柳蔭書翰

徒然なるままに、音楽関連の話題に拘らず、常ならんこの世の事々書き散らし諸兄のお耳汚しに供したく思います。

評論

2016-01-17 09:46:59 | Weblog
1.17。21年目。風化させてはならない。日経を除いて全国紙はコラムで喚起します。いえ、風化します。すでに3.11も遠い昔事です(あくまで他所者にとればです、悪しからず)。大災害の後。跡、痕。どれも祭りの後の静謐です。死んだ人は歳をとらぬ。死んだ子の歳を数える。当事者と他所者との溝はとてつもなく深いのです。
 バス事故、廃棄食料の横流し販売。マニュアル通りにマスコミは叩き、評論家達はしたり顔で抽象論に敷衍します。どれも所詮は個人の責任です。が、咎めの方向は違います。失敗学を提唱する向き、human errorに関する本は多く出ていて、個人の不注意、失態、資質の欠落に終わっていたのでは(つまり犯人探しです)事件はまた起こる。だからシステム、環境から考え直せ。ハイムリッヒの法則でしたか、一つの事件のうしろには33だかの類似事象があり、その後ろに何百のひやりとした経験があるもんだ、ともよく言います。そういう風潮の元、だから世の中は(新聞TVは)個人を責めません、人権屋を怖れてのことですが、環境、つまり職場、勤務内容、福利厚生度合いを調べ上げます。これらは法律条文に照らすという簡単さがありますから正義の味方達は勢い声を荒げます。個人攻撃(個別の暴露)は週刊誌の役目なのですが、それは措いて。バス事故は運転手が悪いんです。予期できぬ病気だったのか、予防できるてんかんだったのか、居眠りだったのか。朝刊にもTVニュースにも、もう結果が出ている筈ですのに、運転手の司法解剖の結果が出ません。運営会社の法律違反が次々に挙げられてますが、まさに枝葉末葉。でも、こちらが責め易いわけです、照らし合わせればいいのですから。これをやってない、あれもやってない、書類が不備だ・・、簡単です。会社側もそれがわかっているから土下座です。あれを見ると胸が悪いですね。どんな賠償額になるのか、とても連中に払える額ではないでしょう。殺され損。そこまで見えてしまって。評論家(ジャーナリスト)がドヤ顔で言います、大きな事故や事件は時代を反映すると言われている、この事故も規制緩和による不良業者の参入、価格競争、安売り合戦しなければならぬ業界事情から考えねばならぬと。運転手が65歳、補助員が58歳、こういう人達がこういう仕事に就かねばならぬ社会事情も槍玉にあげます。そういう需要にはそれなりの供給が釣り合っている事実には触れません。単に年寄りが深夜業務に就いていることを表面的に責める口調です。違うでしょう?目先の安価は安全を削っていることだと気づかねばなりませぬ。が、やはり安いに傾きます。今回のような学生ばかりの惨劇は、安かろう悪かろうに飛び込む若気の至りの結果とも言えるのですが、運転手を責めて、運が悪かったのうと済ませるしかないことです。環境論に言及するだけ本質から離れて行きます。もっとも具体的な事故事件をいかに抽象論に膨らませられるか、いかに尤もらしい大上段論を作りあげられるかが評論家、ジャーナリスト能力の規矩ですから、人権屋からの批判を避けつつ個人攻撃を極力避けつつの「社会が悪い」論は聞き飽きたお約束事ではあります。食料品メーカーが廃棄処分にした10万枚の食肉加工品を産廃業者と小売業者が結託して再販していた事件も、先にTVで藻谷さんが先進国にあるまじき行為!と矜持誇りという精神論から憤っていたのと同じトーンで、許されるべき行為ではないと一応怒って見せておいて、飢餓に苦しんでいる国や地域が世界に多いというのにこの状態はいかがなものかと別の斬り口を示して見せてました。ふむ、誰でも思うことですけれどね、もったいないことと。異物の混入と一括りですが、毒物が溶け込んでいる場合から、袋の中にモノが見える単純なものまでありましょう。後者であれば誰もゴミを食べやしませんしね、現実に健康被害が出ているのでもないのです、化血研の事件と同じことです。商品自体に問題なければ食べりゃあいいんですが、それこそきちんとした商品を提供するという先進国の業者としてのレベルの話になれば回収の一手、廃棄の一手です。問題が起きてからのコストと事前の自己回収のコストの比較なのでしょう。日本の食糧事情、当人も言ってましたが、大量生産大量消費体制(飽食ですけれどね)と餓死者を出すような地域とを単純に比較する乱暴さです、すり替えですね。不良業者を摘発する除外する。そのためには規制強化です。自由、平等、人権、法の支配の共通理念に反しますか?
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