暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

壷中の茶事へ招かれてー2

2017年03月23日 | 茶事・茶会(2015年~他会記録)

  (3月21日、桜の開花宣言がありました)

(つづき)
初炭手前が始まりました。
炉辺へ近寄り、湿し灰の撒き方や炭の置き方などを拝見するのですが
「釣り釜は風炉釜を使うので炭は風炉用がよろしいとお教えいただきましたので
 炉炭の中から細いものを選んでみました」
ちょうど我が家でも五徳をあげ、釣り釜にかかるところでしたので、ご亭主の所作や一言一言がお勉強になります。

香合が拝見に出されました。
古帛紗に香合を載せて引き、そのまま拝見に回しました。
香合は貝合わせ、蓋裏に和歌が書かれ、中に十二単の女人が描かれています。

    すみの江の 岸による波よるさへや
        夢のかよひぢ 人目よくらむ


平安時代の歌人・藤原敏行の和歌(古今集)でした。
「すみの江」とは摂津国の歌枕、今の大阪府にある住吉神社付近の海で、当時は入江になっていたそうです。
ご亭主は長く大阪府に住んでいたそうで、懐かしそうにお話してくださいました。
和歌の神を祀るという住吉神社・・・暁庵はまだ訪ねたことがないのが残念です。
すぐに香の薫りが漂ってきます。
香はマイブレンド、なんてステキなのでしょう!(でも、歌に因んだ香銘が思い出せません・・・う~ん)

手づくりの懐石が次々と運び出されました。
中でもふっくらと焼かれた鰤の幽庵焼、春野菜のクリーミィな白和え・・・料理のコツもいろいろお教えいただきました。
向付、炊き合せの古久谷の盛皿が垂涎もので、お味とともに器もたっぷり堪能しました。
半東なしで一人で懐石を作り、盛付、運び出しをされたご亭主の心意気に一同深く感謝!です。

 
   貝母(ばいも)  (季節の花300)                      

後座へ席入すると、丈長にすっきりと貝母と筒咲の白椿が備前筒花入に生けられています。
清楚にして気高さを感じる花の佇まいはご亭主がそこにいらっしゃるかのようでした。

濃茶点前が始まりましたが、懐石の時には賑やかだった「薬缶」が静かなのが気になります。
ご亭主の所作に見惚れていると、釣り釜のゆらゆらに誘われるように急に睡魔に襲われました。
「眠くなるような能は好ましい能・・・」と、何処かで誰かから伺ったことがありますが、
濃茶の時に眠くなるのもまたゆったりと心がくつろいで、子供のように無心の境地にいるようです。

光悦の茶碗を思わせる黒茶碗で濃茶を頂きました。
香り高くまろやかな濃茶が徐々に心身を満たしていき、「こんなに美味しい濃茶は久しぶり・・・」
濃茶は延年の昔、詰は星野園でした。
Oさま、Iさまとご一緒に御茶を頂くのが嬉しく、夢のような平和で幸せな濃茶タイムでした。


  佐渡箪笥 (箪笥博物館 佐渡夫婦岩)
 
後炭、薄茶と進行し、薄茶の主茶碗にお持ち出しの時から目が釘ぎづけになりました。
小ぶりの茶碗ですが、青磁それとも虫明かしら?
その茶碗で薄茶を頂戴してからお尋ねすると、佐渡の無明異焼だそうで、1997年に人間国宝に認定された三浦小平二作でした。
ご亭主も気に入って、譲って頂くまで某骨董屋へ通い続けたとか・・・ふるさと佐渡がここでも登場しました。

椅子席でどっぷりくつろいでいる暁庵とOさんを見かねて(?)、Iさんがご亭主に薄茶を点ててねぎらってくださいました。
Iさんの心遣いが優しく、同門4人の交歓が相和して楽しく、薄茶タイムがいつまでも続いてほしい・・・とさえ思いました。
全て手づくりされた懐石、主菓子、干菓子のおもてなしは有難く、良き刺激もたくさん頂戴しました。

最後に茶杓ですが、大徳寺・細合喝堂和尚作で銘「おぼろ月」(たしか?)でした。
今思い出すと、「おぼろ月」のように夢の壷中で過ごした素敵な茶事の一日でした・・・。
Yさま、ありがとうございます!!  帰りの電車の中で茶事をおねだりしてヨカッタ!です・・・。

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