WALKER’S 

歩く男の日日

15日目 5月8日

2009-06-29 | 09年四国の旅

 6:03
6時10分前に宿を出ようとすると、女将さんがお弁当を持って見送りに出てきてくれた。ずっしり持ち重りがする。幡陽小学校のバス停で食べよう。今日はコンビニに入る必要がないようだ。これだけ、いっぱいお接待を頂いたのだから、元気に一所懸命歩かねば。


 6:08
午後から晴れる予報だけれど、いつ降り出してもおかしくないような雲行き。昨年は朝から正面の朝陽が眩しくて歩き辛かったくらい、それに比べれば、気温も低くて歩きやすくなるかもしれない。


 7:13 窪津小学校
今日は打ち戻りで、ドライブイン水車までの29kmは昨日歩いた道を引き返すので、ほとんど撮るべき写真はない。歩きに専念できるけれど、最高に調子の良かった2年前に比べると、どうも動きが本調子ではない。足の張りは昨日よりも治まっているけれど、全体の動きが冴えない感じがする。


 8:08 以布利港
足の調子は全然問題ないけれど、やはり速さや躍動感はあまり感じられない。ここまで4人の人とすれ違った。窪津の山道ですれ違った女性は村の家で同宿だった、かなりいい調子でここまで来ている。それにしても、星空、旅路から来たと思われるのは彼女だけ、連休が終わってしまったせいか、歩きの人は例年より少ない。


 8:22
2年前より7分遅れで幡陽小学校に到着、やはり、今回が調子悪かったというより、2年前が異常だったというべきかもしれない。ああいう感じは、滅多に味わえるものではない。
 お弁当を開くと、思いがけないことに手紙が入っていた。ちょっと気持ちがほぐれた、時間ばっかり気にしてないで、もっと楽しまないと。


 9:46
幡陽小学校のバス停で休んでいるときに、足摺へ向かう人が5人、三原村へ向かう人が一人行き過ぎていった。5人は、いさりびか久百々に泊まったに違いない。やはり、岩本寺から2日で久百々あたりまで来るというのが標準的なようだ。
 バス停で28分休んで8時50分に出発、出てしばらくのところで女の人とすれ違う、この人も久百々からの可能性が高い、それから久百々に着くまでは歩きの人には会わなかった。久百々までの歩きはかなり動きが戻ってきた、1分遅れ。国道に出てきた所に電話ボックスがあるので、久しぶりに宿の予約を入れる。3日後の大洲のふるさと旅館は問題なくとれたけれど、久万高原の一里木は連休が終わって休業中で出ない。
 バス停で休んでいる間に足摺へ向かう男の人が二人行き過ぎていった。一人は野宿だけれど、もう一人はどこから来たのだろう。中村の宿からだとかなり早い時間に出ないとここまで来ることはできない。


 10:42 一心庵
下ノ加江の橋を渡った(往路)ところにある、新しくできた休憩所、宿泊所。牟岐の民宿あづまの女将さんに教えられていた。素泊まり3000円という情報があった。教えられたときは、ぼくには必要のない宿だと気にもかけなかったけれど、よく考えれば来年の108ヶ所巡りに利用することができる。いさりびに泊まって、金剛福寺を往復してここまで来ると、42kmくらいになる。


 11:31 水車
下ノ加江を過ぎると、川の向こうの旧道を二十人くらいの人が列を作って歩いている。あれだけの団体が歩いているということは、歩き遍路ではない。合流地点にバスが停まっていた。バスに乗り込む人もいるし、そのまま水車まで歩く人もいる。バスツアーでも、部分的に歩き遍路を味わいましょうということがあるようだ。前にも岩本寺の手前、影野のあたりで見かけたことがある。
 水車までの歩きも快調で、1分遅れ、誤差の範囲といえるし、天気が良くなって気温もだいぶ上がっている。ここまで2人とすれ違う。結局15人と会っただけ、昨年も16人と変わらなかったけれど、一昨年は39人と会った。


 12:10
39分休んだけれど、結局橋本さんは来なかった。朝食の時間が遅かったのかもしれない。ここから39番まで25km、橋本さんの足で4時間、休憩を入れて5時間、納経は明日の朝ということになりそうだ。


 12:11
 県道に入る所に、真念庵へ向かう階段がある。ぼくはまだ歩いたことはない。ちょっと分かり難い道だというけれど、一度は歩いておかねばならないだろう。何しろ、八十八ヶ所を決めたのはこの人だということだから、番外霊場の中では最も重要な場所だともいえる。


 12:16
県道をしばらく行くと真念庵の納経所がある。


 12:16
県道の方からでも眞念庵には行けるみたいですね。今回は行かないけど。


 12:18
この距離表示は正確、ぼくが泊まる宿は三原村の少しはずれのところにあるけれど、宿までの距離がちょうど14kmだ。


 12:51
眞念庵から4kmほどで三原村に入るけれど、宿まではまだ11kmくらいある。三原村も広い。


 12:56
前を行く歩きの人がこの中に入るところ、通り過ぎるときに挨拶すると、東寺庵で一緒だった野宿の人だった。ものすごく距離を歩いている。昨日は四万十の大師堂から足摺まで行って、折り返して4kmくらいのところにある接待所で泊まったに違いない。あの荷物で43kmも歩くなんてすごい。この遍路小屋はできたばかり、昨年はなかった、このそばの道端で休んでいる女の人がいたのを覚えているから間違いない。


 13:17
この手前のところでちょっとした登りがあるけれど、たいしたことはない。三原村に入ったところが140m、この峠の標高が179m。この坂がきついから下ノ加江川沿いの道を行くように薦める人がいるけれど、あちらのほうが1.4kmも長いので、これくらいの坂だったらこちらの方が時間はかからないし、負担もかからない。


 13:46 上長谷集会所
峠からここまでが長い、2km半ほどの平らな道だけど、例年ものすごく遠く感じる。一番気温が上がって、ここまで35kmも歩いているせいか、なかなか辿り着かない感じがする。足の調子は過去2年よりはしっかりしている。2年前は相当ばててしまった。
宿まで50分くらいなので、20分休んでも3時までに楽々着ける。


 14:05
上長谷集会所を出てすぐ、この道標がある。ここを右に折れると、数年前に復元された眞念遍路道を行くことになる。ぼくは4年前に歩いたけれど、これはあまりお薦めできない。宿毛へ下りていく山道は幅50cmくらいで片側が崖、というようなところが多くて油断できないし、下りてきた後が、区画整理やバイパスの開通で旧い道がほとんど消えていて味気ないことこの上ない。この道は一度も歩く必要はないでしょう。


 14:26 宮ノ川トンネル
人も車も全くと言っていいほど通らない静かなトンネル。眞念庵からここまでずっとそういう感じではあったけれど。そういう意味では本当に『村』という感じ。


 14:31
トンネルを抜けると、右折左折を繰り返しながら進むけれど、要所にはもれなくこういう遍路標識があるので心配無用。


 14:44
38番から39番へ行くには幾通りかの道がある。眞念庵から来るとこの交差点へ東から来る。下ノ加江川沿いを来るとこの交差点へ南から来る。今ノ山峠から来るとこの交差点へ西から来る。そしてみんな北へ進む。ぼくは6年前は南から、5年前は西から、2年前1年前今年は東から来た。ちなみに4年前は月山神社回り、3年前は眞念遍路道を行ったのでこの交差点は通らなかった。


 14:53 清水川荘
宿に着くと、ご主人はいなくて表に張り紙があった。順番に空いた部屋に入って下さい、ということだった。すでに先客が一人いた、今日は大岐マリンから来たという男の人だった。ぼくは2年前と同じ奥の左の部屋に入る。手前の部屋と真ん中の部屋は欄間の部分が空いていてそこにクーラーがあって1台で2部屋を冷やすようになっている。当然隣の音が気になる。奥の部屋は完全に仕切られていて隣との境は押入になっている。



 18:48
ぼくが部屋に落ち着いてしばらくした頃、女性二人連れが到着した。そしてその後に男性が一人、6部屋の内4部屋が埋まった。連休が終わったというのにこの人気、久百々、いさりびからだと三原を越えて宿毛の宿まで行ける人は多いけれど、その手前の宿、旅路、星空や土佐清水市内の宿からだと三原までが限度という人がほとんどだから、自然この宿の人気は高まってくる。しかも料金が5000円。女性二人も土佐清水からやってきたという。
 4時過ぎになると、ご近所の夫婦がやってきて食事の用意を始めた。増井さん(宿の主人)は高知県知事に会いに行っていて、帰宅が8時頃になるので、近所の知り合いに食事を委託したという。増井さんは三原村村会議員であり、NPO法人いきいき三原会の代表、この宿も間伐材を利用して自らの手で建てたという。大阪の有名企業で定年まで勤め、その後生まれ故郷である三原村に戻ってきた、奥さんは大阪で美容院を経営しているので、単身で戻ってきた。もちろん普段は宿の料理も彼が作る、ものすごいバイタリティーの持ち主。
 お風呂は、昨年はシャワーだけだったけれど、今年はちゃんと湯船にお湯が溜まっている。このお風呂はぼくが今まで四国で入った中で最も小さい、でも、最もかわいい、最も風情があると言い換えてもいい。マイナスに捉える人はいるかもしれないけれど、ぼくはあまり気にならない。
 食事は5人でにぎやかにとる。昨年は6組9人が泊まったので部屋食だった。食堂は5人でいっぱい、もう一人多ければ部屋食になったかもしれない。ぼくは、ほとんど素泊まりなので、このようにほかのお遍路の人と一緒に頂くのは牟岐のあづま以来10日ぶりになる。食事をしているときに、もう一人の男性が到着、ぼくが幡陽小学校と久百々で休んでいるときに前を通りすぎていった人だ。若い人だけど野宿の装備ではないようだったのでここまで来ると思っていた。食事の用意をしているおばさんは人数が増えて大慌てだったけれど、彼は素泊まりだったので一安心。食事が終わりかける頃、みなさんに遍路宿情報を配る、熱心にそれを眺めていた女性が、不思議な顔をしている。「これはホームページを印刷したものですか?」。はい、自分の作ったホームページを印刷したものです。彼女はそのページを見たことがあると言う。宿のことを調べているときに偶然当たったそうだ。自分のホームページを見てくれている人に初めて出会った。ちょっとした感動を覚える。ぼくのページを参考にして泊まった「村の家」は料理も美味しくて本当にいい宿だったという。人の役に立てるページを提供できていたことが目の前で確認できて、ほんのりした喜びを感じる。ぼく以外の4人はみんな明日までの区切り打ち。通しの人は本当に少ない、意外な感じはするけど区切り打ちの方が何倍も多いのだと思う。

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