9月2日(土)に夕去りの茶事をしました。
8月終わりから9月半ばまでが夕去りの茶事のベストシーズンと前にも書きましたが、
日の入りは18時8分でした・・・それで18時30分前後の中立を目安として、席入りは16時30分にお願いしました。
夕去りの茶事をよくしましたが、それは次のような理由からでした。
〇 中立で昼から夜の明暗の変わり方の妙、露地や茶席の灯りの風情を味わってもらいたい
〇 短罫や燭台の灯の元で濃茶を練って差し上げるのが大好きです(いつにも増して主客の集中度が研ぎ澄まされるように感じるから・・・)
〇 夕去りの茶事は決まりがなく、変幻自在に次第などを変えれるのが面白くやりがいがある
〇 夜咄の茶事では終了時間が遅くなり、遠くからのお客さまには帰宅が遅くなってしまう
〇 食事は出来たら明るいうちに召し上がっていただきたい
等々
まだ猛暑のような暑さが残る中、袴姿の正装でお客さまがいらっしゃいました。
お客さまはST氏、SY氏、そして社中のT氏の3名様、全員が男性という茶事は初めてでした。初めて・・というのは新鮮で、何とも言えぬ緊張とときめきを感じながら、冷房をきかし、冷たい汲出しを用意してお待ちしました。
板木が3つ打たれ、半東AYさんがレモングラスとロック氷の入ったワイングラスを運び出し、腰掛待合へご案内しました。レモングラスはご近所のYさまから頂いたもので、午前中に3分ほど煮だし冷蔵庫で冷やしておきました。さっぱりとしたお味がおすすめです。
しばらくして迎え付けに出ました。
いつものように蹲の水を周囲に撒いて清め、手を浄め、口を漱いでから、蹲へ桶の水をザァッ~と水音高らかに注ぎ、一旦桶を戻しますが、その時に大失敗!
無意識!に蹲柄杓を桶に入れて戻してしまったようです・・・きっとお客さまは困惑されたと思うのですが、すぐに気が付かず大変失礼しました(お客さまは一言もおっしゃらず対処してくださったようで・・・ありがとうございます!)
(初座の点茶盤の設え、釜は桐文車軸釜で長野新造です)
お客さまお一人お一人と、嬉しくご挨拶を交わしました。
御正客ST氏は3月に歳祝いの正午の茶事にお招き頂き、初めてのお目文字にもかかわらず、一人亭主で心に残るおもてなしをしていただきました。
また、御詰のT氏(社中)は昨年5月に飯後の茶事で自宅茶室にお招き頂き、次客SY氏はその時にご一緒した素敵な方です。
待合の掛物は「去々来々来々去々」、足立泰道老師の御筆です。
暑かった夏が去り 秋がやって来る
日が暮れ一日が終わり また新しい一日が来る
親しかった人が去って寂しい思いをするが また新たな人がやってくるのが嬉しい
季節も歳月もそして人も 「去ってはまた来る 来るとまた去って行く」
「去々来々来々去々」を心静かに受け止め 茶を楽しみながら一日一日を過ごそう
そんなことをお話しました。
(尾花・ススキと葛の花・・・花入れは桂籠)
初座の床には尾花・ススキと葛の花を桂籠にいけました。
猛暑のせいで、いつもは出始めているススキの穂がどこにも見当たらず、探すのが大変でした。ツレがススキと葛の花を見つけて来てくれて、やっと間に合いました。
花は野にあるように・・・いつも夕去りの茶事では夕方にしぼんでしまう花が多く、一番花が難しいのですが、失敗を重ねて今では花探しも含めてやりがいを感じています・・・。
(初座で点茶盤の下に飾っておくので「飾り炭斗」ともいうそうです)
初炭になり、淡々斎お好みの蛍籠炭斗を虫籠炭斗とし、キリギリスを添えました。
夕去りの茶事では続き薄茶にすることが多く、暁庵も後炭を省略することとし、朝茶事のように初炭で風炉中拝見をしていただきました。
香合は月見舟、琵琶湖堅田の浮御堂古材で作られていて、稲尾誠中斎作です。
平安の昔、やんごとなき方々は水に月を映して愛でたそうです。
やんごとなき茶道男子さまたちは香合を拝見しながら、能「三井寺」の月、月見舟で琵琶湖へ漕ぎ出でて湖面に映る月など・・・いろいろな月に思いを馳せてくださって、伺っていて楽しゅうございました。香は沈香(松栄堂)です。つづく)