河村顕治研究室

健康寿命を延伸するリハビリテーション先端科学研究に取り組む研究室

ORS近づく

2009-01-30 | 研究・講演
ORS事務局から直前の案内メールが送られてきた。
このブログに貼り付けておけば、もしバッジを持っていくのを忘れてもこのページを見せれば大丈夫だろう。

55th Annual Meeting
of the Orthopaedic Research Society
February 22-25, 2009, Las Vegas, NV

Your Annual Meeting name badge, check-in ticket and meeting receipt were mailed to you on January 26, 2009. Please remember to bring your meeting name badge and materials to the meeting.

If you do not receive your meeting badge before you leave, please print our this letter and bring it with you to the “Already Registered - Badge Pick-up” counter located in Hall G at the Sands Expo Convention Center to expedite your name badge reprint.


ORSは知らない人には分からないと思うが、整形外科関係では最も歴史も古く、格調高い国際学会である。
世界中の関係研究者が演題を応募する。
したがって演題を申し込んでもなかなか採択されない。
そんな中で、私は採択率がかなり高い方である。

昔、ハーバード大学のGuoan Liになぜ自分の演題が採択されるのかよく分からないと言ったことがある。
その時彼は、それはおまえの研究があまり行われていないテーマだからだろうと言った。
確かにその通りで、バイオメカの研究でもこういった研究を行っている研究者は少ない。
しかし、膝に関するバイオメカニクス研究は強く求められているところなので採択されるのだろう。

いよいよ本番が迫ってきたので、この週末は他の仕事は脇に置いて発表のためのポスターを仕上げよう。
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産官学連携について

2009-01-29 | 保健福祉研究所
先日、大学所在市の市役所の方とお話しする機会があり少し感じることがあった。

私はこれまでリハ器機を開発するという研究を行ってきた経過から自然と地元のリハメーカーとの産学連携が成立した。
今ではある程度良好な関係が築けている。
しかし、ここに至るまではいろいろと行き違いもあり数々のトラブルも経験した。
それでも何とかやってこられたのは双方にメリットがあり、その時々で無理のない範囲でお互い譲り合ってきたからだと思う。

一方、官との連携であるが、これまで依頼されて講演など行ってきたが、いつも一方的に呼ばれて講演してはいさよならという形であった。
僅かな講演謝金はいただくが、あまりこちらにとってメリットはなかった。
一時期健康作りの講演をするために岡山県下のいろいろな市町村から声をかけられてあちこち回ったことがあったが、ひたすら消耗した。
県北に行くと一日がつぶれた。
そのうちあるところから極めていい加減な講演依頼があり、それにクレームのメールを送ったらそれ以来講演要請はぴたりと止まった。
こちらは多少なりとも地域貢献ができればと思って頑張っているわけで、行政のスケジュール消化のための便利な講師ではないのだ。

昨年行った保健福祉研究所を利用した高梁市老人クラブ健康教室は私にとっては初めての官学連携成功のモデルケースであった。
こちらの負担は大きかったが、貴重な研究のためのデータが数多く得られた。
また、参加者の方にも喜んで頂けた。

しかし、それがうまく行ったからと言って介護予防事業を大学で引き受けて大々的に行ってくれと言われてもそんなことできるはずがない。
冷静になって考えると、これまでお互いに連携したことがないので相手の事情がまるで分からないのだろうと思う。
私が産学連携で試行錯誤してきたようなことを、少しずつ官学連携事業でも試行錯誤して、相手の事情と求めているものを理解することが必要なのだと思う。

外部からの大学に対する理解で一番困るのは、授業がないときは大学の教員は暇なはずだというものである。

例えば今現在は後期試験期間であるが、試験が終われば採点しなければならないし、その結果を学内LANで登録しなければならない。落第者がいれば再試験もしなければならない。
また、この時期は来学期に向けてシラバスを用意しなければならない。
これが学部だけでなく、大学院修士、博士それに通信制の大学院の物も新しく作らなくてはならない。
まだまだ入試は続くので試験問題も作らなくてはならない。
大学院生は卒業のため修士論文・博士論文を提出しているのでそれを審査しなければならない。
後期試験が終わったら、学部生のゼミで卒論のためのデータを取らなければならない。
2月の頭には通信制大学院生のスクーリングがある。
修士1年生はそろそろ研究に着手するので倫理審査のための準備も必要だ。
今年からは人事評価が始まったので評価表を提出しなければならない。
大学の学内の仕事だけでもすぐに思いつくのはこれくらいある。

さらに、研究の仕事では
2月上旬に共同研究報告会のための3ページの抄録を提出
2月下旬アメリカへ出張してORSで学会発表
アメリカ出張中に共同研究報告会が行われるため、代理発表者のために発表スライドと原稿を用意しなければならない
3月上旬に九州延岡の関連校で高梁学園学術研究コンファレンスで発表

さらに、学会の仕事では編集委員をしているので
新規担当論文が複数
2月上旬までに昨年一年間の掲載論文を全て審査して点数を付ける

さらにさらに一番大変な大仕事が、研究所の補助金の締めのために予算をぴったり使い切るという神業を3月には成し遂げなければならない。

こうしたルーチンワークの合間にオリジナルな学術論文を書かねば生き残れない。

要するに寝ても覚めても仕事の山と言うことである。

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CKCトリビア(CKC訓練器としてのPilates Reformer)

2009-01-27 | CKCトリビア
私はこれまで長年努力して理想的なCKC訓練器を開発してきた。
一応の理想型となるものを完成させることもできた。
ところが、いざこれを臨床で普及させようとしても実際にはほとんど不可能である。
余りにもコストがかかりすぎるので、メーカーが商品化してくれないからだ。

そんな折、数年前に、吉備国際大学の卒業生がPilatesのことを教えてくれたことからPilates Reformerの存在を知った。
Pilates は日本ではマットピラティスが主流であるが、海外ではエクイップメント(器具)を使ったピラティスも盛んであるらしい。
今回、研究所を開設するに当たってピラティスの器具を一式アメリカから輸入した。

Reformerを使って解析を行ったところ驚くほど理想的な出力が行われていることが判明した。
詳細はいずれ報告するが、ACLの術後や高齢者の訓練によさそうである。
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CKCトリビア(なぜ揺動刺激+EMSは有効か)

2009-01-25 | CKCトリビア
昨日の済生会病院の先生方との懇親会で、最新のACL術後患者さんの訓練情況を報告して貰ったのだが、既に6人が予定した3ケ月の訓練を終了していた。
この成績を見ると予想をはるかに上回る驚くべき筋力改善が見られる。

荷重立位周期的水平揺動刺激と筋電気刺激の併用は何故有効なのだろうか。

ひとつは弱い電気刺激でも速筋が刺激されるという逆リクルート特性(逆サイズの原理)が考えられる。
電気刺激は太い神経をまず刺激するので太い神経が支配する速筋が直ちに刺激されるのである。

特に今回は3Hzの揺動刺激に合わせて3Hzという超低周波で刺激されていることも良かったのではないかと考える。
超低周波では1回1回の電気刺激が完全な筋収縮を引き出すのである。

次に、揺動刺激が大腿の筋群を引き延ばしたところに電気刺激による収縮が起こるので、プライオメトリックな筋収縮が誘発されているのではないかと考えている。
揺動刺激で素早いエキセントリックな筋活動が起こり、その直後に電気刺激でコンセントリックな筋収縮が行われるといわゆるストレッチ・ショートニング・サイクルと呼ばれる現象が起こっているのではないかと予想する。

ストレッチ・ショートニング・サイクルにおいては大きな力が発生するとされている。
要するに、まずしゃがみ込んでエキセントリックな筋収縮をさせたほうが高くジャンプできるという現象である。
この特殊なストレッチ・ショートニング・サイクルが機能して、自覚的にはただ立っているだけにもかかわらず、驚くような筋力増強効果が得られたのではないだろうか。
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県立広島大学大学院非常勤講師

2009-01-24 | 大学
年に一度の県立広島大学大学院非常勤講師として集中講義および研究データ計測を行ってきた。
これも事情があって今年度で終了である。
介護移乗動作の3次元動作解析および動作筋電図の計測を行ってきたがそれも今回で終了である。
少し寂しいようなほっとしたような複雑な感覚である。

三原から帰ってきて、すぐに今度は岡山済生会病院のスタッフと共に研究の懇親会が岡山駅のすぐ近くで行われた。

大学の関係者には、臨床研究はこのように近隣の大学や病院と密接に連携しなければやっていけないものであることを是非理解していただきたいと痛切に思う。
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統計ソフトの紹介

2009-01-21 | 研究・講演
御多分に漏れず私も統計では苦労している。
そんななか、岡山大学医学部同期生のメーリングリストで自分で統計ソフトを作ってしまったという案内が回ってきた。
ご本人の承諾は得ていないが、周りの方に紹介して欲しいとのことなので要点を転載させていただく。
この同期生は宮木先生で岡山市のある病院で院長をされており、臨床は婦人科腹腔鏡手術を、研究は抗癌剤の薬物動態解析や統計解析を、趣味はMacと言う生活をされているのだそうだ。
同期生には優秀な人が多く、時々こういった活躍を耳にしては、うらやましくもあり、同期生として少し誇らしくも思う。

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突然ですがiPhoneはお持ちでしょうか?世界では近いうちに1000万台、もしかすると今年末には4500万台に達するという観測もあるようです。
さて、このたびiPhone/iPod touch用の自作ソフト(廉価です)がAppleの審査を通って採用されましたのでお知らせいたします。
1/17より世界各国でダウンロードができるようになりました。(iPhoneの設定で言語環境をEnglishにすれば、英語で表示されます)
3つの統計解析ソフトと2つの小作品の計5種類です。
iPhoneのApp Storeの検索ウィンドウで、あるいはパソコンでiTunesを立ち上げiTunes Storeで検索ウィンドウで、
「miyagi」 と入力していただければ以下のソフトに簡単に到達できます。

知人の先生方にもよろしくお伝えいただければ幸甚です。
簡単ながら図入りの説明はこちらに掲載しています。
http://homepage.mac.com/ymiyagi/WhatIHaveDone/softwares_iPhone.htm

----------記--------------

I. 統計解析ソフト StaStat
いくつかの統計パッケージからできています。研究者、医師、学生
1) 2x2分割表に対して、自動判別にてカイ二乗検定(Yate's補正含む)またはFisher検定、
2) 2群の比率を比較する比率検定、
3) 2群の分散を比較する分散検定、
4) 効果判定比較をendpointとする臨床研究で必要な症例数計算、
5) 生存率比較をendpointとする臨床研究で必要な症例数計算、
6) 2人の検者の一致率を見るカッパ統計量計算、
補)体表面積とBMI
必要とする研究者はかなりいるはず。

II. Bartlett test
文字通り、Bartlett testをします。
Bartlett Testとは、3群以上の平均値を比較する前に行うべき統計手法です。群間の分散(=標準偏差の2乗)が均一かどうかを調べます。もし統計学的に有意 (P value <0.05)であれば、各群の分散には差があることを意味しますから、平均値を比較するにはKruskal-Wallis test または Friedman test を用いることが望ましいことになります。
一方で有意でなければ、各群の分散には差があるとはいえないことになりますから、平均値を比較するには一元配置分散分析 one-way analysis of variance (one-way ANOVA) test が望ましいことになります。
これを単独で使えるソフトは滅多にないはず。

III. ChiSquare
文字通り、カイ二乗検定をします。
2 x n 分割表の検定を、Yates補正は自動的に行いながら、計算します。
2 x 2 分割表では、Fisherテストも行います。
実に利用頻度は高いはず。

IV. realJapan
リアルタイムの時間経過の中で、我々の日常生活(生、死、出産など)や、国家の歳入歳出(つまりは我々の税金)がどのように変化していくのかを見ることで、生きていることを深く考えさせされます。ぼーっと眺めるだけで現実的な瞑想に入れそうかも。
カテゴリーは lifestyle にしました。

V. realUniverse
リアルタイムの時間経過の中で、光が光速で突き進む宇宙で、その中で地球と太陽と銀河系の中にいる私達は、実は今この一瞬もまた瞬間瞬間の積み重ねで生きていることを考えさせてくれます。ぼーっと眺めるだけで現実的な瞑想に入れるかも。
カテゴリーは education にしました。

以上です。

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講演のフィードバック

2009-01-20 | 研究・講演
以下松尾君からのメールである。

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先日はお忙しい中、大阪まで来ていただき3時間という長い講演ありがとうございま
した。内容がすごい進化していることに驚きました。受講者からの声も非常に興味深
く勉強になったという声でいっぱいです。中でも整形外科医がリハの研究をあそこま
でやっていることに皆さん感心していました。私個人は先生の今までの歴史が感じら
れ、非常にうれしかったです。とても懐かしい時間を過ごせました。これで吉備国の
名が広まって嬉しいです。
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単なる社交辞令でなく、参加してくれた人が多少なりとも役に立ったと思ってくれたらとても嬉しいのだが・・・
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大阪府理学療法士会研修会講演

2009-01-18 | 研究・講演
ついに講演会に行ってきた。
卒業生の松尾君が大阪駅まで迎えに来てくれて細かな世話をしてくれた。
会場の新梅田研修センターの研修室は出席者であふれかえって中に入りきれずに後ろの入り口のドア越しに聴いている人も出る始末で大盛況であった。参加者は200人は超すとのことだった。

今回指定されたテーマは「膝関節疾患に対するCKCエクササイズ」で、ブログで記述してきたとおり、前半はテーマ通りの内容で話し、後半は「CKCトリビア」と題して私の研究内容からどうでも良い知識だけれどもちょっとおもしろくてためになる話を盛り込んだ。
実はそのスライドがほぼ完成したのが16日(金曜日)で、研究室のデスクトップでいつものように30インチ2枚の広大なスクリーンにデータを展開して一気に仕上げた。
それを大急ぎでUSBメモリに移して、講演用のPowerBookに転送し、昨日土曜日にデータをチェックするとなかなかパワーポイントが立ち上がらないのである。
おそらくデータ容量が大きすぎるのと動画を多用しすぎたので1GBのメモリでは貧弱すぎたのだと思う。
何とか起動したデータを2分割して2つのファイルに保存し直して、今日の本番に臨んだ。

現在のPowerBook G4を購入して5年が経過するが、これまで処理能力が不足して困ったことはなかった。
今回は3時間にも及ぶ講演で、しかも張り切りすぎていろいろなデータを盛り込みすぎたのが良くなかったのかもしれない。
最初からトラブルが心配だったが、やはり途中でパワーポイントが2度ばかり強制終了してしまった。
講演でトラブルが発生したのはこれが初めてである。
そろそろパソコンの更新をしないと、心配で講演どころではない。
それでも、ファイルを2分割していたのが幸いして、今回は何とか最後まで講演を行うことができた。
やれやれである。

講演後は役員の方達数人と大阪駅近辺のレストランで会食し、それから新幹線で岡山に帰ってきた。
実は、私の自宅からは大阪へ行くのも高梁の吉備国際大学へ行くのもJRでは時間的にはそれほど違いはない。
むしろ新幹線の方が乗り心地が良くて大阪へ行く方が快適なくらいだ。

講演の内容はできるだけ聴衆に役立つような話を心がけたつもりなのだが、独りよがりでおもしろくなかったかもしれない。
なかなか聴いている人の本音が聞けないのが残念である。
ある程度本音のフィードバックがある方が次の講演を組み立てるのに参考になるのだが。
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森谷敏夫教授講演会

2009-01-17 | 研究・講演
第249回岡山県医師会整形外科部会研修会
岡山プラザホテル
運動弱者への筋電気刺激トレーニングの開発と展望
森谷 敏夫 
京都大学大学院 人間・環境学研究科 教授

昨年の運動器リハ学会の講演が好評で、岡山でも森谷先生の講演会が行われた。
講演後、懇親会でしばらくお話をさせていただいた。
数年前に、森谷先生とはある研究会の懇親会でいろいろお話を聞かせていただいたことがある、
豪快で楽しい先生である。

電気刺激の応用に関しては20年来の経験を持ち、お話は最高におもしろく、とてもかなわないと思う。

明日は、私が大阪で講演を行うのだが、森谷先生の講演を聴くととてもかなわないと思ってしまう。
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CKCトリビア(CKC meets EMS)

2009-01-16 | CKCトリビア
EMSというのは筋電気刺激のことである。

今日はたまたま最初で最後の川崎医療福祉大学での非常勤講師の日であった。
なぜ最初で最後なのかというのにはちょっとした事情がある。
もともとは川崎医療短期大学医用工学科(治療機器学)非常勤講師の依頼があり、講義テーマが「治療的電気刺激」であった。
前任の非常勤講師の先生が都合で辞めるときに私を推薦したのがきっかけである。
それで、電気刺激のことを教えるのも自分の勉強になりそうだと思い引き受けて、平成14年度から年に1コマだけ短大へ教えに行っていた。
ところが、昨年から短大の医用工学科が閉鎖されることになり、代わりに隣の川崎医療福祉大学に臨床工学科ができたというわけである。
これまで7年に渡って電気刺激を教えてきたということになるが、今度はこちらの事情で来年度からの講義はお断りすることになってしまった。

そのような事情はさておき、電気刺激には昔から興味があった。
私の古くからの研究仲間(そう言っては先方に失礼かもしれないが)の労災リハ工学センターの元田英一先生は脊髄損傷患者にEMSを行って効果を上げていたし、久留米大学医学部の志波直人教授は電気刺激した拮抗筋の負荷を利用して無重力環境である宇宙での筋トレの研究を行っていたからである。

川崎医療短期大学での非常勤講師は年1回の授業のためにいろいろ勉強してたくさんのスライドを用意し、試験問題も作らなくてはならないという私にとっては見返りの少ない仕事であったが、これが現在の研究に発展してきた。
人間困るとそれにつぶされてしまう人とその困ったことを逆に何かに利用する人がいる。
私は明らかに後者であり、せっかく苦労しているのだから電気刺激の勉強したことを何かに活用しようとした。

無理矢理にCKCとEMSをくっつけて科研費に応募した。
ついでに基礎の培養神経細胞を電気刺激する内容も付け加えておいた。共同研究者のK先生の研究内容を確保するためである。
そしたら何とその課題が採択されたのだ。
さらに、その課題の次に申請した課題も採択された。
現在2匹目のドジョウならぬ3匹目のドジョウを狙ってさらに次の課題を応募しているところである。
私にとってはいまやCKCとEMSの組み合わせは非常に重要な研究になってしまった。

EMSを利用してCKCにおける個々の筋肉の作用を解析しているという話は前回記述したが、現在最も力を入れているのは「荷重立位周期的水平揺動刺激と筋電気刺激による筋力増強法の研究」である。
健常人での研究結果は良好で、現在はACL再建術後患者を対象として臨床研究を行っている。
次のステップは高齢虚弱者である。
電気刺激には研究すればするほど魅力を感じており、運動したくてもできない人、運動嫌いな人には最適な治療法ではないかと考えている。
電気刺激にはどうも単純に筋収縮を引き起こすという遠心性の効果だけでなく、従来よく知られている痙性を抑制するという求心性の効果に加えて、脊髄内あるいは脳内の神経再生を促進する効果もあるのではないかと考えられ始めている(Neuromodulation)。
CKCとEMSを併用すると言うところが私のオリジナルである。


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CKCトリビア(ハムストリングは膝伸筋)

2009-01-15 | CKCトリビア
結論から先に書くと、CKCにおけるハムストリングは膝を伸展し、地面を後方へしっかりと蹴る役割を果たしているのではないかと考えている。

Blaimontらは、膝屈曲60度までの範囲ではハムストリングのレバーアームは股関節が膝関節より大きいため、ハムストリングの収縮時によって膝関節屈曲よりも股関節伸展の方が勝り、結果として膝伸展が起こる、すなわちCKCではハムストリングは膝伸展筋として作用すると推論した。

我々はCKCのような多数の筋群が同時に働く運動で、特定の筋肉がどのような作用を果たしているかを調べるために、筋電気刺激を応用している。
つまり、CKCの出力を計測できる環境下で特定の筋肉に筋電気刺激を与えてその作用を見るのである。
これまでのところ、股関節の角度にかかわらず、膝屈曲60度まではBlaimontらが記載しているように膝伸展作用が見られた。
さらに、ハムストリングの作用で膝伸展作用が起こるときは、踵方向に出力することが分かっている。

従来短距離選手が速く走るのにハムストリングはすばやく膝を屈曲して腿をかき上げるのに重要などと言うことが言われていたが、私はそうではなくて下肢全体で地面を蹴ったとき、ハムストリングが発達していればいるほど後方へ蹴るのに有利なのだと思う。
後方へ蹴る力が強ければそれだけ前方への推進力が生じるので早く走れるのである。
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CKCトリビア(CKCサイレント)

2009-01-14 | CKCトリビア
CKCにおける二関節筋の抑制現象については早くから気付いていたが、実際に表面筋電図を計測すると弱いながらも筋放電は計測される。
一方、最適化手法を用いたコンピューターシミュレーションでは二関節筋の活動はほとんどないのが理想という結果が計算される。力学上は筋収縮の総和を最小にしようとすると二関節筋は活動しないのが最も理想的なのだ。

あるとき、ふと思いついて表面筋電図を計測する2つの電極の間にファインワイヤー電極を刺入してみた。
驚いたことに、表面電極の計測は従来通り弱い収縮を示しているが、ファインワイヤー電極の方は完全にサイレントであったのである。
私はこの現象に「CKCサイレント」というネーミングをした。
1人や2人では偶然かもしれないと思ったので10人ほど計測してみたが全く同じ結果であった。
静止して両下肢で体重を支持する程度の荷重レベルでは広筋群は活動するが大腿直筋は電気的にサイレントであるということである。しかし、表面筋電図では強力に収縮する広筋群のクロストークが混入するため、このCKCサイレント現象はこれまで知られていなかったものと思われる。

ただし、誤解されると困るので付け加えておくが、「CKCサイレント」は大腿直筋において、両脚で自分の体重を等尺性の静止した条件で下肢を踏ん張って支えている時に認められる現象である。
最大筋力でレッグプレスを行ったり、動きのあるときには弱い出力でも二関節筋は活発に活動する。

二関節筋の大きな作用は四肢末端の出力の安定化であり、静止して安定した状態ではサイレントであっても、少しでも不安定になる外乱が加われば二関節筋は素早く反応する。

しかし、研究すればするほど人の体の見事な仕組みに感嘆するばかりである。

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CKCトリビア(二関節筋の抑制)

2009-01-13 | CKCトリビア
CKCの研究をやっていると、誰でも気付くのが二関節筋の抑制である。
大腿直筋はCKCでは著明に抑制される。ハムストリングも同様である。

なぜ、二関節筋は抑制されるのだろうか。
17世紀にBorelliは原始的なシミュレーションを行って、同じ荷重を支えても、二関節筋があるモデルではないモデルよりも筋張力の合計はかなり大きくなることを述べている。
当時、神は無意味なものは作るはずはないと考えられていたらしく、なぜこのような無駄な筋肉が人間の体にあるのか不可解だとした(Paradoxical Statement)。

なぜ二関節筋があると無駄な力が必要となるのか。
例えば、大腿直筋は膝伸展に働き重量物を支える役割を果たすが、股関節では屈曲作用が生じるので重量物を支えるにはこの作用を打ち消すために股関節伸筋の大殿筋などが余計に活動しなくてはならなくなる。

おそらくは、二関節筋のこのような不合理な作用を打ち消すために、CKCでは二関節筋が神経生理学的に抑制されると考えられている。
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筋トレスパッツ

2009-01-12 | CKCトリビア
シーティングベルトは弾力性がないので、エクササイズ用としては弾力のあるものが欲しくなった。
さらに、着衣のようにはき込めばいちいち装着する手間もなく、一日中身につけて日常生活の中で筋トレができるのではないかと考えた。
それで試作したのが写真のような筋トレスパッツである。
大腿直筋に相当する部分に弾力を持たせた。
着衣の場合、あまり弾性がきついとはいているのが苦痛になり、緩すぎると運動にならないというジレンマがあり、これに関してはまだまだ改良が必要だと考えている。
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CKCトリビア(シーティングベルトエクササイズ)

2009-01-12 | CKCトリビア
シーティングベルトが完成してからすぐに気づいたのだが、このベルトは突っ張ると下肢の筋トレにも使えることが分かった。
メカニズム的にベルトを突っ張ると股関節伸展の筋力が必要であり、ハムストリングの強い収縮を引き出せるのである。
若年者の場合、少し練習すると椅子に座った姿勢から殿筋とハムストリングをうまく収縮させながら立ち上がり、中腰をとるという運動が可能であった。
しかし、実際に運動が必要な高齢者には難しいので、写真に示すような手すりを持ってお尻を少し浮かせるだけという運動を考案した。
これだと実施は容易で、ハムストリングをはじめ下肢の筋活動が全体的に高まるのである。

もう一つ考えているのは、座ったままでシーティングベルトを引っかけた足を突っ張るという運動である。
これを使用すれば入浴エクササイズのようなCKC運動が椅子に座ったままで可能である。
これからは、入浴エクササイズとあわせて、このシーティングベルトエクササイズも普及できないだろうかなどと考えている。
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