河村顕治研究室

健康寿命を延伸するリハビリテーション先端科学研究に取り組む研究室

私と歩行分析 7

2008-01-30 | 私と歩行分析
絶不調の3次元動作解析システム・エリートと格闘を始めてしばらくして、やはり最新の知識を身につけなければと思い、第2回と第4回歩行分析実習セミナーに参加した。平成7年と平成9年のことである。

この時、現在の臨床歩行分析研究会会長の畠中先生やニューズレター編集委員長の金承革先生と一緒になった。
現在の運営委員の多くのメンバーがこの頃参加していたように思う。

この時の感想を求められて返信した内容が残っていた。

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江原先生、先日はどうもありがとうございました。御依頼のありました感想文を送らせて頂きます。

第4回歩行分析実習セミナーに参加して
 今回、国立リハセンターで行われた第4回歩行分析実習セミナーに参加させていただきました。そもそも私が本会に入会したきっかけは今からもう10年近く前に吉備高原医療リハビリテーションセンターで坂道歩行の解析を行っていたからであり、1989年に第2回歩行分析セミナーに参加しております。その時のテーマも今回と同じ歩行分析における関節モーメントでした。難しい講義でしたが歩行分析の将来の可能性を感じたことを覚えています。吉備国際大学で将来PTになる学生にエリートなどを使って身体運動学実習を指導するようになり、昨年8月補装具研究所で行われた第2回歩行分析実習セミナーに久しぶりに参加致しました。今回は昨年に引き続き2回目の実習セミナー参加です。
 日程は5日間で初日は講義とグループ分け、第2日目に実際のデータ収集、その後グループ毎にデータ処理を行い最終日にプレゼンテーションを行うというのが大まかなスケジュールでした。私は椅子からの立ち上がり動作の解析を行うグループに入れていただきました。もともとスクワット時の下肢の筋活動に興味があったからです。データ収集は国立リハセンターの機器を使用させて頂いたのですが、床反力計が何枚もあって椅子からの床反力と右足左足の床反力がそれぞれ別個に計測できました。計測自体はVICONを使用しましたが、このような恵まれた環境は日本では他にはないのではないでしょうか。EXCELを使用してのデータ処理、グラフ化の作業も順調に進み、毎晩9時過ぎまでグループ全員で頑張り、最終日に無事プレゼンを終えることができました。
 最近のコンピューターの発達には目を見はるものがあり、歩行分析機器も日新月歩です。関節モーメントの計算手法は昔からありましたが、実際の計算は速く簡単に行えるようになってきたことが今回の実習で理解できました。以前、床反力のみ計測していた頃は臨床的有用性はあまりないように思えましたが、関節モーメントは人間がどのように動いているのかが実によくわかるので臨床的価値は大きいと思います。実は私は現職に就く前に1年間アメリカの整形外科バイオメカニクスの研究室に留学していたのですが、約半年の間、研究のかたわら歩行分析のお手伝いをしていました。一番驚いたのは、アメリカでは歩行分析が医療行為として行われていることであり、紹介された患者一人一人に筋電図を含む歩行分析を行って詳細なレポートを作成し、大体1500ドルくらいの料金を請求していました。もちろん保険も適応になります。歩行分析がシステムとして完成しているのです。一方日本ではほとんどが研究レベルでの歩行分析であり、設備の面でもマンパワーの面でも十分な環境にはないように思います。例えVICONのような一流の機械があったとしてもそれを操作する人には十分な時間がないのが現状ではないでしょうか。臨床や教育の片手間では十分な仕事はできません。今回この実習セミナーに参加された方々も私も含めてせっかく技術を習得しても現場に帰ると雑事に振り回されてなかなかまとまった仕事はできないのではないでしょか。結局高価な機器もそれを使いこなしてこそ生きてくるという平凡な事を痛切に感じている今日この頃です。
 最後に、この良心的でハイレベルの実習セミナーをボランティアで支えて下さった江原先生をはじめとするスタッフの皆様に心より感謝いたします。
吉備国際大学保健科学部 助教授 河村顕治
コメント
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