ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)

映画、旅、その他について語らせていただきます。
タイトルの由来は、ライプツィヒが私の1番好きな街だからです。

わずかの間ではあるが、最高裁判所長官と検事総長が、両方とも東京大学あるいは京都大学の出身でないのは、初めてである

2024-07-13 00:00:00 | 社会時評

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畝本直美・新検事総長が抱負「国民の信頼が検察の支え」

2024年7月9日 21:47

「重い職責に身が引き締まる思い。誰もが活躍できる柔軟な職場環境を整備したい」。9日付で検事総長に就任した畝本直美氏(62)は戦後33代目にして初の女性だ。

検事生活36年のうち、10年以上を法務省で過ごした。非行少年らの居場所づくりに関心を深め、更生支援の専門家を何度もたずねた。「検察は刑事司法の一部。適切な法執行には更生の観点も欠かせない」と改めて気づかされたという。

捜査・公判部門でも実績を重ねた。上司や部下からは「緻密で抜け目のない仕事ぶり」といった評が聞かれる。東京高検検事長として、長年にわたる不透明な資金の流れを明らかにした自民党派閥の政治資金規正法違反事件を指揮した。

1988年の任官当時、同期検事41人のうち女性は4人。法務省によると、2023年は新任の4割が女性に。「今では珍しくなくなった」と感慨深げに語る。

歩んできた道は常に「女性初」という点で注目された。キャリアを切り開いた姿を多くの後輩が見つめる。「女性が一度でも経験したポストは性別が関係なくなる。検事総長もこうした積み重ねのひとつにすぎない」。先陣を切る気負いはない。

9日の就任会見では「検察が国民の信頼という基盤に支えられていることを心に刻み、常に検察の理念に立ち返り公正誠実に検察権の行使に努めたい」と抱負を語った。

(うねもと・なおみ、千葉県出身)

(以下、前検事総長の退任の会見は略)

女性(畝本直美さん)が初めて検事総長になったというのでこの人事は話題になりましたが、個人的には、新検事総長が、私立大学である中央大学の出身であることが興味深いですね。記事にもあるように、戦後の検察庁法にもとづく検事総長は彼女で33人目であり、その33人の出身大学をみると、東京(帝国)大学が25人、京都(帝国)大学が4人、岡山大学、一橋大学が1人であり、私立の中央大学が彼女で2人目です。

で、彼女の前に中央大学出身で検事総長になった笠間治雄氏は、東京高等検察庁検事長であがりの立場でしたが、前任の大林宏氏(一橋大学出身。北京で伊藤律への事情聴取をした人)が、検察不祥事(大阪地検特捜部主任検事証拠改竄事件)のからみで辞任することとなり、その後釜として笠間氏に「なってくれ」と依頼したわけです。つまり人事としてはかなりイレギュラーなものでした。

今回の人事も、やはり本来の検事総長本命の人が脱落したので、その関係で彼女が東京高検検事長になり、検事総長になったということのようですが、それでもなんでも、女性でしかも通常の人事で私大出身者が検事総長になったのは初めてなわけで、これはこれでエポックメイキングなことであることは間違いありません。

前にも同じことを書きましたが、鳥取三津子さんが、東亜国内航空(の時代でした)に短大卒でスチュワーデス(という名称の時代でした)として採用された際、日本航空の社長になるなんてことは空想次元でも誰も考えなかったし、おそらく早稲田大学を卒業した田村智子さんが日本民主青年同盟(民青)に就職した際も、まさか自分が日本共産党のトップになるとはこれまた考えてもいなかったでしょうから、これもそれと同じことでしょうね。畝本新検事総長も、検事に任官した際、棚ボタだろうが何だろうが、自分が検事総長になるなんて、これまた想像もしていなかったでしょう。たぶん高検トップ(東京高検と広島高検)になることも予想していなかったのでは?

2つの大きな組織のトップが女性に交代したのも、時代の変化なのだろう(日本航空と日本共産党)

さてさて現在の最高裁判所長官戸倉三郎氏であり、かれは初の一橋大学出身の長官です。現在最高裁の長官は歴代20名であり、出身大学は、東京(帝国)大学16名、京都(帝国)大学3名、一橋大学1名です。現長官は、1954年8月11日生まれなのでその日が定年です。次なる新最高裁判所長官として、今崎幸彦氏が就任することとなります。記事を。


新しい最高裁判所長官に今崎幸彦氏 閣議決定
2024年7月9日 12時51分

政府は9日の閣議で、新しい最高裁判所の長官に、最高裁判所判事の今崎幸彦氏を充てることを決めました。

これは、最高裁判所の戸倉三郎長官が来月、定年で退官するのに伴うものです。

新しい最高裁判所の長官に決まった今崎幸彦氏は66歳。

最高裁判所の事務総長や東京高等裁判所の長官を経て、おととし6月から最高裁判所の判事を務めています。

最高裁判所の長官は、13代連続で裁判官出身者が務めることになります。

また閣議では、新しい最高裁判所の判事に、大阪高等裁判所長官の平木正洋氏と、東京高等裁判所長官の中村愼氏を起用する人事を決めました。

平木氏は63歳。

東京高等裁判所判事や東京地方裁判所の所長を経て、去年4月から大阪高等裁判所の長官を務めています。

中村氏は62歳。

水戸地方裁判所の所長や最高裁判所の事務総長を経て、おととし6月から東京高等裁判所の長官を務めています。

今崎氏と平木氏の人事は来月11日以降に、中村氏の人事は9月2日以降に発令されます。

林官房長官「今崎氏 裁判実務の経験豊富で適任」 
林官房長官は閣議のあとの記者会見で「今崎氏は裁判実務の豊富な経験を有するほか、最高裁判所の事務総長や東京高等裁判所の長官など要職を務め、裁判所の組織運営にも精通し、最高裁判所の長官として適任だ」と述べました。

上の記事には出ていませんが、今崎氏は京都大学出身で、歴代の最高裁長官を、続けて非東京大学出身者が務めるのはこれが初めてです。とすると新最高裁長官が就任するまでは、最高裁判所長官と検事総長が2人とも東京大学あるいは京都大学出身者でない人がその職務に就くことになり、これは初めてのことです。今崎氏が新長官になっても、この2名ともが非東京大学出身者であるというのは、かなり異例ということになるでしょう。

単純にそんなことを言えたものではないでしょうが、これもある程度は、役所の東京大学や京都大学出身者偏重というものに穴をあけたということになるんですかね。たぶんある程度はそうなのでしょう。ちなみにいかにも東京大学法学部出身者がえらくなりそうな財務事務次官(大蔵事務次官をふくむ)は、前次官の矢野康治氏が一橋大学出身、それ以前の東京大学以外出身の事務次官としては、2006年~07年に事務次官だった藤井秀人氏(京都大学)、それより前は、1947年~48年の池田勇人(京都帝国大学)にさかのぼります。池田が事務次官になれた背景には、戦争で官僚が徴兵されたこと、公職追放があり人事が混乱したこと、石橋湛山大蔵大臣が、池田が政界入りを望んでいることを知っていたので人事で優遇したといったことがあったようです。ほかには、1945年~46年に事務次官だった山際正道氏と99年~2000年の薄井信明氏が東京大学ではありますが、経済学部の出身でした。これからは幹部コースの役人も、昔ほど東京大学出身者がいなくなるので、非東京大学出身者が事務次官ほかの最高幹部になるんですかね? あるいはそうなのかもしれません。

いずれにせよ前記事のタイトルにしたように、私大出身者の女性が検事総長に就任したのも、時代の変化なのでしょう。最高裁判所長官への女性の就任は、裁判官出身者が最高裁判所判事になるまでは、もうすこし時間がかかるのかもしれません。私大出身者の長官就任は、さらにハードルが高いのではないかと思います。


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2 コメント

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Unknown (bogus-simotukare)
2024-07-17 04:03:15
https://bogus-simotukare.hatenadiary.jp/entry/2024/07/14/000000_1の流用コメントですが。
 赤坂幸一九州大教授(憲法学)のツイートを見ていたら
Koichi AKASAKA
 三木武夫関係資料中、坂本吉勝・最高裁判事の後任に環昌一を推薦する文書には、末尾に「弁護士久米愛(ボーガス注:中田正子、三淵嘉子と共に日本初の女性弁護士)は、推さない。」と書かれています。このとき実現していたら、1994年の高橋久子(ボーガス注:労働省婦人少年局長で退官)の遥か前、1976年に女性最高裁判事が誕生していたことになります。推さない人物に敢えて言及する点が興味を惹きます。
(引用終わり)
というのがありました。俺的に興味深いのでメモしておきます。
返信する
>bogus-simotukareさん (Bill McCreary)
2024-07-17 22:01:40
70年代の日本では、まだ女性の最高裁判事は難しかったと思います。
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