暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

智称尼さまのお伴で

2013年10月02日 | 京暮らし 日常編
                     萩の花が盛りの頃に

智称尼(仮称)さまは近所の寺の前住職です。
御歳九十を過ぎていますが、驚くほどお元気な、きれいな方で、
「その昔、蓮月尼もかくやありなむ・・・」と秘かに思っています。

或る朝、智称尼さまが我が家のチャイムを鳴らしました。
「今日よかったら、私と昼食をご一緒していただけませんか?」

聞けば、ご友人が昼食に招待してくれたそうですが、
体調がすぐれず無理なので、どなたか誘って行ってくださいとのこと。
突然のお誘いでしたが、喜んでお供しました。

              
                    立派な知恩院三門(国宝)
              
              
                    美しい「華頂山」の扁額と垂木 

予約された食事処は、知恩院・和順会館の「花水庵」、
知恩院の三門前なのですが、初めて入りました。
すぐに料理長が挨拶に来られて
「・・・Kさまから智称尼さまのお口にあった、元気が出るものを
 お出しするように言いつかっております・・・」

89歳で亡くなった母は晩年歯が悪く(合わず)、食も細くなり、
食べれるものがどんどん少なくなったことを思い出し、
どんな料理を出してくださるのかしら? 
智称尼さまは食べれるのかしら? と心配でした。

最初に刺身盛り合わせと土瓶蒸しが運び出されました。
こんもりとした氷の山に、大トロと鯛が上品に盛られています。

              

舌の上でとろけるような大トロに感激し、鯛のぷりぷりした食感を
楽しみながら頂きました。
土瓶蒸しは、鱧、松茸、三つ葉が入り、スダチが添えられています。
今は土瓶がないけれど、いずれ作ってみたいと思いました。
ゆっくり愉しくお話しながら頂いたので
「食べれるかしら?」という心配は杞憂でした。

次に小鉢が12皿も乗っている膳がだされ、びっくりです。
一皿ずつ、食材や調理法が違う京懐石で、どれも美味しく、柔らかく、
すべて智称尼さまに合わせて吟味されていることに感心しました。
お客さまに合わせる・・・おもてなしの真髄を改めて教わった気がします。
そして、懐石料理のヒントと刺激をたくさん頂戴しました。

              

続いて、定番のちりめんじゃこが乗ったご飯と赤だし、
最後のデザートは夕張メロンでした。
智称尼さまも私も完食し、感謝を込めて合掌しました。

「おなかがいっぱいになったので、歩いて帰りたいけれど、
 大丈夫ですか?」

もちろん喜んで!
知恩院から蓮月茶屋(豆腐料理)の前を通り、
青蓮院の大クスノキを見上げながら、平安神宮へ抜けて、
ぶらぶら骨董の店を覗いたりしながら帰宅しました。

              
                青々と気持ちの良い、青蓮院の大クスノキ

とても幸せで充実したひと時でした。
智称尼さまに感謝です。合掌。