暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

「惜春のコラボ茶会」・・・橘楽庵の第4席へ

2023年05月07日 | 茶事・茶会(2015年~自会記録)

          「円相 本来無一物」(小堀宗通師の御筆)

つづき)

橘楽庵の第4席(最終席)へ入らせて頂きました。

既に皆様が待合に集まっていたので、ご挨拶し、慌てて掛物を拝見しました。

「和敬静寂」(小堀遠州流・宗圓家元筆)の短冊が掛けられています。

「本当! みんなで相和して浮世の憂さを忘れて、誠心誠意感謝しながら、清らかな心持で茶席へ入り、一服頂きたい・・・」と思いました。

短冊の下に橘楽庵・Yさま自筆の絵入りの会記が置かれていて、じっくり読みたかったのですが、ユーモラスな雰囲気の小堀遠州公の絵を拝見して、思わずにっこり! 

第4席の正客は小堀遠州流S氏、次客T氏、三客暁庵、四客EKさま(次客から四客までは裏千家流)、五客KYさま(江戸千家流)、詰は小堀遠州流Sさまです。

すぐに白湯がだされました。白湯の出され方が小堀遠州流でした・・・

正客S氏だけ茶托のような台に白湯の茶碗が乗っています。本来なら全員が順番にこの茶托のような台に乗せて白湯を頂くそうですが、茶会なので省略し、次客からは台なしで頂き、詰Sさまがトライアングルを鳴らして合図し、腰掛待合へ動座しました。

腰掛待合で待っていると、第4席の亭主前田氏が羽箒を持って現われ、枝折戸で一礼を交わしたのち、蹲で身を清めて席入りしました。

床の御軸は「円相 本来無一物」(小堀宗通師の御筆)です。

「円相のようにまぁ~るく仲良く手とつないで、今日のコラボ茶会を一緒に楽しみましょう・・・」橘楽庵Yさまのお話に大きく頷いていました。

お花は杜若でしょうか、もうすぐ端午の節句ですね。

荷駄を背負った馬の香合が珍しく、何処か異国の香りがしました。

点前座の設えがとても素敵で、硯屏(けんびょう、筆を立てかける文具)を使うお点前と伺っていましたが、水指の左側に硯屏が置かれ、その前に蓋置があり、硯屏に柄杓が掛けられていました。

硯屏は遠州好み、七宝透瓢箪蔦絵という素晴らしいものでした・・・この時から小堀遠州流の魔法に掛けられ、次はどんなサプライズがあるのかしら?と興味津々でした。

 

                              (クリックしてね)

風炉先屏風は先代家元・小堀宗通筆の小色紙貼り混ぜ風炉先屏風、色紙は小堀遠州旅日記の和歌だそうです。水指はイタリー紅毛花弁丸型(小堀宗通箱書)です。

前田氏による「硯屏の点前」が始まり、Yさまが後見役でいろいろお話をしてくださいました。

前田氏(亭主)とYさま(後見)のコンビはもう息ぴったりで、お二人の長い交友と麗しい信頼関係をうらやましく思います。

硯屏に掛けられた柄杓を左膝上で構え、蓋置が置かれました。柄杓の構え方、蓋置の位置、袱紗のさばき方と清め方、茶巾の畳み方など裏千家流とはまったく違いますので、いつも目をまん丸くして拝見しています。

 (釣釜は「六瓢釜」、鵬雲斎好みというお心遣いが嬉しい!)

釣釜が掛けられ、釜は「六瓢釜」(鵬雲斎大宗匠好み、菊地正直造)、形良く無病息災を表している釜には6個の瓢が隠れているそうで、クイズみたいに種明かしをしてくださいました。

釣釜の鎖と金銀象嵌の弦(ツル)が優雅で素晴らしく、目を引きます。ふき漆が美しい炉縁には松唐草文様が描かれていました。

お菓子が運ばれ、「唐衣」(東宮製)という銘でしたが、紫のグラーデーションが繊細で美しく、上品な甘みを味わいました。銘々盆には百人一首が書かれ、敷紙の裏には英訳が貼られていて、こちらも心遣いがステキです。

     (紫のグラーデーションが美しい「唐衣」)

   ながらえば またこのごろや しのばれむ

       憂しと見し世ぞ 今は恋しき      藤原清輔

 

心を込めて薄茶が点てられ、客一同感謝しながら頂きました。

喉が渇いていたのでとても美味しく、心身が潤っていくようでした。薄茶は「和光」(丸久小山園)です。

主茶碗は、高い高台が存在感を放つ紅安南茶碗(京焼、国領寿人作)です。他にもYさまが選んでくださった安南手茶碗(蘭山作)、三島茶碗(森里陶楽作)、赤膚焼(大塩昭山作)などの茶碗を皆で鑑賞しながら、薄茶席ならではのお話が愉しく交わされました。

最後に拝見に出された茶器、茶杓、蓋置を書いておきます。

茶器は遠州好み鉄刀木粒菊棗(宗玄箱書)、逆樋の味わい深い茶杓は銘「好日」(小堀宗通師作)、拝見の出し方が裏千家流と違うので新鮮でした。

蓋置にびっくり! 小さな小さな旅用の硯だそうで、硯屏の前に置く蓋置としてこの硯ほどピッタリなものはない・・・と感心しました。

こうしてあれこれ楽しく過ごさせて頂いた1時間のなんと!短かかったこと。

でも、その凝縮された1時間だからこそ、かけがえのない交友のひと時だった・・・としみじみ思うのです。

皆さま、惜春の「好日」をご一緒させて頂き、ありがとうございました!

 

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