ー輝ける青春ーLA MEGLIO GIOVENTU/THE BEST OF YOUTH
2003年 イタリア
マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ監督 ルイジ・ロ・カーショ(ニコラ・カラーティ)アレッシオ・ボーニ(マッテオ・カラーティ)アドリアーナ・アスティ(アドリアーナ・カラーティ)ソニア・ベルガマスコ(ジュリア・モンファルコ)ファブリツィオ・ギフーニ(カルロ・トンマージ)マヤ・サンサ(ミレッラ・ウターノ)ヴァレンティーナ・カルネルッティ(フランチェスカ・カラーティ)ジャスミン・トリンカ(ジョルジア)アンドレア・ティドナ(アンジェロ・カラーティ)リディア・ヴィターレ(ジョバンナ・カラーティ)クラウディオ・ジョエ(ヴィターレ・ミカーヴィ)リッカルド・スカマルチョ(アンドレア・ウターノ)ジョヴァンニ・シフォーニ(ベルト)カミッラ・フィリッピ(サラ・カラーティ)
【解説】
マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ監督の、第56回カンヌ国際映画祭ある視点部門グランプリ受賞作。兄弟とその家族が歩んだ1960年代から21世紀の幕開けまでの37年間を描いた家族の年代記。6時間6分という上映時間は、長編小説を読み解くよろこびにも似た贅沢(ぜいたく)をたっぷりと味あわせてくれる。(シネマトゥデイ)
【あらすじ】
希望を胸に人生を切り開く兄・ニコラ(ルイジ・ロ・カーショ)。才能はあるのに人生とうまく向き合うことができない弟・マッテオ(アレッシオ・ボーニ)。ローマに暮らすカラーティ家のこの兄弟は、イタリア社会を揺るがしたさまざまな事件を目撃する。(シネマトゥデイ)
【感想】
「サルバートルの朝」を見た後、この映画の存在を知りました。
サルバトールと同時代に青春を過ごした、イタリアの兄弟の物語、なんと、37年間にも及び、映画は6時間を越える長編です。
でも、まったくだれることなく、最後まで見せてくれました。
久々に、深い感動を覚えました。
真面目な映画です。
その骨太の取り組み方は、やはりイタリア映画の名作「ニュー・シネマ・パラダイス」を思い出しました。
また、イタリアの各都市をふんだんに見せてくれるし、映像も美しい。
「チェ」の2部作を見た後でもあり、60年代の若者の政治の季節の背中くらいは見た者として、この映画は、とても興味深いものでした。
あの時代の若者の気分や、気持ちが素直に入ってくる映画でした。
ローマに住むカラーティ一家。
商売人のお父さんと、教師のお母さんアドリアーナ(アドリアーナ・アスティ)。
検事になる長女ジョバンナ(リディア・ヴィターレ)、精神科医になる長男ニコラ(ルイジ・ロ・カーショ)、次男のマッテオ(アレッシオ・ボーニ)、末っ子のフランチェスカ(ヴァレンティーナ・カルネルッティ)です。
マッテオは、すごく優秀な青年ですが、読書家で、物事を深く考える繊細な若者でした。
ニコラとマッテオは、ニコラの友達カルロとベルトと一緒に、テストが終わったら世界を放浪する旅に出ることを計画していました。
☆ネタバレ
マッテオが病人を世話するように頼まれた精神病院で、ジョルジア(ジャスミン・トリンカ)という自閉症の少女の世話をすることになりました。
ジョルジアは心を開かず、マッテオを困らせますが、ある時、ジョルジアが脳に電気ショックを与えられておとなしくさせられている姿を見て、衝動的に彼女を連れ出してしまいます。
ニコラに打ち明け、二人はジョルジアの故郷に向かい、父親にこの事実を伝えようとします。
しかし、訪ねた村に父親はおらず、3人は村人の納屋の干し草の上で眠ります。
重い自閉症で心を閉ざし、会話もできないジョルジアですが、優しいニコラは一生懸命なだめて、父親を探し当てました。
でも、父親には新しい家族があり、継母はジョルジアを嫌っていました。
ようやく、二人に打ち解けてきたジョルジアですが、病院しか行くところがないとわかり、途方に暮れている時、ジョルジアは警察に保護され、二人はなすすべもなく見送りました。
自分に力がないことを思い知り、マッテオは俗社会と接点を断つように、軍隊に入ってしまいます。
ニコラは、ノース岬を目指して一人で世界を放浪し、「全ては美しい」と感動を得ます。
ノース岬の手前、ノルウエーで、フィレンツェの大水害を知り、急遽帰国し、ボランティアで復興に参加しました。
そこへ軍の命令で復興に関わっていたマッテオと再会。
また、伴侶となるジュリアと運命的に出会います。
ニコラはトリノで精神科医として働き始め、サラが生まれました。
ジョルジアが、劣悪な精神病院で発見され、ニコラは自分の患者として迎えます。
マッテオも会いにきますが、ジョルジアはマッテオに答えることはありませんでした。
ジュリアは、「赤い旅団」のメンバーとなり、家を出て行ってしまいました。
マッテオは、家族とも連絡を絶ち、機動隊から警察官へと変わっていきますが、ジョルジアに対する罪の意識を持ち続けているマッテオは、ますますストイックにかたくなな人間になって、警察組織の中でも浮いた存在です。
孤立し、孤独感ばかりが強くなっていきます。
シチリア島で、カメラマンのミレッラ(マヤ・サンサ)に出会い、思わず「ニコラ」と名乗ってしまいました。
二人はローマで再会しますが、マッテオは自分を偽り続け、ミレッラへのつれない仕打ちの上、ミレッラへの深い思いも自ら断ち切って、とうとう自殺してしまいました。
母や家族に挨拶をして、アパートに戻り、新年の花火を見ながら、「おめでとう」とつぶやいて…。
ニコラは、サラに会いたがっているジュリアを罠にかけ、警察に逮捕させました。
ニコラなりの苦渋の決断でした。
ジュリアに殺人者にも殺される側にもなってもらいたくないという思いからでしたが、その思いはジュリアに理解される日はありませんでした。
後編の後半は、主人公たちの結末が語られていきます。
題名の様にベタな感じだけど、登場人物への愛情がこもっていて、とても温かい気持ちになりました。
ニコラは一人娘のサラの幸せだけを望む父となり、恋愛感情にも鍵をかけて、仕事に打ち込んでいました。
末娘のフランチェスカはニコラの親友のカルロと結婚して、3人の子供をもうけます。
サラは、やがてそのフランチェスカの家から大学に通い、恋人ができ、やがて結婚するでしょう。
出所したジュリアにも会いに行き、二人は許し合いました。
ジョルジアも病院を退院し、共同施設で生活できるまでに回復しました。
とてもよかったことは、ミレッラがマッテオの子供をシチリアで産み育てていたことでした。
アドリアーナは晩年、この美しい島で、ミレッラと孫のアンドレアと過ごしたのでした。
ニコラとミレッラは、とても臆病になっていましたが、急ぐことなくゆっくり愛と信頼を育み、亡きマッテオの後押しもあって、第二の人生を歩む勇気も出たようです。
この二人の幸せを祈らずにはいられない気持ちです。
成長したアンドレアは伯父や父が夢見てが行けなかったノース岬を、恋人とともに訪れます。
そして、伯父が感じた「全てが美しい」という言葉を実感しするのでした。
私も、ニコラとマッテオを分けたものは、その旅の経験があるかないかだったと思いました。
ニコラはあの旅で、人生にはいろいろあるけど、本質は美しい物だと確信したと思うのです。
だから、辛い出来事が怒濤のように襲ってきても、きちんと受け止め、判断し、前に進むことができたんだと思いました。
マッテオ役のアレッシオ・ボーニが、すごくきれいな人で、そのブルーの瞳に引き込まれるような魅力的な人でした。
フランチェスカの結婚式で、フランチェスカが友達に自慢しますが、ほんと、こんな兄弟がいたら自慢してしまうでしょう。
お母さんにとっても、成績のいい端正な容姿は、自慢の息子だったでしょう。
でも、心がきれいすぎる人は、この世はあまりに生きにくかったのでしょう。
母は、自分を責め、反省の中で暮らしたこともあったでしょう。
腹立たしかったこともあったでしよう。
悔しいと思ったこともあったでしょう。
息子に自殺されたお母さん、すごく哀れでした。
輝ける青春から37年の歳月、いろんなことがあるけど、悲しいこともいっぱいあるけど、長い様で短い人生。
うれしいことも、楽しいことも、いい事だってある。
生きていてこその人生、映画を見終わって、しみじみとそう思いました。
2003年 イタリア
マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ監督 ルイジ・ロ・カーショ(ニコラ・カラーティ)アレッシオ・ボーニ(マッテオ・カラーティ)アドリアーナ・アスティ(アドリアーナ・カラーティ)ソニア・ベルガマスコ(ジュリア・モンファルコ)ファブリツィオ・ギフーニ(カルロ・トンマージ)マヤ・サンサ(ミレッラ・ウターノ)ヴァレンティーナ・カルネルッティ(フランチェスカ・カラーティ)ジャスミン・トリンカ(ジョルジア)アンドレア・ティドナ(アンジェロ・カラーティ)リディア・ヴィターレ(ジョバンナ・カラーティ)クラウディオ・ジョエ(ヴィターレ・ミカーヴィ)リッカルド・スカマルチョ(アンドレア・ウターノ)ジョヴァンニ・シフォーニ(ベルト)カミッラ・フィリッピ(サラ・カラーティ)
【解説】
マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ監督の、第56回カンヌ国際映画祭ある視点部門グランプリ受賞作。兄弟とその家族が歩んだ1960年代から21世紀の幕開けまでの37年間を描いた家族の年代記。6時間6分という上映時間は、長編小説を読み解くよろこびにも似た贅沢(ぜいたく)をたっぷりと味あわせてくれる。(シネマトゥデイ)
【あらすじ】
希望を胸に人生を切り開く兄・ニコラ(ルイジ・ロ・カーショ)。才能はあるのに人生とうまく向き合うことができない弟・マッテオ(アレッシオ・ボーニ)。ローマに暮らすカラーティ家のこの兄弟は、イタリア社会を揺るがしたさまざまな事件を目撃する。(シネマトゥデイ)
【感想】
「サルバートルの朝」を見た後、この映画の存在を知りました。
サルバトールと同時代に青春を過ごした、イタリアの兄弟の物語、なんと、37年間にも及び、映画は6時間を越える長編です。
でも、まったくだれることなく、最後まで見せてくれました。
久々に、深い感動を覚えました。
真面目な映画です。
その骨太の取り組み方は、やはりイタリア映画の名作「ニュー・シネマ・パラダイス」を思い出しました。
また、イタリアの各都市をふんだんに見せてくれるし、映像も美しい。
「チェ」の2部作を見た後でもあり、60年代の若者の政治の季節の背中くらいは見た者として、この映画は、とても興味深いものでした。
あの時代の若者の気分や、気持ちが素直に入ってくる映画でした。
ローマに住むカラーティ一家。
商売人のお父さんと、教師のお母さんアドリアーナ(アドリアーナ・アスティ)。
検事になる長女ジョバンナ(リディア・ヴィターレ)、精神科医になる長男ニコラ(ルイジ・ロ・カーショ)、次男のマッテオ(アレッシオ・ボーニ)、末っ子のフランチェスカ(ヴァレンティーナ・カルネルッティ)です。
マッテオは、すごく優秀な青年ですが、読書家で、物事を深く考える繊細な若者でした。
ニコラとマッテオは、ニコラの友達カルロとベルトと一緒に、テストが終わったら世界を放浪する旅に出ることを計画していました。
☆ネタバレ
マッテオが病人を世話するように頼まれた精神病院で、ジョルジア(ジャスミン・トリンカ)という自閉症の少女の世話をすることになりました。
ジョルジアは心を開かず、マッテオを困らせますが、ある時、ジョルジアが脳に電気ショックを与えられておとなしくさせられている姿を見て、衝動的に彼女を連れ出してしまいます。
ニコラに打ち明け、二人はジョルジアの故郷に向かい、父親にこの事実を伝えようとします。
しかし、訪ねた村に父親はおらず、3人は村人の納屋の干し草の上で眠ります。
重い自閉症で心を閉ざし、会話もできないジョルジアですが、優しいニコラは一生懸命なだめて、父親を探し当てました。
でも、父親には新しい家族があり、継母はジョルジアを嫌っていました。
ようやく、二人に打ち解けてきたジョルジアですが、病院しか行くところがないとわかり、途方に暮れている時、ジョルジアは警察に保護され、二人はなすすべもなく見送りました。
自分に力がないことを思い知り、マッテオは俗社会と接点を断つように、軍隊に入ってしまいます。
ニコラは、ノース岬を目指して一人で世界を放浪し、「全ては美しい」と感動を得ます。
ノース岬の手前、ノルウエーで、フィレンツェの大水害を知り、急遽帰国し、ボランティアで復興に参加しました。
そこへ軍の命令で復興に関わっていたマッテオと再会。
また、伴侶となるジュリアと運命的に出会います。
ニコラはトリノで精神科医として働き始め、サラが生まれました。
ジョルジアが、劣悪な精神病院で発見され、ニコラは自分の患者として迎えます。
マッテオも会いにきますが、ジョルジアはマッテオに答えることはありませんでした。
ジュリアは、「赤い旅団」のメンバーとなり、家を出て行ってしまいました。
マッテオは、家族とも連絡を絶ち、機動隊から警察官へと変わっていきますが、ジョルジアに対する罪の意識を持ち続けているマッテオは、ますますストイックにかたくなな人間になって、警察組織の中でも浮いた存在です。
孤立し、孤独感ばかりが強くなっていきます。
シチリア島で、カメラマンのミレッラ(マヤ・サンサ)に出会い、思わず「ニコラ」と名乗ってしまいました。
二人はローマで再会しますが、マッテオは自分を偽り続け、ミレッラへのつれない仕打ちの上、ミレッラへの深い思いも自ら断ち切って、とうとう自殺してしまいました。
母や家族に挨拶をして、アパートに戻り、新年の花火を見ながら、「おめでとう」とつぶやいて…。
ニコラは、サラに会いたがっているジュリアを罠にかけ、警察に逮捕させました。
ニコラなりの苦渋の決断でした。
ジュリアに殺人者にも殺される側にもなってもらいたくないという思いからでしたが、その思いはジュリアに理解される日はありませんでした。
後編の後半は、主人公たちの結末が語られていきます。
題名の様にベタな感じだけど、登場人物への愛情がこもっていて、とても温かい気持ちになりました。
ニコラは一人娘のサラの幸せだけを望む父となり、恋愛感情にも鍵をかけて、仕事に打ち込んでいました。
末娘のフランチェスカはニコラの親友のカルロと結婚して、3人の子供をもうけます。
サラは、やがてそのフランチェスカの家から大学に通い、恋人ができ、やがて結婚するでしょう。
出所したジュリアにも会いに行き、二人は許し合いました。
ジョルジアも病院を退院し、共同施設で生活できるまでに回復しました。
とてもよかったことは、ミレッラがマッテオの子供をシチリアで産み育てていたことでした。
アドリアーナは晩年、この美しい島で、ミレッラと孫のアンドレアと過ごしたのでした。
ニコラとミレッラは、とても臆病になっていましたが、急ぐことなくゆっくり愛と信頼を育み、亡きマッテオの後押しもあって、第二の人生を歩む勇気も出たようです。
この二人の幸せを祈らずにはいられない気持ちです。
成長したアンドレアは伯父や父が夢見てが行けなかったノース岬を、恋人とともに訪れます。
そして、伯父が感じた「全てが美しい」という言葉を実感しするのでした。
私も、ニコラとマッテオを分けたものは、その旅の経験があるかないかだったと思いました。
ニコラはあの旅で、人生にはいろいろあるけど、本質は美しい物だと確信したと思うのです。
だから、辛い出来事が怒濤のように襲ってきても、きちんと受け止め、判断し、前に進むことができたんだと思いました。
マッテオ役のアレッシオ・ボーニが、すごくきれいな人で、そのブルーの瞳に引き込まれるような魅力的な人でした。
フランチェスカの結婚式で、フランチェスカが友達に自慢しますが、ほんと、こんな兄弟がいたら自慢してしまうでしょう。
お母さんにとっても、成績のいい端正な容姿は、自慢の息子だったでしょう。
でも、心がきれいすぎる人は、この世はあまりに生きにくかったのでしょう。
母は、自分を責め、反省の中で暮らしたこともあったでしょう。
腹立たしかったこともあったでしよう。
悔しいと思ったこともあったでしょう。
息子に自殺されたお母さん、すごく哀れでした。
輝ける青春から37年の歳月、いろんなことがあるけど、悲しいこともいっぱいあるけど、長い様で短い人生。
うれしいことも、楽しいことも、いい事だってある。
生きていてこその人生、映画を見終わって、しみじみとそう思いました。