暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

宗偏流の茶会

2013年04月01日 | 献茶式&茶会  京都編
早いもので京都へ家うつりしてから1年が経ちました。

まだ右も左もわからない昨年3月のことです。
春分の日にステキな出会いがありました。

吉田山山頂にあるカフェ「茂庵」で、開店を待っている時のことです。
一人の女性に声を掛けました。
「あの~京都へ引っ越してきたばかりで、茂庵へ初めて来ました。
 よろしかったらランチをご一緒にいかがですか?」

今でも何故声を掛けたのか、不思議なのですが、
「京都で一番最初のお友達」TYさんとのご縁の始まりで、
京都に不慣れな私のために神様が使わしてくださった方・・と思っています。

TYさんは生まれも育ちも生粋の京女、京都の習俗を全くわかっていない東女に
はんなりと、されど、きっちりといろいろなことを教えてくださいました。
今でも困ると、ついSOSして甘えています。

             

黎明教会資料研修館(左京区吉田神楽岡町)に光悦、光琳、乾山などの優品が
展示公開(入場無料)されていることを教えてくださったのもTYさんでした。
1年経った春分の日にTYさんをお誘いして黎明資料館の茶会へ出かけました。

茶室は入口に腰掛待合があり、すぐに広い立礼席と続き、
その奥に丸窓から正面に「大文字」が見える茶室(六畳)があります。

11時からの第1席は客五名で、席に入ってから席主は宗偏流とわかりました。
初めて体験する宗偏流の茶会でしたが、
数日前に偶然、山田宗偏生誕の地・長徳寺(上京区二本松)の前を通りがかり、
お寺の方に宗偏について伺ったばかりだったので、嬉しいご縁でした。

             

床の歌切は、小野小町の歌で本阿弥光悦筆です。

     思ひつつ寝(ぬ)ればや人の見えつらむ
         夢と知りせばさめざらましを

スズラン水仙が吉野塗の片口に清楚に生けられていました。
大きく美しい貝香合は源氏物語、椿の葉に乗せられた練香は黒方です。
釜は天猫の宝尽し模様、炉縁は内側が栗材、表は真塗です。
どれも垂涎のお道具でした・・でも、一番のごちそうは宗偏流のお点前でした。
お点前さんは若い男性で、まだ習い始めて数カ月だそうですが、
姿勢よく落ち着いた所作で薄茶を丁寧に点ててくださいました。

             

日が経ってしまって、所作の違いは覚えていないのですが、
拝見の時に棗と茶杓が盆に乗って出されました。
宗偏流家元が海外からのお客さまへ拝見の茶杓を畳に出したところ、
茶を掬う茶杓を床に置くとは!・・とクレームがあったそうです。
お家元は「なるほど・・・」と納得され、拝見盆が使われるようになったとか。
お茶を日常的に畳で行っている私たちには当たり前のことでも、
習慣が違えば違和感を感じるだろう・・と納得もし、
すぐに改められた英断にも拍手です。

もう一つ、お点前さんの挨拶が新鮮でした。
最初の「薄茶を一服差し上げます」は同じですが、
「ご退屈さまでございました」というような意味の挨拶で終わったような・・・。
(間違っていたら教え下さいね)

大きな丸窓の茶室で、ここから拝見する大文字の送り火を想像しながら
TYさんと過ごした、ほっこりと温かな茶会でした。