暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

新・釜師長野家の初釜 in 2016・・・(2)

2016年01月21日 | 茶事・茶会(2015年~他会記録)
                      
                               霜柱
(つづき)
懐石が出されたのですが、垂涎の燗鍋が次々現われ、
利き酒みたいに多銘柄の酒(富山の○○など)がどんどん出されました。
山口の獺祭(だっさい)のスパークリンクだけ覚えています・・・。
酒が飲めない正客に代り次客T氏がご亭主の相手をしてくださり助かりました(アリガトウ・・!)。
父上の長野垤志氏と母上様もお出まし下さり、一家総出の温かいおもてなしに感謝です。

次々と供される懐石に舌鼓を打ち、賑やかにお話が飛び交いました。
伺っているだけで五感が心地好い刺激を受け、眠っていた脳が活性化されていきます。
釜、陶芸、絵画、仏教、こだわりの茶室や茶の湯など芸術的な話が多かったのですが、
中でも昨年MOA美術館賞を受賞したという長野新氏制作の「岳(がく)」を拝見したい! と思いました。
・・・すると、次客T氏がスマホでその写真を見せてくださいました。
「岳」は五角形の肩衝釜、胴に杣道のような立体的な文様(?)があり、山水の趣を感じる釜です。
制作中の苦労話(?)や歓びを伺って、ますます応援したくなりました。

                      

最後に濃茶のことを書いておきます。
ご亭主の濃茶点前が始まり、垂涎のステキな仕覆が脱がされると、細長く斬新な茶入が現われ、黒楽茶碗へ濃茶が掬い入れられました。
次に熱い湯が杓一杯注がれました。
柄杓を釜に戻し・・・・ここで、茶碗を見つめたままご亭主がびくっともしません。

・・・私には茶碗の中で抹茶と湯が何やら密談を交わしているように思われたり・・・
でも半分は、「先ほどのお酒が過ぎて何処ぞ悪いのかしら?」と心配したり・・・。
すると、大向こうの先輩S氏から
「大丈夫か~ぁ」と声が掛かりました。

さらにしばらく間を置いてからご亭主がサラサラと練り始めます。
「濃茶を玉にならないように練る方法をいろいろ研究した結果、濃茶の粒子と湯が混ざり合う時間が必要なことに気が付いた」そうです。
これは釜づくりの中で型を作る時、水に石灰を入れてから時間を置き、それから練るとうまくいくことから思いついたとか。

こうして試行錯誤、創意工夫して極めた方法で練って下さった濃茶、
・・・馥郁と、翠美しく、なめらかで、ゆっくり味わいました。
二碗目は赤楽茶碗、手に取ると黒楽と対照的に驚くほど軽く、やさしさのあふれる茶碗でした。
濃茶は宇治・隅興(すみよ)商店の「洛の露(みやこのつゆ)」。

                      
                        糸目団扇桐文車軸釜(長野新氏造、むらさき茶会にて

何とも言えない幸せな気持ちに満たされた濃茶のこと、
新氏から初めて伺った糸目団扇桐文車軸釜の制作苦労話のこと、
素敵で個性的なご同席の皆様のこと・・・・忘れられない初釜になりました。
ありがとうございました!

17日の夜半から降り出した雨が雪になり、18日は雪、雪・・・雪景色でした。 


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