暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

友にエールを・・・茶道会館・研究会茶会「つぼ仙人」

2016年09月11日 | 茶事・茶会(2015年~他会記録)
                       

2016年9月4日、茶道会館(高田馬場)で行われた研究会茶会へ出かけました。

茶道会館で学んでいる方たちの曜日ごとの研究会が毎年行っている茶会ですが、
今年から6月と9月の2回に分けられたとのことです。
今年も茶友Yさんへエールを送りたくって、後半の9月の茶会へFさん、Kさんと3人で繰り出しました。

10時半に高田馬場駅で待ち合わせです。
台風が次々と襲来している合間なので、迷った末、洋服で出かけましたが、
お二人ともステキな着物姿です・・・それに雨も予報に反して降らずじまいでした。

今年の御題「人」がテーマですが、茶券に次のように書かれています。
   研究会茶会  御題「人」
 ☆ 真之間   つぼ仙人    水交会
 ☆ 峰春亭   主人公     一樹会
 ☆ 山茶屋   ○△□     華葉会  
 ☆ 至誠軒   点心席            

全席まわりましたが、茶友Yさんのいらっしゃる水交会「つぼ仙人」席について記します。

                       

最初の待合(椅子席)の床には扇子が掛けられ、下に古書が置かれていました。
    扇子の書の読み下しは
       身は百尺桜上に居り
       眠を万巻書中に
       放(ほしいまま)にす    長谷川棤南(明治の書家)

    古書は、「公事根源新釋・下巻」(宮中の行事を記したもの)
二番目の待合には、深山幽谷の水墨画が掛けられています。

・・・水交会の方に伺うと、つぼ仙人は元お役人だったとかで、宮中行事の書を荘ったそうです。
扇子の書と水墨画は、いかにも仙人がそこにいらっしゃる雰囲気がありました。

 
お早目ですが、茶席で興味深く伺った「つぼ仙人」のお話しを書いておきます。

  このお話の主人公である費長房(ひちょうぼう)は、市場を管理する役人でした。
  市場に薬売りの老人がいて、店の軒先に壺を一つぶら下げていて、
  市が終わると、壺の中にひょいと飛び込んでいました。
  高楼の上からこれを見ていた費長房は不思議に思い、ある日、老人に随って壷の中へ入りました。
  そこには立派な御殿があり、うまい酒と豪華な料理が並べられ、二人は一緒に酒を飲み交わします。

  費長房は老人と深山幽谷へ入り道術の修行をしたのですが、仙人にはなり切れず帰ることになりました。
  別れ際に老人は費長房へ3つの贈り物をくれたのです。
  不老長寿、行きたいところへ行ける一本の竹の杖、地上の鬼神を管理できる一枚の護符。

  竹の杖にまたがると、瞬く間に家に着きました。
  家を離れて十日しかたっていないと思っていたのが、すでに十数年が過ぎていました。
  その後、費長房は3つの贈り物を駆使して、つぼ仙人として活躍したそうです。(後漢書・方術伝より)


                        

本席(真之間)の床には、「蓬莱五彩雲」の軸、西垣大道和尚筆です。
はっとするほど気品のある白い花、遠目には芙蓉のようにも見えましたが、
白いタチアオイと水引が唐銅の壷に生けられています。
香合は銀製の薬を入れる小箱。

点前座は、雲龍風炉に雲龍釜が掛けられ、つぼつぼ棚の水指は白磁青海波。
棗は群鶴平大棗(前畑春斎作)、
茶杓は、櫟(いちい)の錫杖(つえの形状)、銘は「飛翔」です。
主茶碗は赤楽(初代小川長楽)、替茶碗は仙人の絵がある伊万里でした。

最後に蓋置がとても珍しい形をしているのを発見。
十分杯(じゅうぶんはい)と言って、杯の下に穴があり、杯の中央に小さな搭があります。
サイホン式になっていて穴を押さえて使います。
茶友Yさんから、つぼ仙人には次のようなエピソードあるそうです。
壷中の酒盛りで、老人は一本の指で酒の入った壺をぶら下げて戻ってきました。
壺には一升ほどが入っているように見えましたが、二人で一日中飲んでもなくならなかったとか。

帰り際に、書院に3枚の護符を発見しました。
関帝廟、水天宮、もう1枚・・・思い出せませんが、3枚目の護符が一番大事かも・・・。

費長房ですが、その後大切な護符をなくし、亡霊どもにとり殺されてしまったそうです。

                        
                                十分杯(じゅうぶんはい)の構造
                
つぼ仙人のお話に因む道具組は楽しく、奥深く、想像力をいろいろかきたててくれました。
きっと水交会の皆様も十分に楽しまれたのではないでしょうか。
Yさん、今年も楽しい茶席をありがとう!