今日は、この街にいます。

昨日の街は、懐かしい記憶になった。そして・・

237 唐津(佐賀県)・・・松原を潮風渡り「くんち」かな

2009-08-27 10:48:05 | 佐賀・長崎

唐津は二度目だが、宿泊するのは初めてである。ゆっくり滞在して再認識したことは、「唐津はいい街だ」という、実に割り切りのいい感想である。私にとっては余りに遠い街で、土地の気風や住民の気質、細かい行政サービスの善し悪しについてまで判断できるはずがないけれど、例えば「リタイア後の人生をのんびり送りたい」という向きにとって、これほど条件が適っている街は珍しいのではないか。自然災害もほとんどないのだという。

改めて驚かされたことは、福岡空港から地下鉄に乗ると、福岡の中心部を通過して1時間程度で直結するという唐津の交通立地だ。高速バス網も便利なようで、唐津は佐賀県ながら、市民にとって福岡市が生活圏だ。自然が豊かに残る環境に生活基盤を置いて、空港を含めた大都市機能をこれほど便利に享受できる街は珍しい。

海に出てみた。唐津湾は東西に広く穿たれていて、点在する島々が玄界灘のうねりを抑え、大きいけれど穏やかな海なのだという。折りしもレーザーラジアルクラスのヨット世界選手権が開催されていた。人口が13万人程度の、財政的にはごくありきたりの地方都市が世界大会を誘致するというのだから、唐津市民は度胸がいい。市民ボランティアが大活躍して、ヨット適地の唐津の海を売り出しているようだった。

湾から眺めて、唐津城が舞鶴城と呼ばれるゆえんが理解できた。湾中央に突き出た丘に天守がそびえ、その左右(東西)に虹ノ松原と西の浜が長い緑のラインを延ばしている。まるで鶴が両翼を広げ、今にも海に向かって羽ばたこうとしているかのようだ。よくもまあ、こんな美しい造形が生まれたものだと感嘆させられた。

駅前から続く中心商店街は、どこの地方都市とも共通の寂れが滲んでいて、歩いていて痛々しくなる。しかしその日がたまたま土曜日だったおかげで、夏の4週開かれる「土曜夜市」に巻き込まれた。夕刻になると若者たちが現れて、手際良く通りに屋台をこしらえていく。広場にはステージがしつらえられ、椅子もたくさん用意された。さっきまで閑散としていた通りに人が溢れ出し、空手クラブの子どもたちが集団演技を披露し始めた。

この夜市、すでに37回目だというから、「まつらの里の夕涼み」として市民に溶け込んでいるようだ。その日に行き会った私は、かつて唐津が石炭の積出港として沸きにわいていたころの、街の賑わいを垣間見たのかもしれない。そしてこのあたりは、11月の「唐津くんち」の巡幸コースである。3日間に50万人の人出があるというから、市民はその一瞬に一年を懸けているのだろう。


駅近くの寿司屋で土地の肴を頼んだ。焙ったフグは美味で、エチゼンクラゲの味噌和えはいい歯応えだった。寿司屋のつまみにクジラが出たのは驚きだった。イカで有名な呼子漁港が近い唐津は、海の幸には事欠かないのだろう。寿司店は「やすけ」といった。

「そこの寿司屋さんで出たお銚子がとてもいい感じだったのだけれど、どうも思うようなものがない」と陶器店で正直に言うと、女将らしきおばさんが「それは使い込んでいるからですよ。唐津焼は使って行くと味が出て来るのです」と、唐津弁で断定した。そして使用中の湯飲みを持ってきて、新品と比べて見せてくれた。確かにその通りだった。(2009.8.1-3)
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