柳蔭書翰

徒然なるままに、音楽関連の話題に拘らず、常ならんこの世の事々書き散らし諸兄のお耳汚しに供したく思います。

正論の胡乱

2007-02-18 10:21:29 | Weblog
病気腎移植に係る「外部医師らによる専門委員会」が調査結果を出したそうです。「病気腎移植のほとんどについて、腎臓の摘出は医学的に適切ではなく、別の患者への移植もするべきではなかった(日経新聞)」というものです。この専門委員会(これが大体に胡散臭いものが多く、学者の机上の正論に終始するものですが)は腎臓内科、泌尿器科、病理医などの外部の専門家によって構成されているそうです(中国新聞)。つまり、非難されている万波医師が主張している、目の前に透析から逃れたいと熱望する者がいて、その者にとっては移植によって得られると考えられるベネフィットが医学的なリスクを大きく上回っているという現実、情実は無視されているわけです。万波医師が踏み出した動機の大なる部分が無視されているわけです。外部調査というのはそういう情実を排除することが目的だろうと言われましょうが、医者は単に医学的に推測される因果関係だけを基準に日常の業務(診療)に携わっているとお思いですか?科学的に正しい、ちゃんとしたデータとしての正当さのあることだけが診療手段、診療動機と思われますか?これが今の医学のトレンドで、エビデンスなんて横文字で表記表現して素人を欺いているのですが、万波医師が移植しようと思い立ったのは功名心や技術への過信、状況を考慮しない無謀、これを専門委員は「初めに移植ありきの腎臓摘出と言われても仕方がない」と言ったそうですが、これらだけが要因ではないでしょう。いえ、万波医師がどういう人なのか知りませんし、泌尿器科業界での評価も知りません。ですから、外部調査なんて言いますが腎臓専門医やら泌尿器科の医者達にはすでにこの人の評価評判が刷り込まれているわけで、却って逆向きのバイアスがかかっているんじゃないのかと勘ぐりたくもなります。ここは大きく訝しいことで、また人は(マスコミは)指摘もしません。学会が真で正義で神聖でという前提です。大間違いです。硬直して年功序列がびくとも動かない、新しい動きを許さない、というかいくら斬新有効な手段であっても、その世の中への貢献度や有効性よりも何よりも学会内の手続きを優先させようとする、もっと平たく言えば学会のボス達の許しを得ることを第一に措いているかびの生えた権威主義がはびこっている組織です。事実この人は移植学会やらなんちゃら学会には入っていないそうですから、部外者をはじくは組織人の常です、特に医学界なんてのはそういう部分が旧態依然です、こんな委員会に推薦されてくる医者は学会根性(島国根性と言い換えましょうか)に凝り固まった連中です、どうしてフラットな審議ができましょうか。連中が一番嫌う手続き違反を犯したのです。有効性云々の審議以前の問題です彼らにとれば。どうして公平公正な審議が為されましょうか。真に人類のためになる事かどうか?なんて審査が為されるわけがありません。しかも万波医師は学会に属していません。彼らにとれば彼を擁護する理由はこれっぽっちもないわけです。これを刺して(指して)、そして先の「初めに移植ありき」という言を受けて万波医師は「初めから結論ありきだと反論した」そうです(中国新聞)。彼が一番知っていますし全ては予想された反響でしょう、自分の立場の弱さ、学会の態度、世論の向き。こういう流れを考えるに、私は単純に判官贔屓、万波医師の側に立ちたいと思います。
 前にこの欄に書きましたが、広島大学の名誉教授が病気腎からのがんの転移や悪化はなかったという調査結果を新聞に公表しましたね。今回新聞には、B型肝炎陽性の人からの腎臓の移植についての非難が強調されています。これはさすがに私もまずかろうと思います。感染症はまずかりましょう、やはり危険が大きいと専門外ながら思います。でも、それでもいいからと懇願する人がおられるわけです。透析の辛さはそれだけ人生の重荷なのでしょう。こんな「科学」の衣をまとった正論が人を救いますか?不適切なんて言葉にまず腹立たしい思いがします。適切ではない、とごまかしているのですから。禁止すべきとかもっと強い制御があるはずです。これが学会の、世の中世論のずるさです。前も言いましたが、万波医師はパイオニアなんです。潰せばいいのではありません。彼の残したデータこそが今後の発展の基調なのです。日本の腎移植(移植の是非はさておいて)の先行きを左右する重大な出来事と思います。そう思います。
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