港区まち創り研究会(まち研)ブログ

港区まち創り研究会の活動の状況やまちづくりについての様々な情報をお伝えします。
海外の街あるきの報告もあります。

世界の街から79---イタリア ヴェローナ

2013-01-05 09:35:23 | イタリアの街から
10年前に訪れた街だが、歩いていてあちこちに歴史の重みを感じる街である。
 ヴェローナは北イタリアの人口25万人の都市でローマ時代紀元前3世紀から都市ができている。12世紀から16世紀の中世時代、最も栄えた。その時代の街並みが残っているので、世界遺産に指定されている。シェイクスピアの戯曲ロミオとジュリエットの舞台になった都市として有名である。アリーナ(円形劇場)などローマ時代の古代遺跡も残されている。
 ガイドブックを旅の途中で置き忘れたため、甚だ不安な街歩きであったが何とか主要な観光ポイントは回ったように思う。
サン・ゼーノ・マッジョーレ教会
 ヴェローナで最も古い教会である。9世紀に建造されたが、12世紀に地震で壊れ、13世紀に再建された。ロマネスク様式で外観は質素な普通の教会であるが、裏にあるキオストロがとてもよい。中庭を挟んで回廊がめぐる構成がイスラム建築にも共通する。
カステルヴェキオとスカリジェロ橋
 サン・ゼーノ・マッジョーレ教会を出てアディジェ川沿いを歩く。マロニエの木に花が咲いて、遠くにスカリジェロ橋を望む素晴らしい散歩道であった。
 スカリジェロ橋は、イタリアでも1,2を争う美しい橋を言われる。レンガのアーチが連続していて優雅である。カステルヴェキオは、スカラ家の城でこの橋のふもとにある。
ともに、14世紀に建設されている。川沿い散歩道からこの城と橋を望む景観が私はヴェローナで最も好きな場所である。
 シニョーレ広場、エルベ広場、ランベルティの塔
 シニョーレ広場、エルベ広場、ランベルティの塔は街の中心地区にある。これはローマ時代から市場があり、街の中心であった。中世になってまわりの建物は再建されたがやはり街の中心となっている。古代都市の構造が中世を経て現代まで受け継がれている。
 シニョーレ広場には、中世の詩人ダンテの肖像がある。広場を取り囲む建物の一つがランベルティの塔でロマネスク様式で建てられており、高さが84mある。
 ジュリエッタの館
 ロミオとジュリエットの物語は中世の時代に、ヴェローナで大きな二つの領主が争っていたことをモデルに創られた創作である。ジュリエッタの館は、残されている中世の領主の家をあてはめたものである。それらしいバルコニーとジュリエッタの像がヴェローナの人気スポットとなっている。
 アリーナ
 ローマ時代の円形劇場が残されている。夏には、この円形劇場で25000人を収容し、オペラが上演される。
 まさに、ヴェローナは古代都市、中世都市、現代都市が時代を超えてうまく同居している不思議な街である。

サン・ゼーノ・マッジョーレ教会の質素な外観

サン・ゼーノ・マッジョーレ教会のキオストロ(回廊)と中庭

アディジェ川のマロニエの木と花

スカリジェロ橋を望む川沿いの遊歩道

スカリジェロ橋

カステルヴェキオ

シニョーレ広場とダンテの像

ランベルティの塔

シニョーレ広場と中世の建物

ジュリエッタの館とバルコニー

ジュリエッタの像

ローマ時代のアリーナ

歴史を感じる町並み

人が集まっている広場

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世界の街から21--イタリア サンジミニャーノ

2011-09-13 08:00:43 | イタリアの街から

建物の群として美しい塔の街 サンジミニャーノ
空から見たサンジミニャーノ

 イタリアのトスカーナ地方の丘にある小さな街サンジミニャーノは塔の街と呼ばれ、塔が15本もある。中世の街並みをそのまま残している。13世紀、法皇派と皇帝派に分かれて争っている時代に、塔が両派の権威の象徴として、競い合って建てられた。一時は72本もあった時もあったようだ。現代においても、企業や個人のステイタスとして、超高層ビルが建てられているのと似ている。
 何はともあれ、中世の特異な街の形態がそのまま残されているのは素晴らしい。世界遺産にも指定されている。
 塔は細く、中はがらんどうでまわり階段があるだけであるが、道や広場から見る塔の景観は美しい。この街の都市景観としての魅力は、高い塔と広場と道との絶妙なバランスであろう。単に平面的な街より、数段魅力を増している。また、塔が大きすぎると塔の威圧感で広場や道が生きてこない。風化された塔や建物のテクスチャーが街の一体感を高めている。中庭でハープを奏でる人がいる。観光用に雇われているようだが、街にぴったりである。
 都市景観は、個々の建物がよくてもばらばらでは絶対によくならない。群として建物の構成の見事さがこのサンジミニャーノにある。

建物と塔の一体感

道から見え隠れする塔

道から見える塔

道と塔

ドーモの前の広場

広場と塔

広場と塔

道のテクスチャー

中庭と塔

中庭でハープを奏でる人

サンジミニャーノ遠景
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世界の街から17----イタリア ヴェネツィア 車から開放された水の都

2011-08-24 15:05:15 | イタリアの街から

世界の街から17----イタリア ヴェネツィア 車から開放された水の都

ヴェローナから鉄道に乗り、長い橋を渡るとヴェネツィアの駅に着く。大きな船に乗り、運河をしばらく走りリアルト橋で降りる。橋の近くの古い小さな宿に泊まる。
3日間滞在し、歩いた結果、ヴェネツィアをまちづくりの観点から解析してみる。


ヴェネツィアの航空写真

1 水の都

 ちょっと歩くと、運河や海の水を見ることができる。まさに、水の都で、船やゴンドラ橋などの景色がエキゾチックで心地よい。決してきれいな水ではないが、密度が高い都市であることを感じさせない。

大運河

ゴンドラ

狭い運河

運河と町並み

運河とトンネル
2 車から開放された街
 舟が輸送手段となっているため、街全体に車は一台もない。自転車も禁止されている。すべての道は歩く人のために開放されている。こんなに安心して道を歩ける街は他にない。歩いていても、何かうきうきしてくる。狭い路地も全く気にならない。
車から開放されると、こんな楽しい街になるかを改めて実感する。

路地空間

楽しい路地

店と道が一体化している

店と道の一体化

3 迷路の街
 車が走らないので、まっすぐな道はほとんどない。歩いていて先が見通せないので、次にどんなシーンになるのかわからない。不安と期待でわくわくする。しかし、歩いていると方向感覚がなくなり、自分がどのあたりを歩いているかわからなくなる。敵から攻められた時の防御として、わざわざ迷路空間をつくっているのだろう。

4 人にすぐ会える安全な街

 大勢の人が歩いていて、すぐに人に会えるので、迷路的な都市であるが安全である。

5 建物のデザインの統一と多様性
 グーグルアースで街の上から散歩すると、はっきりわかる。ほとんどの建物は、赤い勾配のある屋根、白い壁かベージュ色の壁、高さは3階から4階に見事に統一されている。
逆に、このデザインでない建物は、教会とか公共的な建造物で、遠くからでもすぐ目立つ。
一方、運河や道から見ると建物の様式は、バロック、ゴシック、ロマネスク、ルネッサンスなどが多様な様式が混在し、ディテールは、変化に富み美しいものが多い。

デザインの統一性 グーグルアースより

建物のディテールに変化があり美しい

建物の外観の変化

建物の外観の変化

6 街全体の建ぺい率が高い

 道の幅員が狭いため、建物がこれほど密集している都市はない。広いオープンスペースもなく、街全体での建ぺい率が最も高い都市ではないだろうか。歩いていても、密集して不快な感じはない。建物の高さが3~4階に抑えられているからであろう。

7 広場と道

 広場の大きさも大小様々である。最も、大きな広場はサンマルコ広場でヴェネチュアの象徴となっている。どの広場も役割が決まっているのであろう。使いやすそうに見える。

 道も路地が多いが比較的広いメインの道があり、大勢の人が歩いている。

サンマルコ広場周辺の航空写真

サンマルコ広場

広場

広場

サンマルコ広場での演奏会

8 緑が少ない
 街全体に緑は少ない。水の街だから緑の必要性は少ないのかもしれない。

 9 バリアフリーではない
全体は平坦で歩きやすいが、橋などに結構階段があり、建物にもエレベータはほとんどない。
歴史的建造物を残しているので、やむをえないが、バリアフリーではない。

おわりに
もし、私が未来都市を描くとすれば、このヴェネツィアのような街が基本になるだろう。 
コンパクトな街で車を使わず、歩いてどこにも行ける。路地や広場、水空間があちこちある。まっすぐな道はなくやや迷路的な空間であるが、すぐに人に会えるので安全。さらにヴェネツィアにはない緑や花にあふれ、公共的なエスカレータ、エレベータがあるバリアフリーな街であればこんな快適な都市はないだろう。
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世界の街から16---イタリア シエーナ 広場と路地の街

2011-08-20 12:34:30 | イタリアの街から
世界の街から16   イタリア シエーナ  広場と路地の街

シエーナ 迷路のような路地

カンポ広場と周辺の建築物

 イタリアの都市には必ず広場があり、イタリア人は都市の生活空間として上手に使っている。夕方の広場は人で一杯になっていることもある。そこで、人に会い話をしたり、なんとなく集まったり、ぼんやりしたり、その人なりに広場を楽しんでいる。広場がギリシャ・ローマ時代から政治の討論の場、社交の場、商取引の場として使われていた伝統があるのだろう。
 日本の都市空間では広場は少ない。広場があってもうまく使われていないのがほとんどである。広場を通り過ぎていく人が多く、そこに留まる人はあまりいない。市民社会としての歴史が浅く、生活空間として根付いていないためであろう。
フィレンチェからレンタカーを借りてシエーナを訪れた。シエーナは、中世にできた都市で、イタリアでも最も美しい広場と言われるカンポ広場がある。シエーナの街は曲がりくねった路地が多く、迷路のようである。カンポ広場は丘の上にある。カンポ広場のマンジャの塔は遠くからでも見えるが、広場はほとんど見えない。

遠くから見る広場周辺

路地を通り抜けると突然、広場が現れるしかけとなっている。上から見ると、このカンポ広場を中心に街がつくられていることがわかる。


路地を抜けると広場になる
 カンポ広場は、扇が開いたような形で扇の要になる部分が最も低く、そこから緩やかな斜面になっている。要になる部分で演説とかパフォーマンスが行われる想定になっているのだろう。広場に面してカフェがあり、外に座っていつまでも広場を見ることができる。

カンポ広場

カンポ広場

カンポ広場

広場に面したカフェ
美しい広場とは何かというと、広場の周りの建物との一体感、調和がとれているかが一番のポイントだろう。広すぎても、狭すぎてもいけない。マンジャの塔を中心に広場を取り囲む建築群のまとまりが素晴らしい。建物のバルコニーから広場を見渡せるようにできている。カンポ広場では毎年、裸馬の競馬が行われるが、バルコニーは、この競馬を見る人で一杯になるようだ。
広場から別の路地を抜けると、シエーナの大聖堂(ドーモ)が現れる。大聖堂は大きくはないが、壮麗で気品があり美しい。ドーモの前にも広場があり、人が集まっている。

壮麗なドーモ

路地空間とドーモ

路地区間

路地空間
港区にも、誰でも使える美しい広場があるといいなあと思う。いろいろなイベント、市民集会が行われ、あるいは誰でも傍聴できる青空区議会も開催されたら素晴らしいのではないだろうか。
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