暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

茶箱点前の記・・・・玄々斎

2016年09月26日 | 暁庵の裏千家茶道教室


9月に入ってから関東では長雨が続いていて、残暑はこれからでしょうか?
8月中は暑いので瓶掛けで気軽に・・・と茶箱点前をしていました。
月(拝見あり)、雪(拝見ありとなし)、卯の花(拝見ありとなし)です。

茶箱点前をもっと普段の稽古に取り入れたい・・・と思い始めています。
その理由は2つ。
8月だけの集中稽古では、茶箱点前の持つ季節感が今一つ味わえないこと、
急ぐと点前順序を追うようになってしまうので、じっくり時間をかけて茶箱点前の特徴や応用を考えたり、茶箱を観賞する時間を持ちたい・・・と。


     光悦蒔絵の茶箱 (N氏蔵)
    (茶箱の中のお道具も近々紹介する予定)

そんな折、茶友H氏から茶箱点前にも格のようなものがあったという話を伺い、
十一代玄々斎精中が嘉永7年(1854)に書かれた「茶箱点前の記」(後述)を再読しました。

嘉永6年(1853)秋、玄々斎は伊勢の国への道中で
雪月花の茶箱点前を考案した経緯とともに
茶箱点前が軽く扱われぬように
さらには、初心者がただ珍しいからと行うのではなく、常とは違う心持で
月の扱いは唐物伝に添い
雪の扱いは茶通伝に添い
花の扱は小習事に添いて教え伝うべきものであるとしています。

さて、今日の茶箱点前は玄々斎の願ったように教え伝えられているのでしょうか?
残念ながら、そのような心持で教え伝えられているようにはとても思えないのです。
「茶箱点前は好きでないので・・・」とおっしゃる男の先生も多いと伺っています。

これを機に、茶箱の点前について扱いを含めいろいろ考えてみたいし、
来年は眠っていた茶箱や茶籠を生かしたお茶サロン(茶会)はどうかしら?
・・・・と夢見る暁庵です。


    雪点前

  参考に記載します。
    「茶箱点前の記」 嘉永7年(1854)

    いにしへ今も茶の道を学ふ人には 四季の眺望に遠近と出つるにも
    旅路へ趣くにも茶箱てふ物を携へ茶をのミけるか これに手順なけれは
    としころ作法を望人多くミへけれと
    今更拙き考をなすもはしなしと等閑に打ち過けるか
    去年の秋伊勢の国へ 家の道を伝へにまかりける駅路の休泊にも
    茶筥を取出し侍るにつけて
    いかにも茶は尊敬して喫すへき筈なるに
    たとへ旅亭 山野 水辺 船中 芝生などにて
    仮坐し筥をひらくにも手順なく 猥に取扱事本位なき事に思ひしまゝ
    かの旅箪笥の習にある茶点の法にもとつき 棚板をやつして四つにたゝみ
    器据と呼て 此上にて茶具を扱事又箱の蓋と懸このうへにて扱事
    また程よき方円の盆中にて扱事なとを考つゝりつゝ
    是を雪月花の三通りと定め
    流を汲人々に伝へんことは
    仮初にも茶のみちの軽事にならむやうにとねがふのミ

          器据在 古帛 荃立
  一、月の扱 茶器袋入 碗袋入 茶匕袋入
          菓子器 香合 羽箒

          蓋懸こを用ユ 古帛
  一、雪の扱 茶器袋入 碗袋入 茶匕袋入
          菓子器在

          方円の盆ヲ用ユ 古帛
  一、花の扱 茶器 茶碗 茶匕皆袋入
          菓子器
                  以上

    濃茶有時の左法 茶碗二ツ有時の作法等ハ差略 教示可及事
    斯ハ伸けれと初学の人は只めつらしき事のミとて猥に平生にも
    此手前をなす事あれば本法に
    混雑して茶意に背に至へきゆへ
    努て常にハなすへからさることを念しけるまゝ
    月の扱ハ唐物伝に添 雪の扱ハ茶通伝にそへ
    花の扱は小習事に添て教えつたふへきと
    古老の人々と示談を遂て極めし趣意をあらあらここにしるし侍りぬ

               きのへとらのとし
                          今日



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