港区まち創り研究会(まち研)ブログ

港区まち創り研究会の活動の状況やまちづくりについての様々な情報をお伝えします。
海外の街あるきの報告もあります。

世界の街から19---イギリスのガーデンシティ・レッチワース

2011-08-30 20:30:19 | イギリスの街から
世界の街から19――イギリスのガーデンシティ・レッチワース

レッチワース 航空写真

 イギリスのエベネザー・ハワードが提唱したガーデンシティ構想を初めて実現した都市がレッチワースである。ハワードは大都市郊外に人口3~5万人程度、公園や森、農地が多くある住宅地を考えた。「田園と都市の結婚」を目指し、地域コミュニティの形成を理想とした。ハワードは最初は夢想家として、社会から評価されていなかったが、熱意と努力により、苦労の末1903年最初のガーデンシティ・レッチワースを着工することができた。

設計はレイモンド・アンウィンという建築家が行っている。ガーデンシティの建設・運営は土地開発会社が一元的に行い、住民や企業に賃貸している。住民自身が公共施設の整備を進めた。

アンウィンの最初の計画図

現在の土地利用計画図 黄は商業 青は工業 緑は公園
 このガーデンシティの考え方は、世界中に大きな影響を与えた。ドイツの多くの住宅知開発、日本では、小林一三の阪急電車沿線の住宅地開発、渋沢栄一の田園調布の開発、イギリスの戦後のニュータウン計画の基本となっている。


● ガーデンシティ・レッチワースの印象
 私がレッチワースを訪れたのは10年以上も前で、滞在も1日だけだったので、その時印象に残ったことをお伝えしたい。
  ・ 100年以上も経た街であるが、まだ活気があり、暖かみと、親しみやすさを感じた。
    しっかりしたコミュニティが根付いていることがうかがえた。
・ 駅舎は小さくてかわらしい。

駅周辺
・ 大きな建物はなく、商店街も3階建てでデザインも統一されている






・ 商店街は人通りも多く、にぎわいがあった
・ 街全体に緑が多く、歩行者が楽しんで歩ける歩行者道と広場を都市の軸線にしている。

歩行者道の軸線

歩行者道の軸線
・ 住宅地の前庭が広く、住民が庭を熱心に手入れしている。前庭を通る人とコミュニケーションを図っているようだ。私が通りを通ると、声をかけてきて、どこから来たのか、私の親戚の一人が日本に行ったことがある、などと話しかけてきた。

・ 住宅地の小さなコミュニティで使う緑のコモンスペースが街区の中にある。

街区の中の緑のコモンスペース
・ 駅に近い公園は広く、いろいろなスポーツを楽しむことができる。
・ 職の場として、工業団地があり、まだ活動しているようだった。

● ガーデンシティ・レッチワースの特質
・ 街のにぎわい、職場、緑、公園、田園、住宅地がうまくバランスしている。ハワードの考えた都市の理想が実現されている。
・ 土地開発会社が都市全体を所有し、管理しているので、公共的なスペース、共用部分の管理がしっかりしているので、財産価値も高い。
・ そのため、地域の共用空間が多く存在し、利用や管理も住民が協働して行っているため、コミュニティがしっかり根付いている。

住宅地景観

● ガーデンシティ乗っ取り事件
1950年代に土地投機会社が乗っ取りを企てる事件があった。1960年代には、会社の経営がホテルヨーク(株)に移る事態にまで発展した。公共的資産が投機会社に買収されると、ガーデンシティ全体の環境の悪化を招く恐れがあると、レッチワース市議会と住民が警戒しはじめた。
レッチワース市議会は条例をつくり、公社を設立し、公社に土地の所有権を与え、公共的な資産についての管理も公社が行うことになった。
こんなことが起きたのは、ガーデンシティがある程度成功を収め、資産価値が向上したためと考えられる。

● ニューガーデンシティ舞多聞
最近、神戸市垂水区でハワードの考え方に基づいたガーデンシティ舞多聞「みついけプロジェクト」が完成した。プロジェクトの実行体制は都市再生機構、神戸芸術工科大学、住む予定の住民などで神戸芸術工科大学学長・建築家の齊木崇人氏が全体をまとめている。定期借地権方式で、それぞれの敷地も広く、ガーデンシティにふさわしい街並みになっているようだ。このプロジェクトも視察した後、報告したい。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 世界の街から18---アブダ... | トップ | 防災の日 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

イギリスの街から」カテゴリの最新記事