映画では、「鬼畜」「復讐するは我にあり」「楢山節考」あたりが代表作ということになるでしょうが、実はかなり彼のキャリアに大きな影響を及ぼす可能性のあった作品が、見て見ぬふりをされています。
Mishima: A Life In Four Chapters です。
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下のほうの昔のジャケットのほうがいいですかね。
この映画は、緒形が三島由紀夫を演じています。
正直、緒形も強烈な役者ですが三島もあのような唯一無二の人物ですので、緒形も演じるのにかなりの困難を感じているようにも思えますが、しかしこの映画はなぜか日本で公開はされていません。
何でも故・三島夫人が公開を嫌がったということでして、詳細な事情は明らかではありませんが、ともかく日本では劇場公開、ソフト発売ともに見送られています。
出演者は緒形のほかにも坂東八十助、佐藤浩市、沢田研二、永島敏行、 萬田久子 、烏丸せつ子 といったところで、80年代半ばの時代性を考えればなかなかのキャストではないでしょうか。そして、英語のナレーション(三島の独白)にロイ・シャイダーも出演しています。彼も今年亡くなってしまいました。
この映画の構成は、自衛隊で割腹自殺するまでの三島の生涯と、『金閣寺』『鏡子の家』『奔馬』(『豊饒の海』第二部)の3篇をおりまぜるという構成になっています。
大きな声ではいえないのですが、拙宅の近所のとあるレンタルビデオ屋では、なぜかこの映画の米国版VHSがありまして、私も鑑賞しました。こんなことはこの店だけだと思ったのですが、どうやらけっこう日本中の店に出回っていたみたいです。
その後2003年、ニューヨークにいった際、紀伊国屋書店でこの映画のDVDを買いました。日本とはリージョンコードが違いますが、私はリージョンフリーのデッキを持っているので、再生に困難はなく鑑賞できました。
私は個人的には三島という人間にはきわめて批判的なのですが、この映画自体は面白く見ました。演出もしっかりしているし、小説での抽象的なセットもなかなかのものです。三島には熱狂的なファンがたくさんいるわけで、いろいろ不満もあろうかと思いますが、しかし一見の価値はあるのではないかと。
正直、この映画が日本で公開されれば、緒形拳の代表作として当然扱われたでしょうし、また外国映画への進出もかなりスムーズになったのではないかと思うのですが、公開されずしかも関係者が言及すらいやがっているので、封印された作品になっています。残念です。
そういえば、緒形は、もともと「戦場のメリークリスマス」にも出演予定だったとか。たけしの役です。個人的には、緒形が演じたほうがよかったかもと思います。
なお、日本のアマゾンではこの映画を扱っていないみたいですが、米国のアマゾンでは購入可能です。