河村顕治研究室

健康寿命を延伸するリハビリテーション先端科学研究に取り組む研究室

鉢巻き式の脳血流評価システム

2010-06-30 | 研究・講演
先日の研究会で中馬先生はパーキンソン病では種々の治療的アプローチに対する患者の反応は様々であるとおっしゃっていた。

その後、ゲーム機をリハビリに応用されている高杉先生が、脳血流を計測するとゲームや筋トレなどの刺激によって人の反応は同一ではなく、まちまちなのだとおっしゃっていた。
筋トレに反応する人もあればゲームにしか反応しない人など実に様々なのだそうだ。
リハビリには万人に適応できる原則などはないのかもしれない。

その際、高杉先生は日の丸を描いた鉢巻き式の近赤外線方式の脳血流評価システムができないかとぼそりとつぶやかれたのだが、その後、エムピージャパンという会社から、鉢巻き式の脳血流評価システムのカタログが送られてきた。

カタログには小さな子どもが鉢巻きをして勉強したりバランス運動をしたりして計測している写真が載っている。

やはり、同じことを考える人はどこにでもいるのだとあまりのタイミングの良さに驚いた。

価格であるが、バイタルモニター ProComp (プロコンポ)と言う本体を別にして、税込で42万円だそうだ。
商品名は nIR HEG キット である。

http://www.blueworks.co.jp/solution/medical/nirheg.html

子どもが集中して勉強しているかどうかモニターできそうである。
ちょっと使ってみたい商品ではある。
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第30回中国四国リハ医学研究会

2010-06-27 | 研究・講演
米子コンベンションセンターで以下の研究会・地方会が行われた。

第30回中国四国リハビリテーション医学研究会
第25回日本リハビリテーション医学会 中国・四国地方会

今回は3つの講演が行われた。

ランチョンセミナー
 「リハビリテーション従事者が知っておきたい認知症の基礎知識」
  首都大学東京       繁田 雅弘 先生

特別講演
 「パーキンソン病のリハビリテーション」
  滋賀県立成人病センター  中馬 孝容 先生

 「笑顔と尊厳を守る高齢者リハ~心が動けば体も動く~」
  九州大学病院       高杉紳一郎 先生

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第1回大学協議会

2010-06-24 | 大学
研究科長になって初めての大学協議会が行われた。
理事長が司会をされて、学長・副学長・学部長・研究科長が構成員である。
大学の規定の変更や重要な事項が決定される。

役職に就くと参加する会議と行事がものすごく増えて、指導するゼミ生や大学院生と実験する時間が反比例で減っていく。
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特許査定

2010-06-24 | 研究・講演
ある企業から2004年に出願して、いったん拒絶されながらも請求項を絞って再度提出したものが特許査定を受けて返ってきた。

例によってあの決まり文句である。

『この出願については、拒絶の理由を発見しないから、特許査定をします。』
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踵部皮膚壊死の湿潤療法5

2010-06-24 | 医学・医療
今日の記念式典の昼休みに、医学部仲間で集まって雑談をしていた時、今回の踵部皮膚壊死の湿潤療法の話になった。

国立がんセンターの川井先生は、
「そういうのはバキュームを使えば良かったんじゃないか。」
と言う。

岡大の阿部先生は、
「踵の傷は感染しやすいのに、その患者さんは運が良かったんじゃないですか。」

ちなみに川井先生の言うバキュームというのは陰圧閉鎖療法(vacuum assisted closure療法)のことであるらしい。
わかりやすい解説をネットで見つけた。

『川崎病院形成外科 褥瘡に対する陰圧閉鎖療法』
http://www.kawasaki-hp.jp/article/topics/keisei/okumoto001/

確かに治りにくい傷には良さそうだ。
ただ問題は吸引用の設備か器具を要すると言うことである。

しかし、さらにネットを検索すると安価な処置法が出ていた。

『褥瘡の局所治療-TIME 理論で考えるラップ療法と 陰圧閉鎖療法-』
http://www.ne.jp/asahi/kitano/iryou/images/pdf/brushupseminar.pdf
安価な注射器などで陰圧を加える方法で1回の処置が470円で3日に1回でよいので1日160円で良いのだそうだ。

これまでやったことはないのだが、機会があれば試してみたいと思う。
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ナカシマメディカル株式会社研究所竣工記念式典

2010-06-24 | 研究・講演
ナカシマメディカル株式会社が『先端イノベーション拠点』として建設中であったR&Dセンターが竣工し、記念式典が行われた。
岡大整形外科関係で尾崎教授、阿部先生の他にも国立がんセンターの川井 章先生と私もこの事業に名前を連ねており、式典に参加してきた。
当初考えていたよりも、研究設備は驚くほど整備されていて、他の来客ともども非常に驚いた。
特に金属造形の機械は、3次元CADデータから任意の形状の人工関節や多孔体をプリンターで印刷するように簡単に造形してしまうというもので、生まれて初めて見させてもらった。
日本にあるのは僅かに2台だけで、その2台がすべてこの研究所にあるとのことである。
プラスチックで造形する装置は知っていたが、まさか金属でそんなことができるとは知らなかった。
この機械を使うと表面が骨に親和性の高いメッシュ構造の人工関節を一体のものとして作れるのだそうだ。
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踵部皮膚壊死の湿潤療法4

2010-06-22 | 医学・医療
受傷から5ヶ月、広範な皮膚壊死が起こってからはほぼ4ヶ月で皮膚の上皮化が完了した。
あと1ヶ月もすれば傷の痕跡すらなくなるだろう。



この方は80代の高齢者であるにも関わらず、皮膚の再生については何の問題もなかった。

こうして植皮などしなくてもきれいに皮膚が治るのを目の当たりにすると、人間の持つ自然治癒力のすばらしさに感動すら覚える。
私が医師として行ったのは、ただ水できれいに洗うように指導して、プラスモイストとポリウレタンフィルムでの処置法を指導しただけである。
基本的には自宅で奥さんがにわか看護師となって処置をしてくださった。

湿潤療法こそまさに下記の言葉そのものだと感じる。

natura sanat, medicus curat
「自然が癒し医師は見守る」
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投稿論文ラッシュ

2010-06-16 | 保健科学研究科
現在、本学では大学大学院一貫教育の議論が盛んである。
優秀な学生について、大学院進学の希望があるものについては学部教育4年間のうちに大学院修士課程の一部の単位を取らせて、修士課程を1年で卒業させるというものである。
修士課程が通信で行えればさらに学生にとってはメリットが増すことになる。
他の学生と同じように就職できて、最低限の期間で修士が取れるからである。
そのような制度設計ができるか、研究科長として各方面と調整を行わなくてはならない。
他にもいろいろと調整作業が必要で、本日の研究科委員会で問題提議だけ行った。

そんな忙しい最中に、昨日今日の2日間で、投稿および再投稿の論文を見て欲しいというメールが4件も立て続けに届いた。
読むだけでも大変なのに、こちらの多忙な時を見計らって送ってきたような、最悪のタイミングである。

さらに、通信制大学院生からは課題レポートについての問い合わせがひっきりなしにメールで入ってくる。

ちょっとゆっくり休みたいのだが・・・
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第56回岡大整形外科開講記念会

2010-06-12 | 研究・講演
岡大整形外科の開講記念会が行われ、出席した。
特別講演として以下の講演が行われた。

特発性大腿骨頭壊死症の要点
京都府立医科大学整形外科教授 久保俊一先生

その後開講記念会が行われ、今年入局した新人の自己紹介があった。
そう言えば私が新人として同じように自己紹介したのはもう25年も昔のことだ。

懇親会ではふだんなかなか顔を合わせることができない先生と挨拶を交わし、旧交を温める。
この世界では人と人との繋がりは貴重なので、得がたい機会である。
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踵部皮膚壊死の湿潤療法3

2010-06-11 | 医学・医療
湿潤療法を行う上で守らなければならないことがいくつかある。

1.傷の消毒は行わない
2.傷に直接ガーゼを当てない
3.創傷の治癒を妨げるクリームなどを塗らない
4.創傷は大量の水道水できれいに洗う

などである。

この患者さんの場合も全く同様で、消毒は一度も行っていない。
フィブラストスプレーは初期に短期間だけ使ったが、特別の軟膏など何も使っていない。

そうは言うものの、感染のリスクはあるので痛みが出た場合はすぐに病院に来るように言っておいた。

しかし、こちらの懸念もどこ吹く風と、ご本人は全く不安もないようで自宅での生活をエンジョイされていた。

傷はだんだん浅く小さくなり、こちらが期待していた以上の回復をした。



傷が小さくなると処置もますます簡単になり、最近では普通に足を洗って傷に小さく切ったプラスモイストをサージンフィルムで絆創膏のように貼るだけになってきた。



痛みなどは全くない。
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ゼミ生の動作解析風景

2010-06-10 | 大学
4月からゼミ配属された3年生たちであるが、もう既に自力で3次元動作解析システムを使いこなせるようになった。
今夜は被験者に2年生に来てもらい、動作解析を行った。



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踵部皮膚壊死の湿潤療法2

2010-06-10 | 医学・医療
当初は縫い合わせた皮膚が生着してくれることを期待していた。
しかし、それが期待できなくなったからには何とか治すしかない。

一般的にはこのような傷では植皮を考えるだろう。
しかし、踵のように本来分厚い皮が覆っているところに、体の他の部位からうすい皮膚を採取して植皮しても、後で傷つきやすい踵になってしまう。

この患者さんは高齢で仕事は何もしていない。
時間はたっぷりある。
また、医療費についても交通事故の保険でカバーできる。

本人も手術はできるなら避けたいと希望している。

結論としては湿潤療法で気長に治していくのがベストと考えた。
問題はこれほど大きな傷が湿潤療法で本当に治るかどうかである。

治らない時はまた軌道修正すればよいと考えて治療を開始した。

最初の頃は傷からの浸出液も多かったので、水道水できれいに洗った後、アダプティックという創傷被覆材で覆ってその上にガーゼを当てて包帯固定した。
アダプティックというのはセルロースで編まれた繊維にワセリン(またはシリコン)をコーティングした非固着性ガーゼで剥離性がよいため、ガーゼ交換のとき傷口に貼りつかず、繊維を残さないという商品である。

せっかく病院で治療しているので、フィブラストスプレーも1クール併用した。
フィブラストスプレーは塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)というもので、スプレータイプの外用液剤として商品化されている。

そうこうしているうちにだんだん肉芽が盛ってきて傷がきれいになってきた。

そこで、浅い傷に通常私が使用しているプラスモイストとサージンフィルムという組み合わせで創傷処置を行うようにした。
プラスモイストは夏井先生が株式会社瑞光メディカルと共同開発した比較的安価な被覆・保護材(一般医療機器)であり、病院でなくても一部の薬局では購入することができる。
サージンフィルムはポリウレタンフィルムで未滅菌ロールタイプで比較的安価である。
水ははじくが皮膚からの水蒸気は通すという優れものである。



この状態でお風呂にも入れるので、もう入院を継続する必要もなくなった。
歩行は当初から踵を除圧させて許可している。

患者さんは痛みを訴えることもなく、自宅で普通の生活ができ、奥さんが毎日傷の処置をして、週一回通院してもらって私が確認するというパターンに落ち着いた。
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踵部皮膚壊死の湿潤療法1

2010-06-09 | 医学・医療
今年になって私に降りかかってきた病院での治療における課題が今回のテーマである。

患者さんは高齢の男性で車にはねられて左の踵がミンチのようになってしまっていた。
当直の外科医が救急で受けて、長時間かけてぐちゃぐちゃになった皮膚をあの手この手で元の形に縫い合わせてくれていた。
その後の処置をまかされたのである。

とりあえず、毎日バケツに水を満たして怪我をした足をつけてきれいに洗うことから治療はスタートした。



1週間ほど経つと、縫合した皮膚の一部が壊死して黒くなってきた。



毎日、足を洗いながら、週に1~2回壊死した部分をハサミで切除していった。
1ヶ月経った頃の写真が下のものであるが、結局縫い合わせた皮膚は全て壊死してしまった。



日常生活で体重がかかる踵の広範な皮膚壊死であり、このまま保存的に治療を続けるべきか、手術を検討すべきか悩んだ。
患者さん本人は手術をしなくても治るのなら時間がかかってもかまわないとおっしゃる。

私にとってもこれほど広範で深い傷の治療は初めてである。

2009年1月4日のブログに書いたが、ひょんなことから私は新しい創傷処置法である「湿潤療法」に目覚めたので、この傷も意外とうまく治るのではないかという予感があった。
http://blog.goo.ne.jp/kawamura_md/e/d8c795e873b3fb10ffd9cdd100a4afd0

そこで、患者さんの同意を得て、いけるところまで湿潤療法で頑張ってみることにした。
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訪問介護員養成研修2級課程講師ほか

2010-06-08 | 大学
本学園エクステンションセンターの依頼で毎年行っている訪問介護員養成研修2級課程の講師を夜2時間ほど務めた。
今年は受講者は16名で、人気はいまひとつのようだ。

講義終了後、平上学部長のご自宅へ車で向かった。
昨日実母が、ご逝去されたので通夜に行ったのである。
失礼ではあるが、明日の葬儀は会議のため出席できない。
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亡くなった患者さんが生き返った話

2010-06-08 | 医学・医療
医学・医療について経験したことについて記録する。

病院の医局で待機していた時に、看護詰所から緊急コールがあった。
「患者さんがステッたのですぐに来てください。」(注:ステるというのはドイツ語のステルベンから来た死亡という隠語)
あわてて病室に行くと、娘さん2人が泣いている。

特に末の娘さんと思われる方は号泣している。
「私が一番迷惑をかけたのに・・・
お母さん、何で・・・
どうして・・・。」

亡くなった患者さんは92歳。
看護師に状況を聞くといったん頻脈になり、定期の点滴を行っていたので様子を見ているうちに心臓がいきなり停止したのだという。
数日前に主治医から家族に心不全が進行して全身に浮腫が来ているからいつ様態が急変するか分からないとムンテラがなされていた。
高齢であるからそのような場合も挿管やカウンターショックなどの救命処置は行わないという約束であった。

号泣する末娘の方によると、最期を看取ろうとずっと付き添って、おむつを替えてその処理に病室を離れたほんの僅かの時間に心臓停止となってしまったのだという。

私はかける言葉もなく、しばらくしてご臨終の宣告をした。

娘さんは亡くなった母親に覆い被さるように泣き崩れる。

いくら92歳とはいえ、実の親を亡くすのは悲しい。
私も父を亡くしてその痛みはよく分かる。
それにしても病室を離れたほんの数分の間に逝ってしまうなんて何て不運なのだろう。

家族だけで別れを惜しむことができるように、私はいったん看護詰所に引き上げた。
カルテに記載をしていると、モニターを見ていた看護婦さんが
「あ、心臓が動き始めた。」

何と、先ほど死亡宣告した患者さんの心拍がモニターにはっきり出ているではないか。

慌てて病室に行くと、心臓が動いているだけでなく、死んだはずの患者さんが顎を動かしている。
間違いなく生きている。

ついさっきまで号泣していた娘さんもあっけにとられて、
「お母さん、しっかりして。
聞こえる。
しっかりして。」
と声をかける。

いったん心停止した患者が、数分後に心臓が動くことはそんなに珍しいことではない。
研修医が、早とちりして死亡宣告した後に生き返って気まずい状況になった話は渡辺淳一のエッセイで読んだことがある。
しかし、10分も経過して生き返るというのはそんなにありふれた話ではない。

「三途の川の渡り口で、娘さんの呼ぶ声が聞こえて引き返してきたのかもしれませんね。」
と娘さんに声をかけたが、あながち嘘ではなかった。

しかし、弱り切った心臓がいつまでも持つはずもなく、それからしばらくしてその患者さんは静かに息を引き取った。

遺族は、今度は最後まできちんと看取ることができ、もう静かに泣いているだけだった。

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