マダムようの映画日記

毎日せっせと映画を見ているので、日記形式で記録していきたいと思います。ネタバレありです。コメントは事前承認が必要です。

サムサッカー

2006-09-28 11:24:58 | 映画ー劇場鑑賞
2005年 アメリカ マイク・ミルズ監督 ルー・プッチ 、ティルダ・スウィントン 、ヴィンセント・ドノフリオ 、ヴィンス・ヴォーン 、キアヌ・リーヴス

【解説】
親指をしゃぶる癖を持つ17歳の少年が、将来の夢を抱きつつも、自分自身を模索していくヒューマンドラマ。監督はX-girlのアートワークやNIKE、GAPなどのTVコマーシャルでも知られる映像クリエイター、マイク・ミルズ。若手俳優ルー・テイラー・プッチが主人公の少年を演じる。風変わりな歯科医役のキアヌ・リーヴス、少年の母親役ティルダ・スウィントンら、共演陣が豪華。少年の心の成長を細やかにとらえたみずみずしいタッチも出色。

【あらすじ】
オレゴン州の郊外住宅地に住むジャスティン(ルー・テイラー・プッチ)は、親指を吸う癖を治せず悩んでいた。そんな彼のことを案じた風変わりな歯科医ペリー(キアヌ・リーヴス)は、催眠術で彼の癖を治そうとする。しかし、事態はますます悪化。挙動不審に陥ったジャスティンは注意欠陥多動性障害と診断され、抗うつ剤を服用し始める。(yahoo映画)

【感想】
この作品のキーワードは依存です。
現代というのは、何かに依存しないと生きにくいのかもしれません。
ジャスティンは普通の高校生ですが、親指を吸う癖があります。
大人になっても爪を噛む癖がある人もいますものね。

そういうのって、やはり漠然とした不安の解消方法だったり、自信のなさへの代償だったり。
孤独を癒し、現実から逃避する。

ジャスティンの父にも母にも多かれ少なかれ、依存しているものがあるようです。
心当たりがあるでしょう?
どきっ、私もジョニー・デップ依存症だ。

TVで活躍している俳優さんは、薬物依存で母の勤める病院に入院していました。
そうなると、ことは重大です。

ジャスティンも精神病の病名をつけられ、薬を処方されて危ないところでした。

では、どうやって自分と折り合いをつけて生きて行くか。

作品のあちこちで、キアヌが扮する怪しい歯科医師が登場して、もっともらしい人生論を述べます。
それだって、ちっとも当てにはなりません。
「答えのない人生を生き抜く力」をジャスティンは得たのでしょうか。

ジヤスティンの新しい一歩を予感させる、ラストはなかなか素敵でした。

太陽

2006-09-28 11:04:50 | 映画ー劇場鑑賞
2005年 ロシア/イタリア/フランス/スイス
アレクサンドル・ソクーロフ監督 イッセー尾形 、ロバート・ドーソン 、佐野史郎 、桃井かおり 、つじしんめい

【解説】
ロシアの鬼才アレクサンドル・ソクーロフが、20世紀の権力者を取り上げた『モレク神』『牡牛座』に続き、昭和天皇を主人公にした問題作。神と崇められ、戦争に翻ろうされた天皇が、終戦から一転して「人間宣言」へ至る苦悩と孤独を詩的なタッチで描く。昭和天皇役には映画、舞台以外にも多方面で活躍するイッセー尾形がふんし、桃井かおり、佐野史郎が共演。天皇ヒロヒトの人間的側面に迫る本作は、第55回ベルリン国際映画祭など世界各地で絶賛された。

【あらすじ】
1945年8月、待避壕(敵の砲弾などを避けるために掘った穴)もしくは生物研究所で暮らしていた昭和天皇ヒロヒト(イッセー尾形)は、自分を神と崇める側近たちに孤独を覚えていた。唯一の安らぎは生物標本を眺める時だけで、戦争終結に苦悩する天皇は日本が焦土と化す悪夢にうなされる。そして、連合国占領軍総司令官マッカーサー(ロバート・ドーソン)との会談の日が訪れる。(yahoo映画)

【感想】
日本では上映できないと言われていた映画ですが、反響が大きく、全国でも上映が広がっているようです。
なぜ、日本で上映できないと言われたのか、興味を持って見に行きました。

見終わって思ったことは、現人神から人間に戻った天皇の安堵感が表れていたことが、日本人には受け入れられないと考えられたのかな、ということでした。
タイトル「太陽」、私の解釈は、日本人にとって天皇は「太陽」だといっているのだと思いました。
戦後、天皇が戦争責任を問われず国民の前に現れたことが、絶望にうちひしがれていた国民に、夜明けを実感させたということだと思いました。

この作品に描かれたことが、歴史的事実なのか、ファンタジーなのか、私にはわからないことです。
天皇ヒロヒトも似ていると言えば似ているけど、これもスタッフキャストのイメージ作りのなせる技。

全編を通じて、天皇の孤独と絶望と悲しみがよく表現されているなあ、と感心しました。

海外の人々はこの作品を見て、どう思ったのでしょうか。
日本の、戦争を知っている世代の人は、もっとリアルに感じるのでしょうか。
私には、深刻な作品だけど、ユーモアやファンタジーが感じられました。
ただ空襲のシーンはやはり辛かった。
夢だし、逃げ惑う人や苦しむ人が出て来るわけではないのに、胸が苦しくなりました。

イッセー尾形はすごい。演技賞ものです。
彼なくしては成り立たない映画だと思いました。
ラストの桃井かおりとの絡みも、人間的で素敵でした。

英語で言うと、天皇はエンペラーだし、皇居はパレスなのですね。
天皇が日本語で話す時より、英語で話す時の方が意志をはっきり伝えられているように思いました。
「私は真珠湾攻撃の命令はしていない!」と言い切っていました。

悲惨な戦争をもう二度と起こさないために、私たちに何ができるのか。
こういう検証を積み重ねることも大切なことなのでしょう。
天皇と戦争、その重いテーマにロシア人が取り組んだということも興味深いことです。