ーミス・サイゴンー
12月26日 梅田芸術劇場 夜の部
【解説】
ミュージカル「ミス・サイゴン」は1989年ロンドン・ウェストエンドを皮切りに、91年ニューヨーク・ブロードウェイ、そして92年に東京・帝国劇場にて上演されました。
帝劇で3度上演された演出版は、その余りにもスケールの大きな舞台装置から"日本では帝劇以外での上演は不可能"と言われてきました。帝劇以外では唯一、福岡・博多座は、設計当初から「ミス・サイゴン」の上演を想定して3ヶ月間上演されました。
新演出版では、大型スクリーン映像を駆使して、より臨場感のある舞台に生まれ変わりました。それに伴い、舞台装置、衣裳、照明といった視覚的なものから、音響に至るまで、すべてのセクションが刷新されました。
この度の2012年の日本11都市での上演が可能になったのは、かつてのような劇場の大きさや設備の制約を受けない、新演出版=21世紀の「ミス・サイゴン」によるものなのです。
新演出版として生まれ変わったとはいえ、このミュージカルを貫くテーマは、「究極の愛」であり、それは日本初演から20年の月日が経っても、全く色あせることはありません。(公式HPより抜粋)
【感想】
「ミス・サイゴン」と言えば、故本田美奈子さんを思い浮かべる人も多いことでしょう。
彼女がこの作品を転機に、アイドルからミュージカルスターに成長を遂げたエピソードはあまりにも有名です。
でも、今回が大阪初上演だそうです。
上記にもありますが、舞台装置の都合で、限られた劇場でしか上演できなかったようですね。
問題のそのシーン、実にうまく表現してあったので、これで全国の皆さんにも見ていただけるということでしょう。
お楽しみに!!
実はこの日、観劇の前に「レ・ミゼラブル」の映画を見ていて、奇しくも製作・キャメロン・マッキントッシュ、作曲・クロード=ミシェル・シェーンベルク、作詞・アラン・ブーブリルの作品が続くことになりました。
しかも、秋にホーチミン市に行って来たばかり、なんというタイミングでしょう!
時は、ベトナム戦争の終末期、アメリカ軍に村を焼かれ、両親を失い、ひとりぼっちになったキム(笹本玲奈)は、17歳でサイゴン(現ホーチミン)にあるエンジニア(市村正親)が経営するキャバレーに働きに出た。
アメリカ人の軍人・ジョン(岡幸二郎)にこの店に連れて来られたクリス(山崎育三郎)は気が進まない。
かつてベトナムで戦い一時帰国したが、母国に居場所がなく、再び軍属としてサイゴンで働いているのだが、この戦争に対する虚しい気持ちがクリスを苦しめていた。
成り行きでキムと一夜を過ごしたクリス。
キムの純真な真心に触れて、二人は恋に落ちる。
しかし、サイゴン陥落は迫っていた。
仲間の協力で結婚式を挙げ、書類も整えた二人だったが、クリスの元に届いたサイゴン陥落の通知は、即撤退という命令となり、ふたりは引き裂かれた。
☆ネタバレ
数年が経ち、キムは難民キャンプでクリスの子供を育てながら、クリスの迎えを信じて耐えていた。
新政府の思想教育を受けていたエンジニアは、軍部の幹部となったトゥイ(泉見洋平)からキムの居場所を聞かれた。
トゥィはキムが13歳のときに親が決めた許嫁だったのだ。
難民キャンプにトゥィを案内するエンジニア。
トゥイは復縁を迫るが、キムは息子タム(荒川槙)を見せてトゥイに応じない。
逆上したトゥイはタムを手にかけようとした。
キムは思わずクリスから護身用にもらった銃でトゥイを撃ってしまう。
難民に混じってバンコクへ逃れるエンジニアとキム、タムの親子。
そのころ、クリスは自分の子供がベトナムにいるのも知らず、ベトナムでの辛い体験からトラウマに苦しみ、それを救ってくれたエレン(木村花代)と結婚した。
アメリカでも、ベトナム人とアメリカ軍人との間にできた混血児「ブイ・ドイ」の存在が社会問題化していた。
その問題に関わっていたジョンから、クリスにクリスとキムの間に子供がいると聞かされた。
エレンに打ち明け、バンコクに向かったクリスとエレン。
バンコクでは、キムがタムのために夜の町で働いていた。
そこへ、ジョンからキムにクリスが来たことを知らされるが、待ちきれず、キムはクリスの泊まっているホテルを訪ねる。
でも、そこにいたのはエレンだった。
クリスが結婚している事実を知ったキム。
気が狂ったように部屋を飛び出した。
ジョンとクリスが戻って来て、今後のことを話し合う。
クリスはエレンと別れられない。
キムとタムも引き離せないだろう。
アメリカから二人に援助する、と決めて、キムの元に向かう。
キムは、タムに着替えをさせ、荷物を持たせてクリスに会う準備をしていた。
そして、クリスが来てタムと初対面している間に、キムはクリスからもらった銃で自らを撃ったー。
悲しい結末でした。
観客たちの涙は止まりません。
キムの気持ちはよくわかりました。
キムは、タムと一緒にアメリカに行くことを夢見ていたのですから。
それがかなえられないとなると、こういう結末しかないと思いました。
日本でも、戦後はこんな悲劇がたくさんあったのでしょうね。
他人事とは思えず、身につまされました。
クリスは、苦しんだといってもキムほどではありません。
だってキムは17歳からずっと、自分ではどうしようもない運命に翻弄され続けて来たのです。
今秋に会ったベトナム人の若者の笑顔が浮かんできました。
ほんと、戦争は悲劇しか生みませんね。
平和になってよかったです。
この日は初日とあって、大阪出身の市村さんと木村さんの舞台挨拶がありました。
アンコールがなごやかで、とてもほっとしました。
感激しました。