今日は、この街にいます。

昨日の街は、懐かしい記憶になった。そして・・

752 ウィーン④【オーストリア】

2017-01-18 23:57:35 | 海外
「世界の住みよい街ランキング」といった統計では、ウィーンはいつもトップクラスに選ばれている。インフラ、文化、医療など、都市機能が充実しているのだろう。そのうえオーストリアは、一人当たりのGDPが世界10位あたりに位置する豊かな国だ。人々はその地理的特異性がもたらした波乱の歴史を乗り越え、豊かで美しい街を創り上げた。今は冬枯れて寒々としているものの、街路樹が芽吹く季節になれば、どんなに美しいことか。



オーストリアの面積は北海道ほどで人口は870万人。最大の都市・ウィーンでも、人口は180万人程度に過ぎない。西部はアルプスの峰々が連なるから、平坦部は国土の40%もない。ヨーロッパ大陸の中央に位置する古くからの交通の要地であり、政治的に難しい地勢にある。ゲルマン民族が大半を占め、言語はドイツ語だが「ドイツ」ではない。そこに多民族国家の難しさがある。島国・日本とは随分異なる国情だが、交流は長くて深い。



徴兵制を敷き、陸軍と空軍を持つが海軍はない。永世中立国ながらEUに加盟していることは隣国スイスと異なる。日本外務省の基礎データによると、主要産業は機械、金属加工、観光とあり、スイスのように金融は含まれない。歴史や自然遺産を大切にする、堅実な国情が窺える。ウィーンは、国連機関を数多く受け入れている国際都市だ。こうしたデータを頭に入れて、トラムで乗り合わせた赤ちゃん連れの日本人女性に話を聞いた。



「住みよい街だと聞きますが?」「暮らし始めてまだ半年ですが、交通網が発達していて、確かに暮らしやすいですね」「物価はいかがですか?」「ウィーンは郊外に出るとすぐ農地が広がって、市場で新鮮な野菜や肉が手に入ります。物価は特に高いとは感じません」「EUで懸案になっている難民問題はいかがですか?」「オーストリアは移民を多く受け入れている国でしたが、最近は大統領選の争点にもなって、厳しくなっているようです」



1週間前、ベルリンのクリスマスマーケットにトラックが突入、多くの死傷者が出るテロ事件が発生した。私たちが2014年に訪れた際、何度も散歩したカイザー・ヴィルヘルム記念教会の広場でのことだ。在ウィーン大使館からひっきりなしに「人混みは避けよ」とメールが入るようになったけれど、人混みを避けていたら観光にならない。ウィーン市民も状況は承知して緊張しているのだろうが、マーケットはどこも大賑わいである。



ウィーンで確認したのは、働く人々の真面目さである。日本人には当たり前のことだが、イタリアやスペイで辟易させられた店員同士のおしゃべりや、美術館監視員のルーズな態度とは異なり、誰もが節度を持って仕事に取り組んでいる。パリのように舗道で犬のフンを踏む恐れもない。これがラテンとゲルマンの違いかと驚いたが、ドイツよりも言葉遣いや応対が柔らかいように感じる。ウィーンは「住みよい街」に選ばれるわけである。



旧市街の外側に、巨大な露店市場ナッシュマルクトがある。市民はここで新鮮な食料を調達するのだろう、多種多様な店が並んでいる。たまたま土曜日だったので、蚤の市も賑わっている。煌びやかな絵画や、貴族趣味のオペラをしばし忘れた、飾り気のないウィーンがある。近くのマリアヒルファー通りは、観光客で賑わうブランド街とは異質な、気さくなショップ街だ。ウィーンっ子になった気分で、買い物を楽しんだ。(2016.12.21-25)











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