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861 霧島(鹿児島県)霧島はアートの森と天孫降臨

2019-02-16 11:17:33 | 熊本・鹿児島
九州は巨大な火山が点在する島で、そのいずれもが響きのいい呼称を与えられている。雲仙、阿蘇、霧島などだ。なかでも「霧島」は、峰々が雲海を突き抜け、あたかも霧に浮かぶ島々のような雄大な風景を連想させる。天孫降臨の舞台は諸説あるようだが、霧島の峰のひとつ高千穂峰は確かにふさわしいと、山麓を巡りながら感じ入った。日本神話の作者は、この峰の神々しい姿を見知って物語を編んだに違いない、と。



霧島連山は宮崎県と鹿児島県の県境に位置する火山群で、標高1700メートルの韓国岳を最高峰に、近年の噴火でよく耳にする新燃岳(1421m)などが連続している。最も南に位置する高千穂峰(1574m)は、都城盆地など日向側からは円錐形の整った山容が望まれ、神話が実話のように思えてくるから不思議なものだ。山腹の御池からカメラを目一杯ズームさせたが、山頂に刺さるという天逆鉾は確認できなかった。



その山麓に霧島神宮がある。主祭神は当然、邇邇藝尊だ。そこは鹿児島県の霧島市で、湯量が豊富な温泉郷でもある。南九州一の参拝客を集める神社なのだろうか、年が明けて1週間になるのだが、なお初詣客で賑わっている。みなさん特設の大賽銭箱に賽銭を投げ入れ、神妙に手を合わせた後、すがすがしい表情で帰って行く。一生懸命生きているのだなあと、信仰心に劣る私は、そうした善男善女をぼんやり眺めている。



日向国を旅する私が霧島にやってきたのは、温泉や神話世界に浸るためではない。「霧島アートの森」を目指しているのだ。折りあればいつか訪ねたいと願っていた鹿児島県立の美術館なのだが、特筆すべきは立地の不便さだ。霧島神宮から車で40分以上走り、標高700メートルの山中に忽然と現れる。公設の美術館が、これほど訪れることが困難な地に設置されているとは驚きである。「何故こんなところに」と思う。



英語表記は「KIRISHIMA Open-Air Museum」とあるから、自然とともにある野外美術館なのだろう。オープンを前に美術館は、国内外のアーティストをここに招き、感じたままをオリジナルな作品に造形するよう求めたという。作家たちは思うがままに創作し、よくわからないなりに鑑賞者を惹きつける作品を創り上げた。その過程こそが芸術活動である。広々とした下り斜面と、その奥に広がる自然林が展示場だ。



例えば崖の上に延びる鉄の函がある。潜り込んで先端まで行くと、自分が広大な山野を展望する空中に浮かんでいることに気づく。「べレシート(初めに)」と題するイスラエルの作家の作品だ。何を意図して創られたものか分からないが、眼下で牧草を食む馬たちを眺めているだけで気持ちいい。作者の狙いに想いを馳せるより、作品に触れて、自分がどんな気分になっているかを考えればいい。私は晴れ晴れとしている。



この不便な美術館に、年間10万人がやってくるというから、アートの森は大当たりしたといえる。ただ欲を言えば、アートホールを挟んでさらに展示スペースを拡張できないだろうか。野外作品が20点程度では物足りない。ビエンナーレ形式の展示場として作品を増やしていく手法もあろう。神々が身近な大地、坂本龍馬も新婚旅行にやってきた温泉郷の湯けむり、そして不思議なアート群。霧島は面白い。(2019.1.8-9)
















































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