港区まち創り研究会(まち研)ブログ

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世界の街から33---イギリスのミルトン・キーンズ

2012-01-20 16:42:19 | イギリスの街から
・計画都市ミルトン・キーンズ
 ミルトン・キーンズはロンドンから70kmの距離にあり、計画人口25万人を目指したイギリス最大のニュータウンである。1970年に計画が発表され、着工された。詩人ミルトンと経済学者ケインズの名前を合わせて命名された。その後、人口は順調に定着し、現在およそ20万人の都市に成長している。住宅だけでなく、工場・オフィスも誘致され職住一体型の都市である。筆者がこの街を訪れたのは、およそ10年前である。

・歩車分離の徹底と碁盤目状の道路パターン
 この都市の計画の最大の特徴は、道路の速度により、道路構成を行っていることと歩車分離の徹底である。一方、専用化された道路は、碁盤目状に配置され、大きな交差点はロータリーになっているので準高速道路並みに走行できる。道路の沿道に、街路樹がびっしり配置されあまり景色が見渡せることができない。一方、住宅地内の道路は、車の速度を落とすような設計となっている。確かに、交通渋滞はほとんどなく、歩行者と接触する危険はない。車の利用を前提として、つくられた都市である。バスもあるようだ。

碁盤目状の車専用道路(高速で走れる)

全体都市図(機能が分散配置している)

高速道路(上)と低速道路(下)の分離

センター地区からのびる歩行者路

・低密度都市と農村集落の取り込み
 この計画区域に人口約4万人の農村集落があったが、保存しながら計画の中に取り込んでいる。この点は評価できる。都市全体は27戸/haと低密度である。
 広い公園・緑地もあり、自然豊かである。しかし、実際歩いてみると、農村のような風景でこれが都市だろうかと疑問を持つ。最初に行った住区は、大きな湖があり、湖からたくさんの水鳥が道の上を歩いており、人間は一人も見えなかったのに、ショックを受けた
イギリス人の理想は、農村に住むことという話を聞いたことがある。そんなイギリス人の嗜好が計画都市に現れているのかも知れない。日本人の感覚からすると、あまりにも寂しいという気持ちになる。老夫婦になった時に、どんな生活になるのだろうかとぞっとする。
 実際、自殺者が多いという裏話を聞いたことがある。

水鳥ばかりで人間の姿が見えない

戸建て住宅地はこんな感じ

集合住宅も低層である。当時、1戸300万円位で買えるといっていた

既存の運河を計画に取り込んでいる

緑道だが、寂しい

職場ゾーンのオフィス

・センター地区
 唯一、都市らしいところで、大きなショッピングセンターがあり、人もかなりいたが、にぎわうという感じでもない。シネマコンプレックスの建物もとなりにある。しかし、都市生活を楽しめるという雰囲気はない。

ショッピングセンター

シネマコンプレックス

・まとめ
 イギリスのニュータウンを代表する計画都市として、交通、住宅、自然、景観などよくできた都市と言えるだろう。
 頭で考えた機能的都市として完璧なのかも知れないが、都市の楽しさ、魅力はあまりないと言わざるを得ない。都市全体、寂寥感が漂う。住みたくない都市の一つである。
 建築評論家松葉一清氏もこのミルトン・キーンズを訪れてやはり相当がっかりした様子が著書「失楽園都市」に書かれている。失楽園都市はミルトンの叙事詩「失楽園」にかけている。
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