急に暑くなりましたね。
ちょっと体調不良で、ブログをお休みしていました。
(その間に「聴雨の茶会」が満席になりました。ありがとうございます!)
待合に「心まかせに」と書かれた色紙が掛かっています。
これも親友の布絵作家・森下隆子さんに7年ほど前に作って頂いた色紙です。
茶事に無我夢中のころで、5月の初風炉の茶事だったかしら?
テーマはたしか「旅」、旅箪笥と色紙(詩)で表現したような・・・。
「萩原朔太郎の大好きな詩「旅上」の色紙を作ってください」とお願いしました。
出来上がってきた色紙は、旅行鞄と菖蒲がかわいらしく布絵で描かれ、
「心まかせに」の字が躍っていて、一目で気に入りました。
先日、この色紙を見て、とても感激してくれた茶友がいました。
24日にいちねん会(七事式の勉強会)のため我が家へいらしてくれたAさんです。
私が口ずさんだ「・・・心まかせに」が心に残り、
重い病床にある親類の方へ詩の一節を添えて手紙を送ったそうです。
せめては楽しかった旅の思い出を心に描いて、やすらぎの時を送ってください・・・と。
Aさんからそのお話を聞き、感動しました。
「心まかせに」の色紙を5月に選んで良かった!と思い、
朔太郎の詩「旅上」と「五月の貴公子」をブログへ掲載します。
旅 上
ふらんすへ行きたしと思へども
ふらんすはあまりに遠し
せめては新しき背広をきて
きままなる旅にいでてみん。
汽車が山道をゆくとき
みづいろの窓によりかかりて
われひとりうれしきことをおもはむ
五月の朝のしののめ
うら若草のもえいづる心まかせに
五月の貴公子
若草の上を あるいてゐるとき
わたしの靴は 白い足あとを のこしてゆく
ほそい すてつきの 銀が草でみがかれ
まるめてぬいだ手ぶくろが 宙でおどつて居る
ああ すつぱりと いつさいの憂愁を なげだして
わたしは柔和の羊になりたい
しつとりとした 貴女(あなた)のくびに手をかけて
あたらしい あやめおしろいの にほひをかいで居たい
若くさの上をあるいてゐるとき
わたしは五月の貴公子である。