暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

畠山記念館(1) 「からたち」

2011年11月14日 | 美術館・博物館
11月5日、「炉開きと口切の会」を終えた安堵感もあって、
畠山記念館へ向かいました。
「茶人 畠山即翁の美の世界」展が10月8日(土)~12月18日(日)まで開催中です。
お目当ては、伊賀花入「からたち」と「煙寺晩鐘図」(伝 牧谿筆)です。

一人なので、白金台駅から初めて歩くことにしました。
駅員さんに教えられた道を行くと、すぐにわからなくなり、きょろきょろ。
通りすがりの女の方が懇切丁寧に教えてくださって、
欅の巨木が聳える道を行き、階段を下り、稲荷社の前を突っ切って左へ曲がると
道案内を見つけ、畠山記念館へ辿りつきました。
徒歩10分位でしょうか。

                  
                  

2階の展示室へ階段を上っていくと、水音がしました。
しばし立ち止まり、清らかな音を愉しみながらゆっくり上りました。
茶室「省庵」(せいあん)の蹲の筧から流れる水音です。
土曜日の午後にもかかわらず、見学者が少なくラッキーでした。

一番に伊賀花入「からたち」を拝見しました。
大きく欠けた口を持ちながらも堂々とした立ち形、
そっけないような四方片耳とそのバランス。
へらで豪快に六角形に削りとられた、胴からの下部の膨らみと線。

上から下まで釉薬の変化が生み出す色彩の妙、
焼け焦げた肌にはイボのようなひっつきがいっぱいあって、
からたちの棘(とげ)を連想して銘がつけられたとか。
歴戦の古武士の面影がありました。

花を入れるとしたら・・・
「うーん、難しい! 
 上臈ホトトギス一枝、なんてどうかしら?」

即翁は昭和9年に光悦会で初めて席を持った際、
その下見に催した茶事で「からたち」を用い、
花と実をつけた綿一枝を入れたそうです・・・。

                

作品解説(エピソード)を読んだとたん、涙があふれてきました。

「からたち」は、16世紀桃山時代の作ですが、加賀金沢に伝わりました。
金沢は裏千家四代仙叟が前田家茶堂として活躍したところで、昔から茶の湯が盛んでした。
昭和9年、即翁が金沢の道具商梶乙を通じて「からたち」を入手した時、
加賀に伝来された「からたち」を県外へ出すことについて抵抗もあり、
問題になったそうです。
即翁が能登畠山氏の末裔ということで了解を得たとか。

「からたち」が東京へ運ばれる日、別れを惜しむ人たちが大勢金沢駅に集まり、
見送ったそうです。
その知らせを聞いた即翁は、人を集め、全員紋付き袴の正装で上野駅に集まり、
心を尽くして「からたち」を出迎えました。

美術品や茶道具を見て、解説を読んで泣くなんて、自分でもびっくりです・・・。


      (2)へつづく