暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

夕去りの茶事を終えて・・・(1)

2023年09月11日 | 「立礼の茶事」(2023年~自会記録)

 

9月2日(土)に夕去りの茶事をしました。

8月終わりから9月半ばまでが夕去りの茶事のベストシーズンと前にも書きましたが、

日の入りは18時8分でした・・・それで18時30分前後の中立を目安として、席入りは16時30分にお願いしました。

夕去りの茶事をよくしましたが、それは次のような理由からでした。

〇 中立で昼から夜の明暗の変わり方の妙、露地や茶席の灯りの風情を味わってもらいたい

〇 短罫や燭台の灯の元で濃茶を練って差し上げるのが大好きです(いつにも増して主客の集中度が研ぎ澄まされるように感じるから・・・)

〇 夕去りの茶事は決まりがなく、変幻自在に次第などを変えれるのが面白くやりがいがある

〇 夜咄の茶事では終了時間が遅くなり、遠くからのお客さまには帰宅が遅くなってしまう

〇 食事は出来たら明るいうちに召し上がっていただきたい

等々

 

まだ猛暑のような暑さが残る中、袴姿の正装でお客さまがいらっしゃいました。

お客さまはST氏、SY氏、そして社中のT氏の3名様、全員が男性という茶事は初めてでした。初めて・・というのは新鮮で、何とも言えぬ緊張とときめきを感じながら、冷房をきかし、冷たい汲出しを用意してお待ちしました。

板木が3つ打たれ、半東AYさんがレモングラスとロック氷の入ったワイングラスを運び出し、腰掛待合へご案内しました。レモングラスはご近所のYさまから頂いたもので、午前中に3分ほど煮だし冷蔵庫で冷やしておきました。さっぱりとしたお味がおすすめです。

しばらくして迎え付けに出ました。

いつものように蹲の水を周囲に撒いて清め、手を浄め、口を漱いでから、蹲へ桶の水をザァッ~と水音高らかに注ぎ、一旦桶を戻しますが、その時に大失敗!

無意識!に蹲柄杓を桶に入れて戻してしまったようです・・・きっとお客さまは困惑されたと思うのですが、すぐに気が付かず大変失礼しました(お客さまは一言もおっしゃらず対処してくださったようで・・・ありがとうございます!

 

     (初座の点茶盤の設え、釜は桐文車軸釜で長野新造です)

お客さまお一人お一人と、嬉しくご挨拶を交わしました。

御正客ST氏は3月に歳祝いの正午の茶事にお招き頂き、初めてのお目文字にもかかわらず、一人亭主で心に残るおもてなしをしていただきました。

また、御詰のT氏(社中)は昨年5月に飯後の茶事で自宅茶室にお招き頂き、次客SY氏はその時にご一緒した素敵な方です。

 

待合の掛物は「去々来々来々去々」、足立泰道老師の御筆です。

 暑かった夏が去り 秋がやって来る

 日が暮れ一日が終わり また新しい一日が来る

 親しかった人が去って寂しい思いをするが また新たな人がやってくるのが嬉しい

 季節も歳月もそして人も 「去ってはまた来る 来るとまた去って行く」

 「去々来々来々去々」を心静かに受け止め 茶を楽しみながら一日一日を過ごそう

そんなことをお話しました。

 

          (尾花・ススキと葛の花・・・花入れは桂籠)

初座の床には尾花・ススキと葛の花を桂籠にいけました。

猛暑のせいで、いつもは出始めているススキの穂がどこにも見当たらず、探すのが大変でした。ツレがススキと葛の花を見つけて来てくれて、やっと間に合いました。

花は野にあるように・・・いつも夕去りの茶事では夕方にしぼんでしまう花が多く、一番花が難しいのですが、失敗を重ねて今では花探しも含めてやりがいを感じています・・・

 

 (初座で点茶盤の下に飾っておくので「飾り炭斗」ともいうそうです)

初炭になり、淡々斎お好みの蛍籠炭斗を虫籠炭斗とし、キリギリスを添えました。

夕去りの茶事では続き薄茶にすることが多く、暁庵も後炭を省略することとし、朝茶事のように初炭で風炉中拝見をしていただきました。

香合は月見舟、琵琶湖堅田の浮御堂古材で作られていて、稲尾誠中斎作です。

平安の昔、やんごとなき方々は水に月を映して愛でたそうです。

やんごとなき茶道男子さまたちは香合を拝見しながら、能「三井寺」の月、月見舟で琵琶湖へ漕ぎ出でて湖面に映る月など・・・いろいろな月に思いを馳せてくださって、伺っていて楽しゅうございました。香は沈香(松栄堂)です。つづく)

 

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                    夕去りの茶事支度を始めました