では、「政策推進費」が支出の95%超を占めていました。
12年12月に自民党が政権復帰してから第2次安倍晋三内閣、菅義偉内閣、岸田内閣と、歴代3内閣の11年半で139億円余りの機密費を支出しています。そのうち130億円余りを「政策推進費」が占めています。この期間を通じて、年度末に国庫に返金した官房機密費は、122万円にすぎません。毎年、ほとんど使い切ることが特徴です。
機密費をめぐっては昨年秋、石川県の馳浩知事が東京五輪の招致活動のために機密費で記念品を購入し、IOC(国際オリンピック委員会)の委員に配ったと発言しました。安倍首相(当時)が「金はいくらでも出す。官房機密費もある」と発言していたとされます。
今年5月には中国新聞が、13年の参院選の際、東日本の選挙区候補が安倍首相(同)から現金100万円を渡されたと証言。複数の元政権幹部が、その現金の原資が機密費である可能性を指摘しています。
このような党利党略・政権浮揚のために、機密費を私物化している疑惑について岸田内閣は答えるべきです。