マダムようの映画日記

毎日せっせと映画を見ているので、日記形式で記録していきたいと思います。ネタバレありです。コメントは事前承認が必要です。

輝ける青春

2009-02-17 10:29:07 | 映画ーDVD
ー輝ける青春ーLA MEGLIO GIOVENTU/THE BEST OF YOUTH
2003年 イタリア
マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ監督 ルイジ・ロ・カーショ(ニコラ・カラーティ)アレッシオ・ボーニ(マッテオ・カラーティ)アドリアーナ・アスティ(アドリアーナ・カラーティ)ソニア・ベルガマスコ(ジュリア・モンファルコ)ファブリツィオ・ギフーニ(カルロ・トンマージ)マヤ・サンサ(ミレッラ・ウターノ)ヴァレンティーナ・カルネルッティ(フランチェスカ・カラーティ)ジャスミン・トリンカ(ジョルジア)アンドレア・ティドナ(アンジェロ・カラーティ)リディア・ヴィターレ(ジョバンナ・カラーティ)クラウディオ・ジョエ(ヴィターレ・ミカーヴィ)リッカルド・スカマルチョ(アンドレア・ウターノ)ジョヴァンニ・シフォーニ(ベルト)カミッラ・フィリッピ(サラ・カラーティ)

【解説】
マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ監督の、第56回カンヌ国際映画祭ある視点部門グランプリ受賞作。兄弟とその家族が歩んだ1960年代から21世紀の幕開けまでの37年間を描いた家族の年代記。6時間6分という上映時間は、長編小説を読み解くよろこびにも似た贅沢(ぜいたく)をたっぷりと味あわせてくれる。(シネマトゥデイ)

【あらすじ】
希望を胸に人生を切り開く兄・ニコラ(ルイジ・ロ・カーショ)。才能はあるのに人生とうまく向き合うことができない弟・マッテオ(アレッシオ・ボーニ)。ローマに暮らすカラーティ家のこの兄弟は、イタリア社会を揺るがしたさまざまな事件を目撃する。(シネマトゥデイ)

【感想】
「サルバートルの朝」を見た後、この映画の存在を知りました。
サルバトールと同時代に青春を過ごした、イタリアの兄弟の物語、なんと、37年間にも及び、映画は6時間を越える長編です。

でも、まったくだれることなく、最後まで見せてくれました。
久々に、深い感動を覚えました。
真面目な映画です。
その骨太の取り組み方は、やはりイタリア映画の名作「ニュー・シネマ・パラダイス」を思い出しました。
また、イタリアの各都市をふんだんに見せてくれるし、映像も美しい。

「チェ」の2部作を見た後でもあり、60年代の若者の政治の季節の背中くらいは見た者として、この映画は、とても興味深いものでした。
あの時代の若者の気分や、気持ちが素直に入ってくる映画でした。

ローマに住むカラーティ一家。
商売人のお父さんと、教師のお母さんアドリアーナ(アドリアーナ・アスティ)。
検事になる長女ジョバンナ(リディア・ヴィターレ)、精神科医になる長男ニコラ(ルイジ・ロ・カーショ)、次男のマッテオ(アレッシオ・ボーニ)、末っ子のフランチェスカ(ヴァレンティーナ・カルネルッティ)です。

マッテオは、すごく優秀な青年ですが、読書家で、物事を深く考える繊細な若者でした。
ニコラとマッテオは、ニコラの友達カルロとベルトと一緒に、テストが終わったら世界を放浪する旅に出ることを計画していました。

☆ネタバレ
マッテオが病人を世話するように頼まれた精神病院で、ジョルジア(ジャスミン・トリンカ)という自閉症の少女の世話をすることになりました。
ジョルジアは心を開かず、マッテオを困らせますが、ある時、ジョルジアが脳に電気ショックを与えられておとなしくさせられている姿を見て、衝動的に彼女を連れ出してしまいます。

ニコラに打ち明け、二人はジョルジアの故郷に向かい、父親にこの事実を伝えようとします。
しかし、訪ねた村に父親はおらず、3人は村人の納屋の干し草の上で眠ります。
重い自閉症で心を閉ざし、会話もできないジョルジアですが、優しいニコラは一生懸命なだめて、父親を探し当てました。
でも、父親には新しい家族があり、継母はジョルジアを嫌っていました。
ようやく、二人に打ち解けてきたジョルジアですが、病院しか行くところがないとわかり、途方に暮れている時、ジョルジアは警察に保護され、二人はなすすべもなく見送りました。

自分に力がないことを思い知り、マッテオは俗社会と接点を断つように、軍隊に入ってしまいます。

ニコラは、ノース岬を目指して一人で世界を放浪し、「全ては美しい」と感動を得ます。
ノース岬の手前、ノルウエーで、フィレンツェの大水害を知り、急遽帰国し、ボランティアで復興に参加しました。

そこへ軍の命令で復興に関わっていたマッテオと再会。
また、伴侶となるジュリアと運命的に出会います。

ニコラはトリノで精神科医として働き始め、サラが生まれました。

ジョルジアが、劣悪な精神病院で発見され、ニコラは自分の患者として迎えます。
マッテオも会いにきますが、ジョルジアはマッテオに答えることはありませんでした。

ジュリアは、「赤い旅団」のメンバーとなり、家を出て行ってしまいました。

マッテオは、家族とも連絡を絶ち、機動隊から警察官へと変わっていきますが、ジョルジアに対する罪の意識を持ち続けているマッテオは、ますますストイックにかたくなな人間になって、警察組織の中でも浮いた存在です。
孤立し、孤独感ばかりが強くなっていきます。

シチリア島で、カメラマンのミレッラ(マヤ・サンサ)に出会い、思わず「ニコラ」と名乗ってしまいました。

二人はローマで再会しますが、マッテオは自分を偽り続け、ミレッラへのつれない仕打ちの上、ミレッラへの深い思いも自ら断ち切って、とうとう自殺してしまいました。
母や家族に挨拶をして、アパートに戻り、新年の花火を見ながら、「おめでとう」とつぶやいて…。

ニコラは、サラに会いたがっているジュリアを罠にかけ、警察に逮捕させました。
ニコラなりの苦渋の決断でした。
ジュリアに殺人者にも殺される側にもなってもらいたくないという思いからでしたが、その思いはジュリアに理解される日はありませんでした。

後編の後半は、主人公たちの結末が語られていきます。
題名の様にベタな感じだけど、登場人物への愛情がこもっていて、とても温かい気持ちになりました。

ニコラは一人娘のサラの幸せだけを望む父となり、恋愛感情にも鍵をかけて、仕事に打ち込んでいました。
末娘のフランチェスカはニコラの親友のカルロと結婚して、3人の子供をもうけます。

サラは、やがてそのフランチェスカの家から大学に通い、恋人ができ、やがて結婚するでしょう。
出所したジュリアにも会いに行き、二人は許し合いました。

ジョルジアも病院を退院し、共同施設で生活できるまでに回復しました。

とてもよかったことは、ミレッラがマッテオの子供をシチリアで産み育てていたことでした。
アドリアーナは晩年、この美しい島で、ミレッラと孫のアンドレアと過ごしたのでした。

ニコラとミレッラは、とても臆病になっていましたが、急ぐことなくゆっくり愛と信頼を育み、亡きマッテオの後押しもあって、第二の人生を歩む勇気も出たようです。
この二人の幸せを祈らずにはいられない気持ちです。

成長したアンドレアは伯父や父が夢見てが行けなかったノース岬を、恋人とともに訪れます。
そして、伯父が感じた「全てが美しい」という言葉を実感しするのでした。

私も、ニコラとマッテオを分けたものは、その旅の経験があるかないかだったと思いました。

ニコラはあの旅で、人生にはいろいろあるけど、本質は美しい物だと確信したと思うのです。
だから、辛い出来事が怒濤のように襲ってきても、きちんと受け止め、判断し、前に進むことができたんだと思いました。

マッテオ役のアレッシオ・ボーニが、すごくきれいな人で、そのブルーの瞳に引き込まれるような魅力的な人でした。
フランチェスカの結婚式で、フランチェスカが友達に自慢しますが、ほんと、こんな兄弟がいたら自慢してしまうでしょう。

お母さんにとっても、成績のいい端正な容姿は、自慢の息子だったでしょう。
でも、心がきれいすぎる人は、この世はあまりに生きにくかったのでしょう。

母は、自分を責め、反省の中で暮らしたこともあったでしょう。
腹立たしかったこともあったでしよう。
悔しいと思ったこともあったでしょう。
息子に自殺されたお母さん、すごく哀れでした。

輝ける青春から37年の歳月、いろんなことがあるけど、悲しいこともいっぱいあるけど、長い様で短い人生。
うれしいことも、楽しいことも、いい事だってある。
生きていてこその人生、映画を見終わって、しみじみとそう思いました。

トウキョウソナタ

2009-02-14 15:45:40 | 映画ー劇場鑑賞
ートウキョウソナター
2008年  日本/オランダ/香港
監督=黒田清 キャスト=香川照之(佐々木竜平)小泉今日子(佐々木恵)小柳友(佐々木貴)井之脇海(佐々木健二)井川遥(金子先生)津田寛治(黒須)児嶋一哉(小林先生)役所広司(泥棒)

【解説】
東京に暮らす、ごく普通の家族がたどる崩壊から再生までの道のりを、家族のきずなをテーマに見つめ直した人間ドラマ。『回路』などで知られる黒沢清監督が、累積したうそや疑心暗鬼などにより、ありふれた家庭を壊していくさまを現代社会を映す鏡として描く。リストラを家族に言えない主人公を香川照之が好演するほか、小泉今日子、役所広司ら実力派が脇を固める。日本が直面している社会問題を、独特の緊迫感でサスペンスフルに描く黒沢の演出に注目。(シネマトゥデイ)

【あらすじ】
仕事に没頭する毎日を送っている平凡なサラリーマンの佐々木竜平(香川照之)は、ある日突然、長年勤め上げた会社からリストラを宣告されてしまう。一方、世の中に対して懐疑的な心を持っている長男・貴(小柳友)は家族から距離を置くようになり、一家のまとめ役だったはずの妻・恵(小泉今日子)にも異変が起き始めていた。(シネマトゥデイ)

【感想】
従妹に誘ってもらって、郊外の名画座まで見に行きました。
宝塚にあるピピアという映画館。
個性を出した作品のチョイスで存在感を示しています。

この映画、「東京」とはパラレルワールドの「トウキョウ」のある家族の物語と思ってみると、なかなか面白かったです。

リストラされたお父さん(香川照之)、運転免許を取ったお母さん(小泉今日子)、個人の幸せより、日本人みんなの幸せのためにと、アメリカの軍隊に入隊した大学生だけど未成年の長男(小柳友)、親に内緒でピアノを習っている小学5年生の次男(井之脇海)の4人家族のお話。

どこがパラレルワールドなのかと言うと、いろいろ現実とは違う設定もたくさんあるのですが、特にクライマックスで、それぞれに起こるある夜の出来事がとても不幸なファンタジーです。

☆ネタバレ
その中でもお母さんに起こる出来事がすごい。

その日の午後、突然佐々木家にピッキング泥棒(役所広司)が入ります。
家の中で母の恵は泥棒に出くわし、縛られてお金を要求されますが、現金がないと言うと、泥棒は諦めて覆面を外し家を出ようとします。
そこへパトカーのサイレン。
泥棒は家の中に引き返し、恵に顔を見られてしまいます。
泥棒は恵を連れ出し、人質にして逃げることにしました。
逃走に使う車は、盗んだプジョーのオープンカー。
恵が欲しかった車でした。
運転するように言われ、夫の竜平が掃除夫をしているスーパーへ立ち寄りました。
夫と顔を合わせても、夫は逃げて行きました。
実は彼、トイレで大金を拾って葛藤していたのです。
そんなことにも動じないで、恵は車の屋根を広げて、泥棒とドライブに出かけました。
この泥棒もまた、人生に行き詰まり、絶望しかけている人でした。
着いたところは海。
「やり直したい」とつぶやきながら、泥棒と一夜を共にする恵。
朝起きてみると、泥棒は車ごと海の中に消えていました。

恵は歩き出し、やがて我が家へ。

すでに帰っていた次男。
彼は、無銭乗車がみつかり、一晩中拘置所に入れられていたのでした。

朝食を作り始める恵。
そこへ、夫も帰ってきました。
夫もやはりやり直したい」とつぶやきながら、夜の街をさまよい、車にはねられて気を失っていたのでした。
拾ったお金を遺失物ロッカーに入れ、やっと帰る気持ちになったのでした。

大きな秘密を胸に、何事もなかったかのように朝食を食べる3人。

一緒にご飯を食べたら、心もつながるということではなさそうですが。
家族なのに、一番他人みたいな家族のお話でした。

特に、このお母さんが不思議。
私なら、長男がアメリカの軍隊に入るなんて、絶対阻止だなあ。
「私を蹴飛ばしてから行け」くらいのことは言いそうだなあ。

次男のピアノにしたって、どんなに彼が望んでいるか、もう少し、思いやってあげれるんじゃないかなあ?

夫のリストラを知っても、知らん顔のできる人。

こんなに冷静で、こんなに感情のない母親って、すごーく不思議でした。

オープニングの、大雨の日にいったん閉じた窓を開けた時から、彼女も中から変わり始めていたのでしょうね。
家族のためだけにいた自分から、自分のために何かをする自分に。

「引っ張ってー」と言っていたのは、夫に言ってたみたいだったけど、誰でもよかったのかなあ?
彼女を引っ張ったのは、泥棒だったけど、それでもよかったのか?
そこまで、夫に失望していたのかなあ?
だから、見ず知らずでしかも泥棒と逃避行に出たのか?
でも、結局、何事もなかったかのように、再び家庭に戻ったのね。
すごい人だなあ。
まあ、この人なら、この先なにがあってもやって行けそうだけど。

この映画のポイントはここかしら?

お父さんは「こんな人いそうだ」と思える感じで、一番リアルでした。
香川照之が、うまい。
平凡で、なんの魅力もない主人公に、命を吹き込んでいました。
役所広司も、難しい時間帯で登場して、インパクトのある演技で世界観を変えることに成功しました。
ほんと、うまい。

この家族、次男の才能のお陰で、また絆を取り戻したようだけど、リアルな世界では、とっくに壊れている家族だと思いました。

「チェ28歳の革命」+「チェ39歳別れの手紙」

2009-02-11 11:15:21 | 映画ー劇場鑑賞
「チェ28歳の革命」+「チェ39歳別れの手紙」同じ映画館で時間も都合よくやっていたので、2本続けて見てきました。



ーチェ 28歳の革命ー CHE: PART ONE/THE ARGENTINE
2008年 アメリカ/フランス/スペイン
スティーヴン・ソダーバーグ監督 ベニチオ・デル・トロ(エルネスト・チェ・ゲバラ)デミアン・ビチル(フィデル・カストロ)サンティアゴ・カブレラ(カミロ・シエンフエゴス)エルビラ・ミンゲス(セリア・サンチェス)ジュリア・オーモンド(リサ・ハワード)カタリーナ・サンディノ・モレノ(アレイダ・マルチ)ロドリゴ・サントロ(ラウル・カストロ)

【解説】
偉大な革命家でカリスマ的存在ともなっているチェ・ゲバラの、闘士としての半生を2部作で描く歴史ドラマの前編。フィデル・カストロと出会ったチェ・ゲバラが、キューバ革命へと突き進む過程がドラマチックに展開される。監督と主演は『トラフィック』でも数々の映画賞に輝いた、スティーヴン・ソダーバーグとベニチオ・デル・トロ。フィデル・カストロは、『ウェルカム!ヘヴン』のデミアン・ビチルが演じる。俳優たちの熱演とともに、リアルに描かれたゲリラ戦にも注目。(シネマトゥデイ)

【あらすじ】
1955年、貧しい人々を助けようと志す若き医師のチェ・ゲバラ(ベニチオ・デル・トロ)は、放浪中のメキシコでフィデル・カストロ(デミアン・ビチル)と運命的な出会いを果たす。キューバの革命を画策するカストロに共感したチェ・ゲバラは、すぐにゲリラ戦の指揮を執るようになる。(シネマトゥデイ)



ーチェ39歳別れの手紙ーCHE: PART TWO/GUERRILLA
2008年 フランス/スペイン
スティーヴン・ソダーバーグ監督 ベニチオ・デル・トロ(エルネスト・チェ・ゲバラ)カルロス・バルデム(モイセス・ゲバラ)デミアン・ビチル(フィデル・カストロ)ヨアキム・デ・アルメイダ(バリエントス大統領)エルビラ・ミンゲス(セリア・サンチェス)フランカ・ポテンテ(タニア)カタリーナ・サンディノ・モレノ(アレイダ・マルチ)ロドリゴ・サントロ(ラウル・カストロ)ルー・ダイアモンド・フィリップス(マリオ・モンヘ)

【解説】
革命の英雄、チェ・ゲバラを描いた歴史ドラマ2部作の後編で、キューバ革命後もなお世界の革命を指導することに闘志を燃やすチェ・ゲバラの死までを衝撃的に描く。監督は『オーシャンズ』シリーズのスティーヴン・ソダーバーグ。オスカーを受賞した『トラフィック』以来のソダーバーグ監督作出演となるベニチオ・デル・トロが、風ぼうまで似せてチェ・ゲバラの革命への熱意を体現。すべての人の自由と平等のために闘うひたむきなチェ・ゲバラの姿に心が熱くなる。(シネマトゥデイ)

【あらすじ】
1959年にキューバ革命に成功した後、国際的な名声を得たチェ・ゲバラ(ベニチオ・デル・トロ)。しかし、チェ・ゲバラは変装した姿で家族と会い、最後の食事を済ませると、急に姿を消してしまう。そしてラテン・アメリカの革命を目指し、ボリビアを訪れるが……。(シネマトゥデイ)

【感想】
私の知っているチェ・ゲバラは、革命家ということより、Tシャツやドッグタグなどのアイコンとしての認識の方が強い感じでした。
つまり、有名だけど、よく知らない。

ということで、興味津々、2本続けて見てきました。
結論から言うと、2本続けて見るのがお薦めです。
1本だけということなら、「チェ39歳別れの手紙」に集約されている気もします。

「チェ28歳~」の方は、「モーターサイクルダイアリーズ」( ウォルター・サレス監督2003年作品)の続編みたいでした。

1964年ハバナで行われたジャーナリストのリサ・ハワードのインタビューで始まります。
このインタビューや、有名な国連演説などは白黒です。
カラーの部分は、メキシコでのカストロとの出会いから、キューバへと渡って行き、ほとんどが、ジャングルでのゲリラ戦です。

最初は軍医のような仕事をしていますが、その手腕を認められ、カストロに次ぐナンバ-2としてゲリラ舞台を統率して行く様子が描かれています。
そして、革命成功後もおごることなく、部下に規律を求め、貧しい人への視線を忘れない人間性を描いていました。

「チェ39歳~」はチェがキューバから姿を消して半年後、いろんな憶測が飛び交う中、カストロが1965年の共産党発足式で読み上げた、カストロに宛てたチェの手紙から始まりました。

☆ネタバレ
66年にコンゴの革命に失望したチェは、姿も名前も変えてキューバにいました。
子供たちにも正体を明かさず、父の知り合いということで家族と一緒にいたのです。

その平和もつかの間、彼は変装し偽名のままボリビアに潜入し、キューバのような共産党革命を目指そうとしていました。

しかし、ソ連に圧力をかけられていたボリビア共産党はゲバラに協力せず、農民たちもアメリカの支援を受けた政府軍に脅され、ゲバラを後押しすることはありませんでした。

キューバで成功した革命のノウハウが、ボリビアではまったく功を奏さなかったのです。

現代に生きる私たちには、その構図は判りやすいものですが、理想に燃えるゲバラにの目には、まったく入ってこなかったのでしょう。

一方で、ゲバラは重い喘息を患っていました。
思うように動けず、いらだつゲバラの表情もありました。

闘いに破れ、囚われるゲバラ。
そして、簡単に処刑されてしまいます。

何のための闘いか?
若い頃ゲバラはカストロに「この闘いは勝利か死かだ」と言われたそうです。
キューバでは勝ち、ボリビアで得たものは死でした。

「愛のない本物の革命かなんて、考えられない」とチェは言いました。
青年のまま、思いを遂げられないまま亡くなったからこそ、ゲバラは今も青春と反抗のアイコンとなっているのでしょう。

スティーヴン・ソダーバーグ監督は、青年ゲバラを真っ正面から見据え、英雄視することなく、実物大を表現することに挑戦して、成功したと作品だと思います。



ラストシーンで、「パート1」のゲバラがカストロを始め同志たちと一緒に船でキューバに渡るシーンが繰り返されます。
これが、ゲバラの原点だったんだなあと、彼の思いが観客にも深く浸透していくようなシーンでした。

社会主義国が崩壊する中、キューバはしぶとく生き残っています。
カストロの指導力に依るところが大きいのでしょうが、ゲバラの理想も人々の中に生きているのでしよう。

ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア

2009-02-08 13:12:49 | 映画ーDVD
ーノッキン・オン・ヘブンズ・ドアー KNOCKIN' ON HEAVEN'S DOOR
1997年 ドイツ
トーマス・ヤーン監督 ティル・シュヴァイガー(マーチン・ブレスト)ヤン・ヨーゼフ・リーファース(ルディ・ウルリツァー)ティエリー・ファン・ヴェルフェーケ(ヘンク、ベルギー人)モーリッツ・ブライブトロイ(アブドゥル、アラビア人)フーブ・シュターペル(フランキー・“ボーイ”・ベルーガ)レオナルド・ランジンク(シュナイダー)ラルフ・ヘアフォート(ケラー)コーネリア・フロベス(マーチンの母)ルトガー・ハウアー(カーチス)

【解説】本国ドイツで大ヒットとなったアクション・ロード・ムービー。余命わずかと宣告され、たまたま末期病棟の同室に入院させられたマーチンとルディ。二人は死ぬ前に海を見るために病棟を抜け出し、ベンツを盗んで最後の冒険へと出発した。その車がギャングのもので、中に大金が積まれていたことも知らずに……。道中、残り少ない命の彼らに怖いものなどなく、犯罪を繰り返し、ギャングのみならず、警察からも追われる身になるのだが……。(allcinema ONLINE)

【感想】
「最高の人生の見つけ方」を見て感動していた時に、この作品の存在を知って、見たくなりました。

タイトルはボブ・ディランの有名な曲。
テーマ曲もこれをつかっていました。
ドイツ人バンドのカバーらしいけど。
他にも、名曲がいっぱい。

死期を悟った見知らぬ二人が、病院を抜け出して冒険するという設定は同じですが、内容はかなり違っていました。

この作品の二人は、若い。
一人は脳腫瘍で余命の少ないマーチン。
もう一人は骨肉腫のルディです。

二人の背景について多くは語られていないけど、マーチンもルディも労働者階級のあまり裕福でない若者のようでした。

やんちゃなマーチンと、気弱なルディの取り合わせがまた絶妙でした。

☆ネタバレ
二人は、病室でテキーラを見つけ、飲み始めました。
「海を見たことがない」とルディ。
「今天国で一番の話題は、海なんだぜ。みんなの話に入れないじゃないか」ということで、二人は病院を抜け出します。
パジャマで裸足のまま。
ルディなんかは、抜け出したことも覚えていないくらいに酔っぱらっていました。

この時に、盗んだ車がギャングのベンツで、しかもトランクには大ボスへの借金に返すための1000万というお金が入っていました。
怒ったギャングがしつこく追いかけてきますが、このでこぼこコンビもドジで失敗ばかりです。

大金があるとは知らない二人、商店を襲って、銀行を襲って、警察からも追われる身に。

命知らずとはこのことです。
余命の短い二人には、怖いものなんてないのです。
マーチンはルディを人質に取っているようにふるまって、TVも警察も翻弄します。

騒ぎはどんどん大きくなって、派手な銃撃戦やカーチェイスもありますが、死人は出ません。
ハードボイルドコメディといったかんじです。

死ぬ前に何がしたい?
マーチンは20個、ルディは8個書き出しました。
その中から、お互いのしたいものを1つ選び、マーチンは「ママに、プレスリーがママにプレゼントしたのと同じ型のキャデラックを贈る」、ルディは「二人の女性と寝る」に決まりました。

やりたいことをやって、ギャングの大ボスも大目に見てくれる中、二人は海にたどり着き、砂浜に座って夕陽を見ます。
偉そうに言っていたマーチンも海を見るのは初めてでした。
すばらしい、ラストシーンです。

短い間に育まれる友情や、身近な人への愛情。
名もない人であっても、悪党で虫けらのような人であっても、その命の輝きは尊く、かけがえのないものだということに気付かせられる、いい作品でした。

誰も守ってくれない(+誰も守れない)

2009-02-06 11:50:13 | 映画ー劇場鑑賞
ー誰も守ってくれないー Nobody to watch over me
+誰も守れない(TV)
2008年 日本
監督=君塚良一 キャスト=佐藤浩市(勝浦卓美)志田未来(船村沙織)松田龍平(三島省吾)石田ゆり子(本庄久美子)佐々木蔵之介(梅本孝治)佐野史郎(坂本一郎)津田寛治(稲垣浩一)東貴博(佐山惇)冨浦智嗣(園部達郎)木村佳乃(尾上令子)柳葉敏郎(本庄圭介)

【解説】
殺人犯の妹になった少女と、彼女を保護する刑事の逃避行を通じて日本社会の理不尽さを問う社会派ドラマ。『踊る大捜査線』シリーズの脚本を手掛けた君塚良一が脚本と監督を兼ね、過熱するマスコミ報道と容疑者家族の保護をテーマにした問題作を撮り上げた。兄の逮捕で世間から糾弾される少女に志田未来、彼女を守る刑事に佐藤浩市。手持ちカメラの擬似ドキュメンタリー手法が非情な社会感情を浮き彫りにし、観る者の心に迫る。(シネマトゥデイ)

【あらすじ】
平凡な4人家族の船村家で、ある日、一家の未成年の長男が小学生姉妹殺人事件の容疑者として逮捕されてしまう。東豊島署の刑事・勝浦(佐藤浩市)は容疑者家族の保護を命じられ、保護マニュアルに従って15歳の沙織(志田未来)をマスコミの目、そして世間の目から守るため、ホテル、アパート、マンションと逃避行を始める。(シネマトゥデイ)

【感想】
「誰も守れない」は、「誰も守ってくれない」の公開初日の1月24日土曜日に放送されたスペシャルドラマ版です。
私は見ていないので、従妹が録画してみせてくれました。
映画の4ヶ月前の出来事、主人公の勝浦(佐藤浩市のカウンセリングをしている精神科医尾上令子(木村佳乃)の父が、暴力事件に巻き込まれる話。
そして、「誰も守ってくれない」の冒頭へと続く流れになっています。

「誰も守ってくれない」は、第32回モントリオール世界映画祭のワールド・コンペティション部門で最優秀脚本賞を受賞。
予告編を見て楽しみにしていました。

見ている間は、とてもよかったんですが、見終わった後、とても空虚な感じがしました。
この映画、何が言いたかったんだろう。

「容疑者の妹の保護」というテーマ、すごく斬新だと思いました。
そして、俳優さんたちも、すごく自然ないい演技。

日本社会の一面だと言えるのかもしれない。
でも、警察の描き方、マスコミの描き方、サイバー暴力の描き方、父に追いつめられて犯罪を犯した少年の描き方、精神科医の描き方、刑事の描き方、被害者家族の描き方、なんかなあ、私でも想像できそうな範囲から、踏み出せていない感じがしました。

期待していただけに、残念でした。

☆ネタバレ
「誰も守れない」で、中心になる社長が駐車場で何者かに襲われるという事件にしても、三島省吾(松田龍平)が拉致監禁されて、覚せい剤づけになることにしても、尾上令子を逆恨みする人物(成宮寛貴)が、裏ネットで犯罪請負人に依頼したと言う結末ですが、それをさらっと、しかも自慢げに警察に告白しているところが、あまりに淡白でしらけてしまいました。

冒頭も、高校の先生が覚せい剤を買って、生徒に打ち(高揚させて、成績を上げるためらしい)、発覚したらナイフを振りかざして襲ってくる、なんて、あまりのあり得ない演出に唖然としました。
現場も教室のなかだし。
一応、テレビは最低のモラルがいるのではないかなあ。

このドラマから、刑事や先生や会社の社長という、いわゆる社会的に役割のある人に対しての敬意が感じられなくて、少し不愉快でした。

そして、本編「誰も守ってくれない」でも刑事たちはめちゃめちゃ荒っぽい。
やくざ相手だからいいという話ではないと思うなあ。

マスコミの過剰報道も、批判したい気持ちは解るけど、ちょっとやり過ぎだと思いました。

そして、唐突に母親は自殺してしまう。
まだ、自分の息子が犯人と決まったわけでもないのに、家宅捜索の段階で、あり得るかな?
自供が取れなくて、妹に事情聴取をするという設定だなのになあ。

容疑者の妹を、刑事の個人のマンションに連れて来るのも、あるのかな?
そこで何かああったら、個人で責任を取りきれないでしょう?と疑問だらけでした。
刑事と容疑者の家族のこんな逃避行、考えられるのでしょうか?
しかも、少女だよ。

そして、結末はサイバー暴力。
まあ今風で、ある話なのでしょうが、そこへ話を持って行ったら、なんでもありになってしまうと思いました。
しかも、バーチャルの人間が現実社会に顔を出す、そんなことあるのかなあ?
ネットに関わっている人たちを、悪意だけで描いて、すごく軽薄な感じにしてあったけど、それも単純すぎる感じがしました。

ブログ炎上なんて社会問題になっているし、韓国では自殺者も出る深刻な問題だけに、もう少し丁寧に扱って欲しい気がしました。

結局、犯罪を犯した少年の父親との関係が、この事件の本質みたいなのに、話はそこまでいかない。
被害者の姉妹側からの発言は一切ないしね。
容疑者の妹(志田未来)からも、被害者を思いやる発言はなかった。

最終的に、この妹は犯罪にまつわる重大な証言を隠していたのよね。
15歳にも、ことの重大性は解ると思うのに。
自分がなぜこういう目に遭うのかも、わかっていたはずよね。
母親も、気がついていたから自殺したのかなあ?

幼い命が2つも奪われたのに、容疑者側の人間から、それに関する言葉が全く出ないなんて、人の命が軽く扱われていると思いました。
その1点だけは、マスコミやネットで叩かれてもしかたがないんじゃないかなあ?

冤罪かもしれないと、一縷の望みを持っていたので、かなりがっかりした結末でした。
フィクションなんだし、少年少女の話だから、冤罪でもよかったんじゃないかなあ?

俳優さんたちはすごくうまいし、熱演なのに、中身があるようでない、映画だと思いました。

サルバドールの朝

2009-02-03 11:49:33 | 映画ーDVD
ーサルバドールの朝ーSALVADOR
2006年 スペイン/イギリス
マヌエル・ウエルガ監督 ダニエル・ブリュール(サルバドール・ブッチ・アンティック)トリスタン・ウヨア(オリオル・アラウ)レオナルド・スバラグリア(ヘスス)ホエル・ホアン(オリオル)セルソ・ブガーリョ(サルバドールの父)メルセデス・サンピエトロ(サルバドールの母)イングリッド・ルビオ(マルガリーダ)レオノール・ワトリング(クカ)

【解説】
フランコ政権末期のスペインを舞台に、不当な裁判によって死刑判決を受けた若きアナーキスト、サルバドールとその家族や友人の戦いを描く社会派ドラマ。スペインのアカデミー賞と言われるゴヤ賞で11部門にノミネートされた話題作。サルバドールを『グッバイ、レーニン!』のダニエル・ブリュールが、彼の元恋人を『トーク・トゥ・ハー』のレオノール・ワトリングが演じる。理不尽な運命の瞬間を待つ主人公と、彼のために戦い続ける人々の姿が感動を呼ぶ。(シネマトゥデイ)

【あらすじ】
1970年代初頭、フランコ政権末期のスペインで、自由解放運動のグループに所属する25歳のサルバドール(ダニエル・ブリュール)は、不慮の発砲により若い警部を死なせてしまう。彼は正当な裁判を受けられないまま死刑を宣告され、彼の家族や仲間、弁護士たちは何とか処刑を防ごうと手を尽くすが……。(シネマトゥデイ)

【感想】
この作品をレンタルしてみたものの、暗そうで怖そうで、見るまでほんと、迷いました。
二日酔いで頭も痛かったし、見ないで返そう、と何度思ったことか。
でも、いい映画でしたよ。
見てよかったー。

それというのも、主演のダニエル・ブリュールの名演技のお陰でした。
彼は、「グッバイ、レーニン」で知ったので、てっきりドイツ人だと思っていたら、スペインのバルセロナ生まれなのですね。

そして、このお話が1970年代初頭だということに、驚きました。
日本では、学生運動が終息を迎えている頃。
デモのシーンは、あの頃ニュースで見た光景とそっくりでした。

最近、スペインの映画を見ることが多く、そのつど背景を調べるので、だいぶ詳しくなってきたかな?

「アラトリステ」では、16世紀の80年戦争を知りました。
「エリザベス・ゴールデンエイジ」では、無敵を誇ったスペイン艦隊がイギリス軍に敗れたことを知りました。
この頃にスペインの黄金時代は終わり、混乱の時代へ。
「宮廷画家ゴヤは見た」では、カルロス4世がナポレオンの侵攻を受けて亡命する話を見ました。
その後、王政復古や革命を繰り返して、1931年スペイン革命。
そこから内戦が続き、フランコ将軍が1975年に83歳で亡くなるまで独裁政治を行っていて、フランコ将軍の死去により、ファン・カルロス1世が即位し、現在は立憲君主国ということです。
「パンズ・ラビリンス」は1944年の内戦で父親を亡くした少女の話でした。

そして、この「サルバドールの朝」
「白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々」にも通じるものがありました。
追いつめられたヒトラーが下した死刑と、老いぼれたフランコが下した死刑。
よく似ています。
未来ある若者の命を、末期の権力が奪う構図。

サルバドールのしたこと。
反体制運動のための資金集めとしての銀行強盗。
行員を傷つけたこともあったようでした。
このへんは、「俺たちに明日はない」みたい。
アメリカン・ニューシネマを思い出させるおしゃれな作り方でした。

そして、警察のおとり捜査に引っかかって逮捕される時の銃撃戦。
サルバトールは拳銃を持っていたのでした。
自分も銃撃を受けて瀕死の状態での、発砲。
刑事が死にます。
罪状に刑事殺しが加わってしまいました。

拘置所で弁護士に語る話が、本編の中心です。
政治活動に中にも、家族との触れ合い、恋人との関わり、友情などが触れられます。
留置所の看守とさえ、心を通わせてしまうサルバドールの魅力的な人柄。

死刑の嘆願のため、弁護士はギリギリまで活動し、ローマ法王まで動かしますが、フランコは取り合いません。

サルバドールの姉妹たちは、最後のぎりぎりまで、彼に付き添い、涙をこらえて励まし続けます。
姉がサルバドールに語って聞かせる映画が「大人は判ってくれない」。
いいよね。

でもその時が訪れ、残酷な「ガローテ」による死刑方法が知らされ、サルバドールは絶望します。
専門の死刑執行人がいて、実に冷酷にその仕事をやってのけます。
心を通わせた看守は、思わず「フランコの人殺し!!」と叫んでいました。

それでも、「デッドマンウォーキング」や「グリーンマイル」も死刑シーンは怖かったし、「私は貝になりたい」でも見たので、特に目を覆うと言うシーンではありませんでした。

サルバドールは亡くなり、多くの人の涙と憤りを誘い、それがフランコ亡き後、「スペインの奇跡」と呼ばれる急速な民主化を実現させる礎になったのかもしれません。

彼があと、2年生き延びていれば、フランコは亡くなり、死刑は免れたのではないかーと思うとせつないです。