WALKER’S 

歩く男の日日

7日目 熊野本宮大社~滝尻王子。

2019-01-22 | 西国33観音巡礼


 朝食はなしで6時前に出るのでさすがにモーニングコーヒーはと思っていたら、6時15分前には用意されていたので、ザックを横に置いて1杯頂いてから宿を出ました。本宮の鳥居の前に戻ってきたのは6時ちょっと前、本宮の右脇の道に入って200m来たところが写真の交差点です。ここを左に入るのだろうかと道しるべを探したのですが全くなくて真っ直ぐ歩いて国道に出てしまいました。地図を見ていれば国道に出たところで間違っていたと気づいてここに戻ってくるのが普通、でもぼくはそのまま国道を1km近く歩いてやっと何か変だとここまで戻ってきたのでした。こんな重要なところに道しるべや矢印がないことの方がおかしい。ないという道しるべを信用しすぎてしまったのでした。四国では先ずこういうことはありませんから。でもここにはなかった。確かに本宮から近露方面に歩く人は少ない。向こうから来る人を100とすれば1か2の割合かもしれない。でもここまではどちら向きも平等に道しるべが設置されていたし、歩く人がいる限りきちんとガイドするのが世界遺産登録の道ではないか。ずぼらしてガイドブックを取り出すのを怠った自分が一番悪いのですが。


 20分も無駄に歩いてしまったので、身体がぶるぶる震えてこういう手ぶれの写真になってしまいました。気を取り直すまでに大分時間がかかりました。


 6時24分、歩き直してから4分で祓殿王子跡に来ました。まだ奮えてる。


 こんなところにはきっちり道しるべがあるのに。ついつい恨み節、


 歩き直しから30分、ここは三件茶屋跡、


 小辺路、高野山方面との分岐点でした。ここまで時速4km弱。


 小辺路の入口です。


 向こうから来た人の最後の休憩所です。


 歩き直してから44分で、伏拝王子に到着、ガイドブックでは58分、それも下りの時間だからかなりいいペース。


 みやこからここまで260km、12日間の道程。高貴な人は輿に乗って山を越えたというから20kmがせいぜいだったというのも頷けます。


 どこが本宮かよく分からない。


 伏拝王子を出て100m、この前後はほとんどフラットで舗装道


 健脚の人で滝尻から本宮まではちょっときついけどという人には少し手前のこの位置の宿はちょうどいいかもしれません。


 舗装道が終わって山道へ、


 何のための施設かよく分からないまま通り抜ける。


 7時28分水呑王子に到着、伏拝王子から1.9kmを23分で来ました。ガイドブックでは下り方向で30分と書いてあるから、なかなかのスピードです。
 ここでデジタルカメラのバッテリーが切れて、この後は写真がありません。
 残念ですが、昨日でなくてよかったとも思います。古道の味わいからすれば昨日の方が大分良かった。

 水呑王子でデジカメが使えなくなったので、以降は要所でタイムをメモしていくことになります。四国と違ってここまでは全くメモしなかったので少々面倒。
 水呑王子から23分で発心門王子に到着、1.7km、ガイドブック下り方面で30分の設定、ぼくは登りで時速4.4km。本宮からここまでは6.7kmで標高差は250mなので、単純に計算すると鶴林寺の4分の1の勾配、ごく緩やかな登りといっていいでしょう。4.4kmが普通に出るはずです。本宮からの平均時速も4.4kmです。
 発心門王子に着くと、4人の日本人男女が見学や撮影の真っ最中、ここから先近露の近くまで宿はないはずだから、てっきり本宮から来た人たちだと思いきや、訊いてみるとぼくとは反対方向、これから本宮へと向かうというから、?が消えませんでした。ガイドブックを見ていると、発心門王子にはバス停がある、そしてここから本宮へ至る6.7kmが熊野古道で一番の人気のルートだという。考え合わせれば、滝尻が出発点になるとは限らない。那智勝浦、あるいは新宮方面からバスで湯の峰温泉まで来て、翌朝一番でバスでここまで来て歩き始める。田辺からでも湯の峰温泉までバスが出ています。ここを出発点として三山を巡るというプランも普通に考えられます。中辺路を一通り歩いて分かったのですが、そのプランはいろんな意味で大正解だと思います。熊野古道の一番古道らしい味わいのある道を2日間で存分に味わえるコンパクトにして十分なトレイルです。滝尻から始めるとほとんどの人は那智山まで4日かかるけれど、ここからだと2日間で全ての人が那智山まで行けます。東京からでも大阪からでも3泊4日で発心門王子から本宮を経て那智山まで全部歩くことができます。
 発心門王子では休憩はとらずすぐに出発、すでに7時51分。無駄に歩いた20分があるから休憩はなるたけ短めにしたい。
 発心門王子までは山道もあったけれど舗装道も多く、一番の人気のルートだとはいうけれど、古道の雰囲気ということからすれば小雲取越の方が遙かにいいとぼくは思っています。
 発心門王子からは幅の狭い山道に入っていきます、最初は下りです。猪鼻王子まで標高差にして80m前後、距離は300mほどでしょうか。猪鼻王子の手前からはほぼフラットで、その後もフラットかごく緩やかな登り、沢の脇の道を進みます。このあたりは本当に古の香りを味わうことができます。登りはだんだん急になって本格的な山登りの様相です。三越峠の手前の急な狭い道で日本人とすれ違いました。近露の一番こちらよりの宿からでもここまで9kmはあって時間は8時半、かなり早く出ないと来られないのでは、ぼくはもう12km以上歩いてはいるけれど。
 三越峠に到着したのは8寺53分、ガイドブックの距離表示は三越峠で区切っていないのでよく分からないのですが標高のグラフで推察すると、発心門王子から4km前後、62分かかったので時速は3.9kmというところでしょうか。前半部分の緩いところでずいぶん稼いだのでこの数字ですが、峠の手前では2kmも出ていなかったところがあったと思います。
 峠には休憩所があって中には外国の男性がいました。今日はどこまでですかと英語で聞いたら湯の峰温泉までということでした。3時間か4寺間で行けますよとおしえてあげました。そのあと写真を撮らせてもらったのがオンタイム10月20日のブログです。

 三越峠の休憩所を9時06分に出たのですがまた明後日の道に入ってしまいました。山道で上がってきた三越峠は3方向に舗装道が延びています。山道から上がってきたところから休憩所へはちょっと右の方に舗装道を進む、それでその続きの舗装道を上がってしまったのでした。でもちょっと待てよ、峠なら次は下るのが本当じゃないかと間違いに気づいてまた10分無駄に歩いてしまいました。本当の道は上がってきたところに戻って、舗装道を横断したところにちゃんと道しるべもありました。こんどは文句は言えません。幅の狭い急な山道を下りていきます。まもなく登って来る外国の人たちとすれ違います。10時25分くらいだから近露の宿から来るとこれくらいがスタンダードになるでしょう。どちらかが立ち止まらないとすれ違うことができないほどの細い道、そして勾配もかなり急、登ってくる人たちはハアハアいいながら大汗をかいています。湯川王子まで1km以上の下りになります。湯川王子のすぐ先で湯川川を渡ると蛇形地蔵、ここで迂回路の標識です。5年前の台風で古道が通れなくなって新しい道が整備されていました。ガイドブックには通れなくなった古道に黒点線、迂回路に赤点線が付いています。その距離4kmというからもう全く古道とは関係ない道を1時間半は歩くことになります。ガイドブックには『よく整備され、標識類に過不足なく安心して歩ける。結構ハードな登りとその途中に開ける雄大な眺望など、旧コース以上かもしれない。』と書かれていますが、ぼくは拍子抜けして全く気乗りがしませんでした。幅の広い林道や無理矢理作られた急坂も熊野古道とは関係ないから歩く意味があるのかと思うくらい。蛇形地蔵でタイムをとらなかったので、迂回路そのもののタイムは分かりません。蛇形地蔵まで30分で下りてきたとしたら、そのあときびしい峠までが64分、峠から古道に合流するまでが31分かかっているので、ガイドブックの通り1時間半はたっぷり迂回路でした。時速は2.6kmほどしかでない登りも下りも相当きつい山道がほとんどです、しかも古道でもない。どれだけ険しくても古道なら納得しますが古道でないとただただ辛いだけの道。
 迂回路と通行不能になった古道の分岐点が仲人茶屋跡、ここから近露方面は急な登りがしばらく続きます。15分ほど登ると草鞋峠、峠から数分下ると熊瀬川王子です。時刻は11時21分。三越峠から休みなしで2時間5分かかっています。熊瀬川王子から数分下ると幅の広い自動車道に出ます、それもほとんどフラット、車もほとんど通らなくてすごく歩きやすいのですが、これは熊野古道としてはどうか、という感じもします。しかも結構長い、近露の町までずっと舗装道で山の中には入りませんでした。舗装道を離れて上の方に王子があるところもあったのですが、構わず近道の舗装道ばかり歩きました。古道歩きがメインではなくあくまで西国巡礼なので、特にこういう日は近道優先です。
 熊瀬川王子から継桜王子までは3.8km、1時間とガイドブックにありますが、ぼくは39分で来ました。写真を撮らないからどんどん歩けます。継桜王子の近くにネットには出てこなかった民宿がありました。今日はここまで外国人18人、日本人8人とすれ違った、ということは毎日それくらいの人数が近露の近くに泊まるということ、新しい宿ができるのも当然のことでしょう。
 継桜王子からもずっと舗装道で一部急な下りもありましたがフラットに近い緩やかな下りで近露の里に下りていきます。大きな金木犀の木があって華やかな香りが道中を和ませてくれます。近露王子に到着したのは12時41分、ガイドブックでは継桜王子から3.9km、68分とありますが(上り方面)ぼくは41分でした。
 ここで長めの昼休憩をとります。
 近露王子のすぐ横に建物があって入口横に足湯がありました。足湯には蓋がしてあって使えないけれど腰掛けは使えるのでそこで休ませてもらいました。本宮からここまで24.7km、正味の歩行時間は5時間55分、平均時速は4.2kmほどでした。ここからゴールの滝尻王子までは13kmだからここまでの5割強、正確には52.6%。だからあと3時間半くらいで行けるだろうと見当をつけます。宿には17時頃に着くと言っていたので迷惑はかけないで済むだろうとこの時点ではやや楽観的でした。
 20分休んで13時01分に発ちます。橋を渡ってすぐ4人の外国人男女と出会います。ここから一番離れた近露の宿でもあと1時間ほどで着いてしまいます、ガイドブックでは滝尻王子から継桜王子まで6時間50分かかると書いてありますが、彼等は5時間ほどしかからなかったということでしょうか。そのすぐあと舗装道から山道に入るところでも二人の女性と出会いました。25分ほど歩いたところで山道が国道に近づいて牛馬童子口バス停が見えるところに出てくるのですが、道の駅がそのそばにあって4~5人の外国人が休んでいるのが見えました。早く来すぎて時間を持て余しているようでした。ぼくがネットで探したときはここから滝尻までの間に宿はなかったのですが、滝尻王子の3kmほど手前に民宿ができていました、そこからだと普通に歩いてもこの時間に着いてしまうということのようです。バス停からは登りになって、距離にして3km、標高差は400m弱の山道で峠を目指すことになります。その峠に着けばあとは緩やかな下りで快適にとばせそうな感じがしています。登りの途中では日本人の団体21人にも出会いました。数えるのが大儀だったので一番後ろの人に尋ねました。近露王子から峠まで98分かかったのですがその間に出会った外国人は25名、日本人は28名でした。これだけの人が近露の宿に泊まれるのかなと心配になるくらいです。

 牛馬童子口から最初の峠は逢坂峠ですが、前のページで言ったのは逢坂峠ではなくてその先の上田和茶屋跡のことです。逢坂峠は少しだけ下ってまた登りが大分続くので、峠という感じではありませんでした。茶屋跡からはほとんどなだらかな下りが続くのでぼくにとっては完全に峠なのでした。茶屋跡を過ぎると十丈王子までの2km弱は予想以上に歩きやすい気持の良い山道です。最初はちょっと急な下りでそのあとは緩い登りもあるのですが、極端にスピードが落ちるような登りではありません。この道を歩かないのはちょっと勿体ないかというくらいの古道です。茶屋跡から30分で十丈王子に到着、時速は4km前後。近露王子からだと6kmを1時間48分で来たことになります。時速は3.3km。あと7kmだしおおむね下りだしと、完全に油断して十丈王子で20分休んだのですが、完全に落とし穴にはまった感じになってしまいました。今日はここまですでに8時間以上歩いていることを忘れていました。四国では8時間以上歩くことはほとんどありません、今までほんの数回です。そして、まだ7kmを残すということは10時間は歩くことになる。
 十丈王子から高原熊野神社までの3.3kmは緩やかな下りで全く問題なかったのですが、そのあとは本当に悲惨と言ってもいいくらいでした。神社からしばらくは平坦で、その途中に新しい民宿があって今日泊まるであろう外国人のカップルがその庭先にいたりしたのですが、ちょっと下って自動車道を横断してからがまた本格的な登りになる、ガイドブックのグラフでは大した勾配ではないように見えたのですが、体力の方が全然付いていきませんでした。これだけの時間歩くことまでは計算に入っていなかった。そして登りきったあとがさらに悲惨、道らしい道がほとんど見えなくなって崖のようなところをおそるおそる下りていくという感じ。四国でいうと女体山の手前の鎖場のような道です。平安の貴族たちがこんな崖を登っていったのかと、先ずそのことばかりが頭の中をグルグル渦巻きました。下るのはさらに怖いから、本当に足場を確かめながら時速1kmも出ないようなはいつくばるような格好になるところもあります。今でもこの部分は本当の古道ではないと疑っているほどです。高原熊野神社から少し先で横断した舗装道から南の方にも北の方にも下りていく道があるのですがおそらくそのどちらかのルートを行くのがスタンダードではなかったか、ぼくがもしもう一度この道を歩くことがあるとすればその南側の道を行きたいとまじめに考えています。


 そういうことを考えながらも、なんとか崖の道も無事に下りきって滝尻王子に到着したのは17時12分、予想では30分は早いはずだった。ほとんど下りだったのに時速は3.4kmしか出ていませんでした。本日の40km、前日の全ての道の中でも一番ひどい、一番険しい山道でした。ここを起点に登り始める人が圧倒的に多いと思いますが、登りだとさほどきつくないのかもしれません、まだ最初の最初でもあるから。
 境内を抜けながら宿に迎えをお願いする電話を入れました。写真は翌朝撮ったものです。

 7日目の宿は滝尻王子から国道311号を3kmほど近露方面へ戻ったところ、栗栖郵便局の近くにある「きけうや」さんです。ぼくが調べた範囲では滝尻の近くにはこの宿しかありませんでした。高原熊野神社の近くの宿が分かっていればそちらに予約を入れたでしょう。
 今日の宿泊はぼく一人でした。田辺の宿に泊まってバスで滝尻まで来る人が多いようだから、わざわざ少し離れたところの宿で送迎をお願いすることもない。でも一定のお客さんはいるようで、外国人からもよく予約の電話が入るそうです。言葉が分からないと何もできないので基本は断るそうですが、数日前には一人泊まってもらったそうです。


 夕食は四国の宿と比べてもトップレベルの豪華さでした。2食付き8640円とちょっと高めですがおじいちゃんもおばあちゃんもとても感じのいい人で、もう1回来たいと思わせる宿でした。

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