ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)

映画、旅、その他について語らせていただきます。
タイトルの由来は、ライプツィヒが私の1番好きな街だからです。

「ペーパー・チェイス」のDVDがついに発売される

2010-02-11 00:31:28 | 映画


私は知らなかったんですが、ついに「ペーパー・チェイス」がDVD発売されるようですね。世の中なぜかなかなかソフト化されない映画(「フォロー・ミー」)とかビデオ化はされてもDVD化はされない(「いちご白書」)とか、いろいろな映画がありますが(アニセーさんの映画だって、日本映画の「夢・夢のあと」ですらソフト化が実現していない!!!)、この「ペーパー・チェイス」もなぜか日本ではDVD化されていませんでした。が、ついに3月末に発売されるようです。

 





うれしいですね。これは私の大好きな映画だからです。そして、おそらく世界の映画界がなかなか取り組まないテーマをこの映画はあつかっています。

すなわち―「勉強する学生」

この映画が製作された1973年は、世界中で学生運動が吹き荒れた時代の直後でした。日本でも学生運動を題材とした映画が製作されました。たとえば大島渚の「東京戦争戦後秘話」など。上にあげた「いちご白書」もニューヨークのコロンビア大学の闘争が原作です(映画のロケーションは、サンフランシスコでおこなわれました)。

が、この映画に登場する学生(正確には院生)は、ともかく勉強勉強勉強です。



アメリカの学生は、だいたいよく勉強するっていいますけど、ハーヴァードのロースクールの学生たちですから、最高レベルに勉強する連中ばかりです。

で、日本もそうですけど、だいたい学生を主人公にした映画って、恋とか友情とかその他もろもろのことを題材にしていはいても、「勉強」というのはほとんど題材になりません。けっきょく「勉強する学生」なんてつまらんということでしょうか。

でもこの映画は面白いですね。正直、主人公(ティモシー・ボトムズ。「ジョニーは戦場へ行った」で主人公をやった人)と恋人(リンゼイ・ワグナー。「地上最強の美女バイオニック・ジェミー」で、日本でもおなじみ)とがからみあうシーンはありきたりでたいして面白くありません。が、勉強をしていく学生たちが狂気に陥っていくシーンは抜群の面白さです。この映画の原作は、実際にハーヴァードのロースクール(この間記事にした「ある愛の詩」のオリヴァー親子もここの卒業生ですね)を卒業したジョン・J・オズボーンJr.です。彼は1970年にここを卒業して、すぐにこの映画の原作を書いています。

また、撮影はゴードン・ウィリスが担当しています。といってぴんと来ない方も、「ゴッドファーザー」の撮影をした人といえばなるほどと思うでしょう。ほかにもウディ・アレンの作品やアラン・J・パクラの映画(「デビル」も彼の撮影。そしてこれがいまのところ彼の最後の作品)なども担当しています。世界映画史上に残る大撮影監督です。

リンゼイ・ワグナーについては、また記事を書きましょう。とても美しい女優さんでした。







下は、最近(2008年)の彼女です。



そしてこの映画では、謹厳実直なキングスフィールド教授を演じたジョン・ハウスマンがやはり印象的です。もっぱらプロデューサーの仕事をしていた彼が、学生たちをしごきあげる契約法の教授を演じています。



いまでも私が印象に残っているのは、教授に向かって
「ぼくは写真のような記憶力の持ち主です」
と言った学生にむかって、
「Photographic memory is absolutely no use for you,Mr. Brooks!」
と叱咤するシーンです。
(写真のような記憶力なんてものは、君にはまったくもって無用なものだよ、ブルックス君!)とでも訳すんですかね。

この役が非常に評判がよく、彼は1973年度のアカデミー賞の助演男優賞を受賞し、さらにテレビシリーズ化されて同じ役を演じていました。

主人公は、仲間が挫折して退学したりといった苦難を乗り越えるために勉強に励みます。、ホテルにこもって猛勉強したりと努力を重ねて、非常にいい成績をとることができます。しかしそれを成し遂げても・・・。

最後にキングスフィールド教授に授業の礼を主人公は述べますが、けっしてそれまで見ず知らずの関係でもないにもかかわらず、教授は主人公にたずねます。

「君の名前は?」

超エリートであるキングスフィールド教授にとっては、優秀な学生である主人公もなんていうこともない存在なのかもしれません。

成績表も、しょせん紙飛行機のような薄っぺらなものにすぎません。海岸で、主人公は大学から送られてきた成績表を紙飛行機にして飛ばしてしまいます。そして映画は終わります。

成功する学生、挫折する学生、さまざまな学生が存在します。監督のジェームズ・ブリッジスは、それを淡々と描きます。

それにしても印象的なのが、最初に座席表を教授が広げてそこには学生の顔写真がはられていることです。これが米国の大学院で一般的なのかどうか私は知りませんが、なーんか厳しそうですね。

キングスフィールド教授は、ゆっくりと、わかりやすい発音で講義をしながら学生に質問をぶつけます。最初の授業で教授の質問に満足に答えられなかった主人公は、トイレに行ってはいてしまいます。学生寮に入ると、キングスフィールドのおかげで精神を病んだ学生がいるなどという話を聞かされます。

お遊びでなく、アメリカの大学院でロースクールに行ったり、Ph.DやMBAをとりたいと本気でお考えの方は、参考までにこの映画を見てもいいかも。いろいろ勉強になりそうです。

DVDの仕様とかはちょっとまだ分からないのですが、発売されたらこの映画についてまた記事を書きたいと思います。
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2 コメント

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いい映画ですよね (anupam)
2010-02-11 15:49:40
日本の大学生よ、チミたちもこの映画を見て勉強に励みなさい!と言いたくなるような作品ですな~

でも、学生時代って学生でぬくぬくいられることが当たり前で、勉強できる環境にいられるってことが恵まれていることに気づけないんですよね~

過ぎてみると、もっと勉強しておけばよかったかなって思ったりね・・

DVD化ということでいえば、フランス映画の小作品(でも素晴らしい)「小さな約束」もビデオのみです。

がっかり・・
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>anupamさん (Bill McCreary)
2010-02-12 07:56:48
後にも先にも、「勉強する学生」を描いて世界的に成功した映画って、これくらいしかないのでは…。

司法試験とか難関大学の受験とかでの勉強はともかく、日々の勉強でここまでみせる映画は少ないでしょうね。

>過ぎてみると、もっと勉強しておけばよかったかなって思ったりね・・

みんな思いますよ、それは(笑)。いま私が大学院に行っているのも、それと無関係ではありません。

>小さな約束

こんど私も見てみようと思います。
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