港区まち創り研究会(まち研)ブログ

港区の情報、まちづくり情報をお伝えします。
海外の街あるきの報告もあります。

世界の街から24 ドイツ ラーデンブルク

2011-10-06 09:47:23 | ドイツの街から

ドイツ-ラーデンベルク 保存を重点にし、中心市街地を再生し甦った街>

マルクト広場周辺の木組みの家

木組みの街並み

木組みの街並み

木組みの街なみ
ドイツ南西部の街、ラーデンブルク(Ladenburg)をご紹介する。
ラーデンブルクは、7世紀ごろから地方の中心地として発展を続けていたが、17世紀なかばの宗教戦争・30年戦争で大きな被害を受け、その後、停滞していた街である。
 1967年頃から保存に重点をおいた旧市街の再開発を始めた。
再開発をするにあたり、次の4つの考え方を定めた。
① 町のスカイラインを維持するために5階以上の建物を禁止する
② 旧市街の再開発は保存を重点とする
③ 商店は中心部の立地を推奨し、周辺部の立地を禁止する
④ 旧市街地の通過交通を排除する
70年代にかけ、マルクト広場周辺の木組みの家31件を修復、改善した。その結果、旧市街地は、美しい木組みの街となり、商店も増え、街の魅力も増した。
一度、郊外にでた住民も戻ってくるようになり、人口の減少をとめることができた。
都市の個性を発揮し、中心市街地を活性化するラーデンブルクの4つの原則は、中心市街地の衰退に悩む日本の地方都市のまちづくりに参考になるのではないだろうか。

美しく再整備

美しく再整備

美しく再整備

つたと木組み

みどりの多い路地

駐車場も緑化
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世界の街から15---ドイツ シュトゥットガルト市に学ぶ風の道計画

2011-08-15 22:16:32 | ドイツの街から
ドイツ シュトゥットガルト市に学ぶ風の道計画

シュトゥットガルトは人口約60万人ドイツ南西部に位置する都市で、ダイムラー、ポルシェ、ボッシュなど世界的企業の本社が立地している。ベンツ博物館やポルシェ博物館がある。
ドイツは、どの都市においても地区詳細計画や土地利用計画など細かく都市計画を定めている。建物の高さはもとより、屋根のかたち、色など周囲の環境と調和するようきめ細かく定めている。
かって、筆者(安藤)がドイツのある市役所の都市計画課を訪問したことがある。短い時間であったが、二つ感心したことがあった。
一つは、様々な大きな計画図を廊下にはりだしており、市民が誰でもいつでも見られるようにしていることである。計画通り、都市計画が進んでいるかどうか、チェックできるのである。日本では、様々な計画が作られているが、市民のほとんどが知っていない。また、見る機会も少ない。
もう一つは、役所の各課は大部屋ではなく、研究室のように独立している。各課の職員は、その部門の専門職となっている。大学の教員であった人や博士号を持った人も珍しくない。日本のように、あちこちの課を移動するのではない。また、ずっと役所に勤めるのではなく、5年とか10年契約である。したがって専門的な事項については、精通しているので、その人に任される権限は大きい。

1 風の道
 シュトゥットガルトの都市計画の大きな特徴は、中心市街地を分断する幅100mの緑地帯がつくられていることである。もともとはベンツやポルシェといった自動車産業の発展により、大気汚染が深刻化したことにより、大気の流れをつくり空気を浄化するために、緑地帯による風の道をつくったのである。この風の道により、都市のヒートアイランド現象を防ぐことができる。港区でも、ぜひ見習いたい計画であり、タウンフォーラムなどで何度か提案しているが、あまり前進していない。
 筆者もこの緑地帯を歩いて見たが、100m幅というのは広すぎる位なオープンで快適な空間になっている。イベントの展示空間にも利用されている。

風の道計画図 緑が風の道

風の道 中心市街地から入口部分

風の道 広いオープンスペース

風の道

2 都市気候の制御と自然による環境緩和機能
 シュトゥットガルト市は、都市の中で多くの地点で温度、湿度、風の強さ、向き、大気の汚染状況など継続的に詳細に調査している。開発等の要因による都市の変化に対し、都市気候がどのように変化するかを把握し、それを地区計画に反映している。市街地の建築物の高さは5階建を上限とし、隣棟間隔は3m以上とされている。
その他、伏流水を用いて地表を冷やすことや屋上緑化の推進、都市全体の緑のネットワークの形成など、自然による環境緩和を図ろうとしている。
 これらのことは港区でも、十分実現可能である。ぜひ、ヒートアイランド現象のない港区になってほしいと願う。

中心地区のモール

都市気候図
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世界の街から2--環境共生都市エアランゲン

2011-06-29 08:24:03 | ドイツの街から
ドイツバイエルン州、環境共生都市、自転車都市エアランゲンを訪れたことがある。
エアランゲンのまちづくりの基本理念は、アメリカの大学で都市計画を学んだ市長のハ-ルバ-ク博士とランドスケ-プデザイナ-のグレ-ベ博士によって示され、住民と行政が一体となって着実に実現したまちである。基本理念とは、以下のようなものである。
・豊かな自然との共存。
・人間優先のまちづくり。
・廃棄物のリサイクルの推進。
・水と土の保護。
・省エネルギ-と大気の浄化。
 このような理念は、日本のまちづくりでもよく見られる標語である。しかし、エアランゲンは計画に基づきそれを実現し、訪れた人は、この理念の意味を必ず実感することができるまちとなっている。
 エアランゲンのまちづくりについては、「みんなでまちを造った」(グレ-ベ著、中村静夫訳、集文社刊)に詳しく書かれている。
以下は、私が都市の中を歩き、自転車で走り、環境共生都市のまちづくりを実感した記録である。



■人間を尊重した中心市街地


▲市街地中心にある宮殿庭園
 車で都市の中心部にあるホテルについた。ホテルがまず、人なつこい、暖かみのある印象を受ける。その理由はすぐにわかる。都市の中心部にあるにもかかわらず、ホテルの内外に緑があふれていることや鳥のさえずりが聞こえてくることである。
 ホテルに荷物をおいて、早速歩き始める。ホテルの近くに「みんなでまちを造った」の本の一ペ-ジに示された絵と同じ看板が掲げられており、絵の通りのまちとなっている。計画通りきちんと実現したことの記録を残している。
 市の中心である鉄道の駅の方にいくことにした。
 駅の周辺は、賑やかな商店街になっている。一部の区間は歩行者、自転車だけになっており、大勢の人が歩いている。商店街に接して、大学があり、大学と一体となった宮殿庭園という、広い芝生の公園がある。町の中心部にある公園は手入れ行き届いてとても美しい。公園がまちのシンボルとなっているように見える。
 市街地の中心部でも、緑と公園があふれ、商業地は賑わいがあり、大学の存在がまちの風格を示し、人の生活感があふれている。快適で、安全で、ふれあいのあるまさに、人間を尊重した中心市街地となっている。


■自転車都市


▲歩行者と自転車のレーンが決められている

▲市民の多くが自転車を利用している
 昨年、訪れたコペンハ-ゲンもそうであったが、ヨ-ロッパの都市では、自転車が多く使われている。
 エアランゲンは都市の交通手段として、ドイツでも自転車が多く利用されている都市の一つにあげられている。エアランゲンは、おおむね平坦な地形となっている。
 都市のほとんどの場所にいけるように、自転車専用道路、自転車専用ラインが整備されている。
 早速、全員、市が貸し出している自転車に乗ることにした。自転車は、係員がていねいに一台、一台チェックして貸し出してくれる。乗る際、若干の使用料と、貸し出す際の担保として、保証金を預ける。ただ、少し困ることは私のように、足の短い日本人にとってサドルが高すぎることである。乗り降りが大変なことを除けば、快適なサイクリングを楽しむことができる。
 幹線道路であれば、道の両側に歩道と並んで自転車専用レ-ンがあり、走行方向も決められている。自転車のマナ-も決められており、自転車レ-ンの表示のない歩道は乗って走ってはいけないようである。最初はわからなくておばあさんから注意された。
 自転車を多く使うためか、道路を走っている車はあまり多くないように思える。
中心市街地周辺部に駐車場があるため、駐車している車の姿がない。自転車と歩行者が主役で自動車が脇役になっているまちを目のあたりにした。
 市街地がコンパクトになっているため、主要な市街地の端から端まで自転車で走って、20分もかからない。
 自転車道さえ整備されれば、都市の交通手段として、自転車がいかに優れているかが実感できる。

■みどりあふれる都市

▲ゆったりとした道路には高木の街路樹が整備されている
 自転車を走っていて、町中緑がとても目につく。
 大きな街路沿って、帯状に公園があったり、街路樹や集合住宅の緑地が連続しており、リゾ-ト都市のようなすばらしい景観を楽しむことができる。
 市街地の中でこんなに緑が多いのは、グレ-ベ博士の計画の素晴らしさもあるが、それを実現するためには、住民の協力も相当あるのではないかと想像される。また、市街地はとても清潔で、ゴミなどが見あたらない。ドイツの大都市よりも、町全体の質の高さを感じる。
 今回、初めて、クラインガルテン(市民農園)を見学する機会を得たが、クラインガルテンも、庭や生け垣に緑と花があふれ、想像以上に美しかった。


▲市街地中心にある公園

▲クラインガルテン


■自然と共存する都市

 エアランゲンの土地利用計画図(Fプラン)を見るとわかるが、公園、農地、樹林地いわゆる自然系の土地利用のまとまりを大事にしている。樹林地であれば、数百haのまとまりがある。川沿いも自然系の土地利用でガ-ドされており、鳥、虫などの動物の生態に配慮されている。
 都市は、南北・東西の帯状の緑の軸により、きちんと分断されている。また、一部の地域は自然のそのままの状態で保全する(ビオト-プ)ために、人間も近づけないようになっている。
 住民の自然に対する意識が高く、自然系のまとまりを分断する道路の計画があったが、住民の反対で建設されていない。したがって、幹線道路が樹林地の前で、突然止まっている。日本であれば、農地や樹林地を通る道路はすぐにできてしまう。
 極端な言い方をすれば、エアランゲンのまちづくりの考え方はまず、現在ある自然の存続を第一義に考え、その中での人間の生活のあり方を考えることのように思えた。


▲小川も自然状態に近い

▲住民運動によって行き止まりとなった道路


■おわりに
 私はエアランゲンを見て、実際こんな都市が実現しているのに、驚いた。日本のまちづくりでは、基本理念が忠実に実現していかないことがほとんどなので。理念は、簡潔でよい。忠実に頑固に実現していくことが大切なのだと実感した。


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